2に情報の壁。社会問題に関する信頼に値する情報の量・質は多くない。まさに問題に窮している人やその支援者ら当事者たちは目の前のことに精いっぱいで、外部の私たちに情報を発信する余裕がないからだ。今回のような重大問題では、多様な方面からの取材により量は膨大かもしれないがその分氾濫する。思惑の重なり合いでどれが本当のことを言っているのかわからない。問題構造が複雑化し、一般人の私たちには手におえない。
最後に現場の壁。関心を抱いて紙面やインターネットから情報にたどり着いたとしよう。意を決し被災地に赴いたとする。そこに広がるのは放射能で犠牲になったかつての田園地帯――現実の問題だ。あなたは被災地の農業問題に興味を持ち、一定の情報を得てやってきたが、果たして実際に汚染された土壌を耕せるだろうか。多くの人はきっとためらうだろう。「本当にこの土は安全なのか」「そもそも自分のしていることは推奨される行為なのか」現場に精通した誰かがコーディネートしてある一定の安全、アクセシビリティを担保しなければ、多くの人たちは現場に向かうことはできない。
人間は当事者意識を持たないと真剣に物事には取り組めない。その意識を持つために最も効果的なのは、実際にその目で見て、聞いて、感じて、体験することである。現場に向かう人が増えれば増えるほど、その問題に対してアクションを起こす人たちは増えていくはずだ。
これら3つの壁を乗り越えるために我々ができることは、そうした現場と一般人をつなぐような活動に従事する・またはそのような活動を行っている団体に参加者として所属することではないだろうか。現場の関係者・当事者・支援者たちとコミュニケーションをとり、スタディーツアーよろしく主体的に皆が協力することが、問題解決の一番の近道ではないだろうか。