東京大学 大学院農学生命科学研究科 アグリコクーン講義「国際農業と文化」

国際農業と文化ゼミナール2021


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。

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Q2-1.斉藤教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. 木材資源を持続的に活用していくことが私たちにとっても環境にとっても良いが、現実にはそれを難しくする要因が多く存在すること。
  2. 竹は世代交代なしに20年持つという視点は初めてだった。確かにUVを浴び続けても20年もつのはすごい!
  3. これからの林業においても、効率化と文化・伝統の醸成の両方が求められる。
  4. これまで木材の素材としての研究に興味は持っていたが、実際の建築物を想定することの重要性を感じた。
  5. 森林は量が増えればいいというわけではないということ
  6. 木材は古代から用いられてきた究極の機能性材料であるが,日本の木材利用は持続可能でなくなりつつあるのでその利用のしかたを考え直す必要がある.
  7. 今後、国内の木材を積極的に使っていく必要がある
  8. 木材を回転させていくために、伊勢神宮立て替えの様なたくさんの木材を使う需要をいかに増やせるかが必要に思った。
  9. 木材は鉄と比べて燃えても強く、且つ化学処理で燃えにくくできること。
  10. 木材と人の共存の歴史を知り、現代にあった木材の使い方を考え続けること
  11. 林業に関しても、文化の伝承において重要な役割を果たしている。しかし、衰退が農業よりも著しい。
  12. 日本の林道の路網密度の低さ、それの改善。木材の耐火性能
  13. これからの林業でも、効率化と伝統・文化の醸成の両方が求められる。
  14. 木材が人工材が普及した今でも代替不可能な用途もあるほど強度や弾性に優れた素材であること。
  15. 森林の伐採はバランスが大事であること

Q2-2.八木教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. 世界各国で水産業が占める重要性の程度やその意味合いが異なる.そこには海洋の生物多様性の違いや政策なども関わっている.
  2. 国によって捕れる魚種も違えば文化も違うので、それを管理する仕組みも変わってくる。
  3. ノルウェー水産業は経済的側面と環境的側面の両立に成功し、日本も見習うべきだと言われているが、ノルウェーは人口が少なく工業レベルによって生産性の高さを維持していることから、見習うことに懐疑的な意見もある。
  4. 地域ごとに気候や文化などの特徴があると思うので、良い点を日本の漁業に単純に取り入れたり、比較したりできないことが難しいと思った。
  5. 各国の漁業手法や管理手法は、生物多様性や漁業産業の規模などの背景によって形作られてきたものであるため、漁業衰退の状況を改善するために他国の漁業をただ真似れば良いというわけではないということ。
  6. 日本にノルウェー式漁業をそのまま取り入れるのは現実的ではない。生物多様性が低い北欧では単一魚種を占獲できるが日本では難しい。
  7. 普段から水産に関わる授業を受けたことがないので、TACという漁獲制限量の概念も初めて知ったが、それをどのような目標を持って設定するのかというのも重要な要因だと感じた。
  8. 海洋生物が増えていくスピードが陸上生物と大きく違うのに驚いた。
  9. 漁業管理の在り方とか方法にはその国の文化とか習慣,性格的な部分も多く絡んでいるような感じがした.世界的な枠組みとか共同の目標に向かう意識はもちろん大切だけど,そうした背景を忘れて制限を押し付けるのはよくない.
  10. 需要減少問題も深刻であり、それが漁業問題をより複雑にしていること。(単に生産量を上げれば良いという単純なことではない)
  11. 集団主義・個人主義の考え方が漁業にも反映されている中で、如何にして日本の漁業が生き残るか。このまま廃れていくのではなく、食卓に魚がいつまでも残る未来を期待したい。
  12. 日本の集団主義的な考え方と、アメリカやノルウェーの個人主義的な考え方との違いが、漁業のあり方にも影響を及ぼしているのは面白い。海洋産物は、農作物と比べても、食文化による食べられる食べられないの違いが大きい。
  13. 生態系を構成する種数などの海洋生態系の多様性。海洋は捉えにくいけれども環境の幅が広いのだと感じた。
  14. 日本と海外(欧米)では漁業者に与えられる権限が異なる
  15. 日本と北欧の漁業管理技術や流通システムは大きく異なるが、その背景には文化・歴史や地域ごとの生物多様性の違いがあるということ
  16. 水産物の消費は拡大しているものの、単価の高い魚と低い魚で過剰漁獲と廃棄の両極端 北欧始めとした欧米の漁業と日本の漁業では護ろうとしている部分の違いがある
  17. 行業管理への考え方の違い(漁獲枠・漁業場)が保全の対象の違いを生み出していること

Q2-3.松本教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. バリで牛を育てているのは意外だった。
  2. 日本がかつて経験した食の高級化のように発展途上国ではこれからが肉食文化への変化がすすんでいく.そうした中でいかに持続的に肉を確保していくのかは大切だと思う.代替肉なども含めて,もっと様々検討されるべき.
  3. 国や地域によって飼育環境が異なり、それぞれにとり最適な方法が採られている
  4. 白い脂を作るために牛をビタミンA欠乏症にしていたこと
  5. 濃厚飼料を増やした結果、肥育や産乳の効率化を実現できたが、病気が増えたように、効率化の追求には、何かの犠牲が伴うこと。
  6. 食文化を押し付けるのではなくて、それぞれの文化・風習を尊重する必要があること
  7. 途上国において、育てる環境や方法を考えずに収量だけを目的に新しい種類の牛を導入するのは避けた方が良い場合があること。
  8. 畜産はもちろん国内だけの問題じゃなく、国際的に多種多様な問題があるということ
  9. ヒトのための家畜である牛を巡る争いによって、大量にヒトが亡くなってしまった事実。 家畜は、ヒトの利用のために長い時間をかけて形を変えられてきた、ヒトありきの動物。
  10. 日本牛の畜産形態は濃厚飼料が主体であるが、あげすぎると胃の中が酸性になるってしまうため、量の調節が必要である。肥育前期は高タンパク、後期は 脂肪蓄積を狙い高でんぷんの濃厚飼料に切り替え、稲わらを食べさせる。
  11. 畜産はその国の文化や産業と密接に関わっている.(食生活,飼料を作れるか,民族間紛争.宗教等)
  12. 途上国などでの畜産の導入課題に関して
  13. 畜産業の問題は、地域レベルで異なっており、病原菌や文化風習など原因は複雑である
  14. (16時頃までの分が音質と音量の関係であまり聞き取れませんでした) 育種はどのような目的で(国が)進めるのか ベトナムの場合は乳牛→ホルスタインを導入、栄養要求が高い→栄養失調、気候に合わないので繁殖率が低下、交雑  在来牛(栄養・感染症に強い)北欧系品種(産生量)
  15. ベトナムの事例のように家畜の生産特徴(乳産量など)のみを基準に導入するのではなく、餌や気候など複数の視点から導入を検討することが重要

Q2-4.総合討論「農業と資源」で取り上げてほしいテーマを書いてください。

  1. 今後どのような水管理が必要とされるか?
  2. 100%の炭素の材料は作れるのでしょうか? 自転車や飛行機などで使われている炭素繊維は木材よりも丈夫なのですか? 木材で自動車を作れば軽量でパワーウェイトレシオを向上できるとは思いますが衝突安全や耐燃性には対応できるのでしょうか?
  3. 木造建築の火災の話がありましたが、耐震性はいかがでしょうか?築20年のアパートを選ぶ場合、個人的には木造建築は地震が来たときのリスクを考えて少し不安になります。
  4. 持続的な漁業資源利用に向けた課題(例えば未利用魚とか) 望ましい漁業管理の方向性 発展途上国における食の変化とどう対応していくべきか(肉食需要の高まり→歩留まりの高い品種の開発等)
  5. 民族性と農業/林業/漁業/畜産関係の政策の関係
  6. 生物多様性が高い中で、途上国において漁業の効率化をするにはどのようにすればよいか
  7. 水産資源そのものがどう変動しているかわからない中で、漁業管理を考えるというのはすごい難しいのとある種のナンセンスさを感じてしまいます。どうお考えですか?
  8. 家畜利用の歴史や、日本と海外の文化への影響の違い
  9. 住まいとして木造建築を選択するか否か
  10. 木造建築の耐火性のお話がありましたが、耐震性はいかがですか?個人的なイメージだと、築20年のアパートの場合木造だと少し不安になってしまいます。 日本の漁業管理のような独自の管理手法を伝統的に利用してきた国はあるのでしょうか?
  11. (討論コマ前に書き込んでおきましたが、ウェブサイトの方になかったので一応補足しておきます) 先生方の話してくださった林業、漁業、畜産業の分野において、「現在は技術的に不可能だが、技術の発展によって10年後には可能になって居そうな事、可能になって欲しいと思っている事」があれば教えてください。
  12. 天然林においても伐採は必要なのでしょうか。必要でないのなら木材の需要低下に伴い伐採を行わなくてもよい形、人工林(単一種)から天然林に近い形に(多様な種を植林する)移行するといった取り組みはあるのでしょうか。 ノルウェーでは効率重視な方針をとっていますがそれにより失われた文化はあるのでしょうか。人との繋がりが希薄になり過疎化に拍車をかけることはないのでしょうか。

Q2-5.2日目の講義の感想を書いてください。

  1. 僕はイネの栽培を研究しているので、2日目の議題はすべて新鮮で興味深かったです。農林水産どの分野においても文化と綿密な関わりがあり、生産方法や生産物の利用方法に大きな影響を与えていると知りました。
  2. 八木先生が討論コマでお答えになっていた今未利用魚とされるような魚がかつては人の商売テクニックで売っていたものがスーパーの普及で売れなくなったという話がとても興味深かったです。実際どんなものであるかよりも情報(消費者が簡単に理解できるようなインパクトがあるか)が重視されるようになってきたのも一因なのかもしれないと私は感じています。(私自身は近所のスーパーで売っている日本全国からやって来た名前を初めて聞く魚の刺身を食べるのが好きなので売られる種類がどんどん減っているのは残念です) 農協と漁協の問題の違いの話も新鮮でした。
  3. CNFは杉からしかとれないのか...
  4. 2日目もなかなか面白い講義だった.特に漁業管理の在り方については,欧米型の管理と日本型の管理の違いが興味深かった.そもそも日本はむら・ゆいとかの江戸時代からの共同体よって相互に責任を負うような文化なので,それが色濃く出てるなあと思いました.
  5. 日本や世界の資源利用について、林業・漁業・畜産という複数の観点から体系的に学ぶことができ、大変ためになりました。
  6. 普段は作物しか扱っていないので今回は農学の中の他分野の講義を聞けて大変おもしろかったです.人間の営みは第一次産業と密接に関わっているということを改めて感じました.林業も漁業も畜産業も,世界各国で捉え方や管理手法が多様であり,そこに介入する場合にはその背景にある文化を理解する必要がありますし,他国の手法を安易に自国に導入して成功するとは限らないと感じました.
  7. 国土面積の27%を占める人工林の管理方法について過剰でも不足しても偏った伐採は環境に悪影響をもたらし、また需要を高めるための一つの方法であるエネルギー利用も過剰な利用が懸念事項であるという話を聞き、バランスをとることの難しさを再認識した。


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Update by mizo (2021.6.10)