東京大学 大学院農学生命科学研究科 アグリコクーン講義「国際農業と文化」

国際農業と文化ゼミナール2021


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。

1日目2日目3日目2021トップページ

Q3-1.荒木教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. 大航海時代、胡椒は薬味として探されていたわけではなく、薬品として探されていた。
  2. アミノ酸食文化はアジア特有であること。
  3. 日本人の精神・生活史・性格は稲作をもとに語ることができそうだというのが1日目に感じだことでしたが、他の国でも同様に人間性と食物史を関わりづけて考えてみたいと感じた。
  4. 社会のマクドナルド化の話があったが、それは1日目の合理性の議論にもつながる話だと思い興味深かった。このように合理性を追求することによる生活習慣病の増加など、欠点もあることを改めて実感した。
  5. 「コロンブスの交換」によって、人々の食習慣は根本から変化し、食文化のグローバリゼーションが起きたが、地域ごとにその受容過程は多様であった。
  6. コールドチェーンの普及が塩分などの過剰摂取を低減させ平均寿命増進に寄与した
  7. 食の起源を探ると地域ごとの文化・文明が垣間見える。コロンブスの交換・世界の工業化によって、世界各地のさまざまな食文化が広まり、受容され、今日の食の多様性に繋がっている。
  8. 調味料文化は各国の食文化/歴史を反映していること。日本は肉食が宗教上タブーとされていた時代があったから、香辛料の発展が他の国に比べて進まなかったというのは興味深かった。
  9. 即席カレールーが3社で寡占状態にあるのは初めて知った。スパイスミックスの調合や原材料の調達の難しさによるものなのか?
  10. 食品の工業化によって多様な食を簡単に入手できるようになった一方で,市場を支配している食品メーカーたちのパワーが大きすぎるなという印象。我々は本当に食べたいものを食べているのか?それとも食品メーカーや外食産業に誘導されて食が形成されているのでは? あと,東南アジアのココヤシ圏,食べ物にも飲み物にも木材にも繊維にもなるのすごい。究極のエコではないか。
  11. 世界の現代の食文化は、コロンブスの交換などの歴史的な出来事が繰り返されて完成してきたということ。soyの語源が醤油ということなどに表れているように、世界の食文化は絡み合っているということはとても面白い。
  12. 技術の発展によって美味しいものが身近にあるということで逆に疎外感を感じることがあるということ
  13. コロンブスの交換によって作物の移動が生じた事によって、それぞれの文化圏において新たなスパイス・調味料文化が生まれた。
  14. 調味料は各地域の文化を構成する要素であると知り驚いた。また、今までの食品工学の役割はマクドナルド化の追求であるという話も心に響きました。
  15. 食文化のグローバリゼーションと地域色の強い調味料文化。そのなかでアジアはアミノ酸を基調とする旨味文化。
  16. サトウキビのプランテーション栽培で、先住民の代わりとして奴隷が運ばれるようになった例のように食文化を形成する背後には様々な歴史があるということ

Q3-2.鈴木教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. 経済学の仮定に「みんな頭がよくて全体最適化を目指さないと成り立たないよね」みたいなのがあった気がするが、不完全競争しか成立しないというのはまさにそういうことなのだろうと思った。ノブレスオブリージュ的に先進国や多国籍企業が途上国を支援していくのに期待したいが、ある種の利潤追求が無ければ現在の資本主義経済では成り立たないため、それを加味したシステムは作れないだろうか? あとは規制緩和を叫ぶ人達が分かっていてやっているのか、わからずに善の心でやっているのかも気になった。
  2. 感想 市場原理を導入して自由な競争が行われれば,経済全体の効用は高まるというのはわかる.一方で現実的には完全競争など成り立たせられずに,寡占独占が起きてしまうというのもわかる. また,RCEPによってASEAN諸国にむしろ負担が及んでしまうことについて,緑の革命によって化学肥料や農薬を購入する余裕のある農家ばかりが恩恵を受け,農業全体としては生産性の向上を達成したけども結果的に格差も生まれてしまったということと似ているなという印象を受けた. 質問 1.じゃあどうすればいいのでしょうか?弱い立場にある一次産業の生産者や途上国の人々を助けるために,例えば価格支持政策などをやってしまうと,EU共通農業政策の時のように過剰生産輸出競争が起きてしまうのではないか?公正取引委員会のようなものによって市場での自由な競争をなんとか導けないのか? 2.RCEPの結果農業は負担増,自動車業界が成長するということは望ましくないのでしょうか.経済全体での効用が多く増えるのならば,農業でいらなくなった人材や投資を自動車業界に転換できれば困らないという考え方もあると思うのですが(自分ではない). 3.途上国ではJAのような共同体によって市場での支配力や保証能力を上げようとしないのですか? 4.RCEPのGDP増加率について推定されていたが,実際にはなにを基にどう推定するのか
  3. 都市と農村という社会構造が進む世界では、都市部が重要視されがちで、小農を守る政策を提唱したとしても多数派(都市部)から文句が出てしまうと思う。それは仕方のない面があると考えていたが、今回の講義を聞いて、農村を保護する経済政策は生産者(農村部)と消費者(都市部)双方に利益があるという見方ができるということを知った。このような数値・情報はもっと市民に伝えられるべきだと考えたが、そのような情報を伝える側には、私益が絡んでいる場合も多く、我々が与えられた情報を鵜呑みにしないことが必要だと感じた。私は開発経済学に興味があるが、現在の市場経済では、市場の独占・寡占が進んでおり、そのようなシステムの中では開発経済学であっても本来の趣旨とは離れて一部の人の利益に有利になっている可能性があるということも心に留めておきたいと思う。そして、本当に途上国の農業に貢献するには、現場の観察を入念に行い、問題を明らかにして、現実に則した解決策の提示をできるように精進したい。
  4. 貿易の自由化の背景には権利者の様々な思惑がふんだんに反映されているという事。常識や世論を疑って、自分の目で見て頭で考える事が重要だと感じた。
  5. 経済学という学問は想像していたよりも定量的なものに基づいた論理というよりは国家や人間の気持ちを予想する事に基づいたものを数字で補強する印象を受け、それが大きな驚きでした。これまで農業経済学は経済学の歴史とその中で登場した○○論のようなものをベースにしたものを学んできたので、画面共有で提示されていた文章がかなり柔らかく現代的な文章で非常に新鮮でした。
  6. 弱い立場に追いやられている市民や農民を救済し貧困を削減するためには、私・公・共の公と共を強化する必要があるという話が心に響きました。私の部分のみに焦点を当ててきた経済学や社会のあり方に一石を投じるために、インドシナ半島やサブサハラアフリカで行ったケーススタディが興味深く感じました。そして相互扶助体制の構築やセーフティーネットの確立を通して生産者と消費者にも利益が公平に配分される重要性を実感しました。
  7. 資本主義である以上、企業的利潤は追求されがちである。しかし市場は市民の経済的行動によって存在しうるものであり、規制緩和のように市民の効用が軽視されてしまうのは遺憾であると感じた。企業が市場支配力をもつこの社会においては、学問的にも世論的にも規制緩和の不当性について声を上げ続けることが重要だと感じた。
  8. 一部の人に利益が集中するような経済の仕組みが世界的に成り立っており、それは規制緩和によってより深刻化している。農家などの生産者にも利益が分配されるようなしかるべき規制を設けていく必要がある。
  9. 市場の完全自由競争に関して。グローバル化による国内、国外両面でのローカルの衰退は規制撤廃によって解決されるものではない。コロナ禍により国家間での動きが制限されるこの時期にこそ、今だけ金だけ自分だけの姿勢からの国内外での展開を見直す必要がある。
  10. 国の政策や、国家間の協定の決定において、大きな権限を持っているのは企業であることが多く、利益の拡大ばかりを考えた意思決定がなされているという事実にもっと目を向けるべきである。
  11. 人間は利益を最大化しようとすることを前提に経済学は存在するが、それには限界があるということが具体的にRCEP等の説明を通してわかりやすく解説されていた。農家等の市場において弱い立場にある人たちを保護するためにも協同組合等の「共」は必要であり、それによって不当にマージンを得る人たちを除いた社会全般に良い影響をもたらす可能性があることがわかった。常識だと思っていたことが実は違うのかもしれないという視点を持つことは大切だ。
  12. 規制緩和・自由貿易は合理的だと思っていたが、それを合理的とする理論の前提条件が現実に沿っていないために、結果社会全体にとってマイナスになっていることを認識しました。そして寡占の存在を無視することの問題が多くの場で問われていないのは、政策決めに関わるような権力を持つ方々(大抵利益を得る側の人)にとっては、今の仕組みが合理的で問題提起するモチベーションがないのではと想像します。さらにその結果、問題提起するモチベが高いであろう被害を被る側の人にとって、気づく機会が減少するのだから、うまくコントロールされてるもんだなと思いました。今回の講義で、今の仕組みに対する批判的な視点を学べて良かったです。
  13. 私は青年海外協力隊としてアフリカにいたが「途上国支援」の在り方に疑問を抱いていた。立派な建物や道路を建設する”支援”を行うある国が、支援を大義名分に途上国を傀儡化しており、現地の人々も支援の恩恵を受けながらも反感の気持ちを持っていた。今回のお話を通じて、自分が感じた違和感の正体とそれを証明する方法とを知ることが出来た。また、心のどこかで「アジア全体、世界全体」を考えて行動しようとする人は周囲から鼻で笑われてしまうのではないかと下を向いている自分がいたが、先生のような方もいるということが分かり、とても嬉しく感じた。今は現場で活かせる技術について勉強しているが、RCEPなど国家間における取組についても自分の意見が述べられるように勉強したい。
  14. 私は以前タイに住んでいたことがあるが、タクシン派と反タクシン派の争いは、低所得者を優遇するタクシン政権支持派と高所得層の争いだという程度にしか認識していなかった。授業と通して、実はアメリカやIMFなどが口を出すようなスケールの大きいものであり、農業従事者を助けるか、大企業や高所得者を優遇するかという現実的には非常に難しい議論なのだと感じた。貧困者を助けることは人類における命題の一つであると思うので、一つ一つの政策が本当は誰を助けるもためのものなのかを考えて行動していきたい。

Q3-3.3日目の講義の感想を書いてください。

  1. 自分で調理をして食べるというのは単純な栄養摂取のためだけでなく何かを生み出す体験を日常の中でできる場面であり積極的に自炊すべきだと思う。外食や加工品では保存のために塩分が多かったり味付けが濃いものも多いので健康のためにも自炊は有効だと考える。
  2. 鈴木先生の話を時々聞くと身の引き締まる思いがします。
  3. 後半の講義での「現場で何が起こっているのかをじっくりと見ること」という言葉がとても心に残った。机上の空論・権利者の利益につながるような理論を考えるのではなく、一番脆弱な立場に置かれている人たちの本当の支えとなれるように、じっくりと力を蓄えていきたいと感じた。
  4. 三日通しての進行についての感想:講義の運営について数点気になる点があった。Zoomというソフトウェアは音声コントロール機能が弱いので、大音量でBGMを流さない・事前にすべての教員がノイズなく参加出来ているかの確認などが必要と感じた。 また、ウェブサイトの方に掲載されているコメントが完全にコピペであり、Googleフォームという教員だけに見える場だからこそ書いた内容が学生全員に向けて公開されていたり、伝達事項などの必要のない部分まで掲載されている点は適宜抜粋するなどして改善してほしい。 講義内容への感想:斎藤先生と荒木先生の講義が特に私には興味深かったです。農業と文化という事で普段別のオムニバス講義では触れられないような歴史や文化圏間の対比などが含まれている講義も多く、これまでどちらかと言えば農村文化の観点から学んできた私には親しみやすく、また先生ごとに違う切り口からの現代農業の見方を学ぶ事ができました。
  5. 荒木先生と鈴木先生の話から、食糧の生産・売買に始まり食卓に並ぶ料理や調味料までの話を学ぶことができとても興味深かったです。そして、そこには新技術の確立や利益の分配、文化の形成など様々なテーマが存在すると知り、農学の幅広さや奥深さに触れることができたと思っています。
  6. 3日間ありがとうございました。
  7. 社会学的な側面から世界の農業事情を考えることができた。世界のボーダーレス化が進む中で、食文化が進化を遂げるというような文化的にプラスの側面があったり、一方で、都市と農村の分断や貿易の自由化が進み、農村政策が適切に整備されないことで生産者がダメージを受けてるというマイナスの側面もあったりするということを学んだ。
  8. 鈴木先生の授業が、今までの広義とは異なりかなり経済寄りの視点、分野での前提知識が不足しており難しい箇所もあったが、新たな知見を得ることができたと考えている。相手国の国際的な背景だけでなく、自国との関係性なども理解した上で農業など資源の取引を行わなければならないのだと感じた。
  9. 経済論に関しては、知識が乏しくわからないことが多いため、何が正しいのか自分で判断できない。他の立場の意見や主張も聞かないと、鵜呑みにできないが、世界の現状にふれることができて大変勉強になった。
  10. 合理的であろうとすることが必ずしも利益の最大化につながらないと感じた。特にそれを実感させられた授業が3日目には多くあり、合理化を図ることによって生じる弊害や、その動きに取り残されたり不当に利用されたりすることも考えないといけない。この3日間の講義を通して、農業に対してだけでなく、全ての事柄において広い視野を持つことの大切さを学べた。
  11. 色々な視点から食/農を見れて面白かったです。欲を言えば3日目もディスカッションタイムが欲しかったです。1,2日目では、先生方や他の学生さんのいろんな切り口からの議論がエキサイティングかつとても勉強になったので。また農国特有の感想でしょうが、日本語(母語)での講義や議論の方が圧倒的に密度が濃いと実感しました...笑。英語力向上自体も大事ですが、母語と英語それぞれに良さがありつつもトレードオフな要素が確かに存在するので、そのバランスや使い所を考えるのも大切なんだろうなと感じました。
  12. 全講義を通して、様々な専門性をもった先生方のもとで学べることの有難さを改めて感じた。この環境に身を置けることに感謝して、よく学び、疑問をもち、積極的に助言を求め、自分なりの主張を持てるようになりたいと思う。
  13. 食文化などに表れているような似た背景を持っているにもかかわらず、先進国が途上国から搾取するような状況も続いていることにやるせなさを感じました。IMFなど先進国よりの機関とFAOなどの途上国よりの機関が互いに干渉しすぎることなくそれぞれの理念にのっとって活動ができるのが一番良いのですが...これを機に開発経済学を勉強してみたいと思います。
  14. 初日の議論で合理性か伝統かという議論があったが、今日の講義を聞き、途上国や生産者という立場が合理性を追求するのに必要となる資金の相応な配分が、現在の経済の仕組みではなされておらず、彼らにはそもそも選択肢が与えられていないと思った。そのような中で非営利な国際機関の存在意義を改めて認識したと同時に、世界経済の抜本的な改革の必要性、またその難しさを感じた。


1日目2日目3日目2021トップページ
ホームページへ戻る( みぞらぼ, 農学国際専攻, 農学生命科学研究科, 東京大学

amizo[at]mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
Update by mizo (2021.7.22)