NPO法人 流通農業大学

【講義日】2023年7月4日

【講師】 溝口勝(東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻/国際情報農学研究室)

【講義資料】原発事故後の農業と地域社会の再生−流通業界に対する期待−

【レポート課題】流通業界に働く者としてできる被災地(福島県)復興について考えを述べよ。

【提出されたレポート】

  1.  原発事故から間もなく10年を迎えようとしていた2020年、私は夏季休暇を利用して福島県の「道の駅」35カ所を巡る旅をしました。国道6号線を北上して浪江町、相馬市などを通りました。原子力発電所周辺では、当時のままの残された店舗が並ぶ街並みや、汚染土の中間貯蔵施設などを目の当たりにし、大きな衝撃を受けた覚えがあります。10年という歳月の中で、多くの人々が復興に尽力されてきたのを知っていましたが、まだまだ、しなければならない事がたくさんあるのだと感じました。その反面、それぞれの道の駅には、今まで知らなかったご当地の農産物がたくさん並んでいました。関東では見られない美味しいものが、こんなにもあるのか!と驚いた覚えがあります。
     2011年3月に発生した、東日本大震災後の福島第一原発事故により福島県は大きな被害を受けました。特に、原発事故に伴う風評被害は、農産物や食品の販売に深刻な影響を及ぼし、現在も大きな課題となっています。被災地の復興に向け、流通業界で働く者としてどのような取り組みが出来るのかを考察し、以下にレポートいたします。
    【情報の公開】まず流通業界は、消費者に対して福島県産の農産物や食品の品質と安全性など科学的根拠に基づいたデータや検査結果などの正確な情報を公開することが重要ですc 例えば、原発事故後の厳しい検査基準や安全基準への遵守状況をアピールすることで、消費者に対して信頼性を伝えることができます。
    【マーケティング活動】また、福島県産の農産物に対するプランドカの向上も重要です。福島県には、美味しい農産物がたくさんあります。その特徴や品質に焦点を当て、消費者にアピールするためのマーケティング活動を強化する事が必要です。例えば、地元の特産品や伝統的な農産物を積極的に宣伝し、地域の魅力や歴史と結びつけることで、消費者に印象づけることができるのではないでしょうか。
    【消費者教育】そして、消費者教育の推進も風評被害の解消に不可欠です。福島県産の農産物や食品に対する正しい知識を広めるため、情報キャンペーンやイベントを通じて消費者に対して正確な情報を提供する事が重要です。学校や地域の団体と連携して、農業体験や農産物の見学ツアーなどを開催し、消費者との直接的な接触を通じて誤解や偏見を解消する機会の提供も有効であると思います。
    【連携したプロモーション】さらに風評被害の解消にはコラボレーションが不可欠です。地域の生産者、流通業界、マスメディアなどが速携し、情報共有や共同プロモーションを行うことが重要です。これにより、福島県産の農産物の品質と安全性をアピールできます。また、マスメディアに対して正確な情報の提供を行い、偏向報道や誤解を拡散するリスクを軽減するために、積極的な関係構築も必要です。
    【まとめ】
    これらの対策を総合的に実施することで、禍島県の復興に向けた風評被害の解消と農産物の需要回復を促進することが出来るのではないでしょうか。ただ、風評被害の解消には時間がかかる可能性があります。
    流通業界で働く者として、持続的な取り組みが不可欠であることを認識し、取り組みを続けていく必要があります。そして、消費者に近い立場である流通業界で働く私たちが、福島の農産物の魅力と安全性を消費者に伝え続けていく事が私たちの使命であると思っています。
    以上です、ご講義ありがとうございました。

  2.  今回は貴重なお話をいただきありがとうございました。
     流通業界として被災地の復興についてできることというテーマをいただいたので、自分にできることというよりも流通に関するアイデアとしての意見を述べたいと思います。
     まず百貨店や商業施設のスペースを借り切ってのポップアップストアの開催や福島産の農水産物、地場産業の商品を集めたアンテナショップの開設が思い浮かびます。農産物に関して収量が安定しているもの、通年出荷できるものなら食品メーカーに原料として卸すことも可能かと思います。反対に、数や季節が限られている希少価値の高いものであれば小売店との直接の契約で価値を高めることもできるかと思います。いずれにしても「良いものを作る」だけでは不十分で、出口戦略を固めることが産業基盤としての農業の安定に繋がると思います。出荷先や販路が安定することで作ることに集中することができ、規模の拡大や効率化・発展が生まれる好循環に入ることができます。次世代の担い手が農業に定着できる仕組みづくりも流通によって解決できるのではないでしょうか。復興を全面に押し出すべきかも考える余地があると思います。それだけで売り出そうとして小売のバイヤーに買い叩かれたケースを聞いたことがあるからです。対等な立場で適正価格での取引をするならば、復興だけではない福島県にしかないものであるとかそうでなければ他と何が違うのか明確な差別化が必要であると思います。物語を持つ商品は付加価値が高まりより高く買ってもらえる可能性もあります。
     復興を継続するためにはリピーターを増やすことも大切です。1回目は復興の為に興味を持ってもらったとして、2回目以降は品質や味の要素が大きくなると思います。そのためにも何故おいしいのか、他と比べてどう優れているのか、作り手の思いやこだわりを明確にしておくことでブレない品質を自信を持って作り続けることができると思います。志を同じくする少数の農家でグループを作りブランド化するのも有効であると思います。ある程度分業化し生産に余裕を持たせ販売マーケティングに専従できる人員を確保することでより効率的で高度な販売戦略を立てることができます。
     農場をカメラで監視するシステムがありましたが、販売の現場でその映像を配信することによって作り手を身近に感じられ、人と人のつながりを意識できる取り組みも面白いのではないかと思いました。国内向けであれば放射性物質の基準値をクリアしている旨の短い文言を載せ、トレーサビリティ用のタグを読み込んだ先で詳細な値が表示される程度であれば消費者にネガティプな影響はないのではないかと思われます。LINE公式アカウント等のQRコードを商品に載せておき、復興に関する情報を定期的に配信することで復興に参加している感覚を共有しより引き込むことができるのではないかと思います。体験型ツアーヘの招待や商工会と速携できればクーポンを発行するなど買う・食べるだけでなく遊ぶ・泊まるといった他の業種まで波及した効果が得られるのではないでしょうが。
     地元の給食に使って食育に役立てたり、レストランに卸したり、道の駅などでの地産地消に取り組む一方、海外向けには農水産物そのものよりもメイドインジャパンの高品質を活かしたジャム、日本酒、香水等で商談会に出展しても良いのではないかと思いました。
     復興が進み、産業再生・地域創生へと繋がることを祈ります。ありがとうございました。

  3.  東日本大震災から早12年、私ごとですが息子が生まれた年です。時が経つのは早いですが、記憶にも残っていて今なお苦しんでいる、レジリエンスするために飯館村の方々は頑張っていると言う話を現地に毎週向かわれている溝口講師の生の声を聞けて、何か自分たちにも出来る事はないのか考えさせられる講義でありました。確かに原発事故で心配なセシウムの間題や自分たちは関係ないと思ってはいましたが、風評被害に苦しむ福島県の特産物、薄れてきてはいるもののまだまだなんだなと痛感させられました。科学的なデータに基づいた結果が出ていても未だなお信じてもらえないのが現実なんだなと言う事もわかりました。日本人は思いやりがあると言ったものの自分の身体にもし害があるとしたら、そこまでしてはしたくない、食べたくはないと言うのが普通だと思います。自分も同じです。でもしつかり根拠がありデータがあり、ちゃんとした情報が目に見えて開示されているのであれば、それを伝えてお客様に選んでもらい、自分で判断する材料があれば納得して買ってもらう、至ってシンプルな売買が成立すると自分は思います。例えば偏見かもしれませんが、中国産の鰻は泥臭く、食べても美味しくない、それに比べて国産の鰻は匂いも気にならず、安心して食べられる、そうそう考えるのと何ら変わりないと自分は思います。氏素性がしつかりわかり、生産者が見てわかり、それを伝える努力を怠らなければきっと風評被害もなくなると思います。
     自分の出来る福島復興、流通業界として出来る事についてですが、自分は販売の仕事に携わっているのでその目線から言わせていただきたいと思います。講義内でもお話がありましたが、芸能人が食べて宣伝してもらう事は確かに良い事だとは思いますが、自分は信憑性に欠けるような気がします。大袈裟なリアクションや台詞じみた言い回しに本心かどうか疑ってしまう人も多いと思います。それよりも溝口講師のような現地に何度も足を運んでいる人、実際に住んでいた、住んでいる人の生の声、生産者の苦痛やセシウムの観測データ、写真、生産、販売に至るまでの経緯などありとあらゆる資料を作り、それを持って売り込みに行きスーパーや百貨店で催事として扱ってもらい販売につなげる。ネットで広げるのもありですが、やはりアナログが必要なところもあると思います。実際に対話して声を聞き自分が納得して対価を支払っていただけるならそれ以上ないと思います。自分はもう風評被害はほとんどないものだと思っていましたが未だなおあるのなら、地道ではありますが、まだまだ知らない人たちに知ってもらう機会を増やすことが最重要だと私は思います。サカガミでは過去にお客様に対してのセミナーを何度か、コロナ前ではありますが開催していました。お客様の知識を深めていただくためにワインセミナーを開催したり、生産者の方を交えた生の声を聞ける機会を提供していたことがあります。それは有名な人が出るから来ようと思うような内容ではないのに参加して下さいるお客様が多々見受けられました。欲しいと思う情報についてはそれ相応の対価を支払ってでも聞きたいと思う人はいるはずです。機会がないから中途半端な情報に踊らされてしまい真実に辿りつかずに本当の事が分からなくなってしまう負の連鎖に陥るんだと思います。今回初めて流通農業大学講師としてきていただき、福島の復興を心より願っている溝口講師の熱い気持ちをお聞かせいただき今後の復興に向けてどうすれば良いのか、どうしなければいけないのかを考えさせる良い機会を与えていただき本当感謝します。サカガミは地域に根ざしたスーパーでありますのでぜひ今後の復興に貢献出来る日が来ることを楽しみにしています。ありがとうございます。

  4.  東日本大震災は日本の観測史上最大の地震であり、津波による広い範囲にわたる甚大な被害が生じると同時に、東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が放出したことから多くの住民が避難を余儀なくされ、地震のみならず沖波や原発事故という未だかつてない複合被害となった。福島県は原子力発電所の事故のあらゆる被害を受けた県であり、放射能への不安は様々な産業にも影帯を与え、例え安全な農作物であっても買い控えるなど消費の変化も起こった。さて、今回のレポート課題である私にできる被災地の復興についてという内容に基づき、流通業界に携わる者として不安払拭、風評被害対策の為に何が大切かを考えてみた。放射線の影響は、放射線量によって異なる。まずは放射線量を知ることが大切であり、その上で放射線の健康影響には、「確定的影響」と「確率的影響」の二種類あるといことを認識しなければならない。「確定的影響」とは、「ある一定以上の線量を放射線被ばくすると発症するが、それ以下の線量では発症しない」というものであり、前提として非常に高い線量に被ばくした場合にのみ現れる。一方、放射線の「確率的影響」で代表的なのが、多くの人々が不安を抱いている放射線による発がんの増加である。一度に1000ミリシーベルト被ばくすると、ある一定の割合でがんが増えることが知られているが、全ての人にがんが発症する訳ではない。その10分の1にあたる100ミリシーベルト以下の放射線量ではどうか。100ミリシーベルト以下のような低い線量による発がんの増加を証明することは、今に至っても非常に難しいといわれている。仮にお米において1キロあたり100ベクレル汚染されたとして、そのお米を食べて年間1ミリシーベルト被ばくするには1日100杯食べないといけない計算になる。現在我々が食べている農作物については、放射性セシウム量が1キログラムあたり100ベクレルという規制値以下のものしか流通していない。一方欧米では、1キログラムあたり1200ベクレルという規制値を採用しており、わが国は世界的に見ても非常に厳格な食品規制値を採用しているということが言える。放射線、放射能に対して多くの方が不安を抱くのは、当然のことであるが、しかし一方で、過度の不安から生まれた誤った認識が原因となってさまざまな風評被害が生じ、全く問題のない農作物を買い控えるようなことは、非常に残念である。過度の不安を解消し、風評被害をなくすためにも、正しい情報や知識を多くの方々と共有することが大切である。正しく理解した上で被災地の商材を購入し、加えて正しいを情報をメディアや紙媒体、インターネットやSNSを利用して多くの人々に知ってもらうことが私の役割であると考える。
    ■今回の講義の感想
    弊社も東H本大震災で被災した企業であり、今回の講話は大変感慨深いものがありました。2011年3月11 日岩手本社と大船渡工場が被災し、同年7月1日に復旧しました。しかし、供給再開は私達が予想していた未来とは異なりました。二次被害ともいえる風評被害。あれから12年経ちましたが、今もなお風評被害があるということを知りました。しかし、この講義を通じ福島県の魅力をたくさん教えていただきました。今後は福島県を応援させていただくと同時に食材やお酒の購入もさせていただきたいと思います。
    この度は貴重なお話を拝聴させていただきありがとうございました。

  5. テーマ:「流通業界に働く者としてできる被災地(福島県)復興について考えを述べよ」
     私の会社は卸売業として、生産者または商品を製造するメーカーと商品を消費者へ販売する小売店を仲介する仕事で、商品の円滑な流通を促す中間流通業者である。卸売業が物流を担うことで、複数の生産者やメーカーの廂品をまとめて扱うことができ、多様な商品の提案が可能となる。それにより、物流面でも効率化が図れるのだ。複数の生産者やメーカーの多様な商品を取りまとめることで、セット購買を促すなど魅力的な提案も可能となる。そうした卸売業ならではの役割や強みを活かして被災地の復興を考えた際、私たち卸売業にできる支援は、被災地との継続した関わりを持つことにあると考える。被災地との継続した関わりを持つためには、まず被災地に足を運び、地元住民や生産者の話に耳を傾け、地域産業の再生についての理解を深める必要がある。 何よりも積極的に地元商品を仕入れて小売店に販売し、その商品の魅力をより多くのお客様に拡散することが一番の復興支援と考える。将来的には地元の地産地消食材を使った商品と弊社とのタイアップ企画の実施、弊社ECサイトでのキャンペーン販売なども広報活動や販路拡大に繋がり、被災地の復興に役立てることができるだろう。商品の販売を通して被災地復興に役立てるためには、被災地の風評被害の払拭は避けて通ることができない。風評被害の払拭のためにできることとして私が考える手段は下記の通りである。
    ■商品情報の視える化(生産地/生産者/こだわり/安心安全の根拠など)
    ■地元を重視したエリアマーケティング(地元の妊産婦や子どもたちからのPR活動)
    ■「再生地」であることを価値とする‘'被災地まるごと”のブランディング
    ■地元加工場による生産・加工・受注・配送の一本化(生産拡大/観光客増加/雇用拡大への貢献)
     下記は、デリバリーや外食の分野で多く業態を展開しているお取引先様の声である。
     「生産地や生産者、商品に対するこだわりがしつかり見えて伝わることが、一番の『安心安全』に繋がる。」このように感じているのは、小売店も同じだろう。 風評被害の払拭や販路拡大には、まず福島県内を重視するべきである。「被災地からの復興」を果たした地元でのエリアマーケティングにより需要を喚起し、福島県内の人々が勧める商品として県外へ広めることが効果的だと考える。「福島県内の人々」の中でもさらに効果的なのは、妊産婦や幼い子供たちを起用するごとだ。私自身も原発事故から復興を果たすまでの期間、被災地域の農産物の購入や摂取をさけていた〜人である。なぜならば、私にも幼い子どもがいるからだ。安全が約束された食材だと分かっていても原発事故のイメージが払拭できず、育ち盛りの子どもに食べさせることにどうしても抵抗があったのだ。そういった経験から、地元住民である妊産婦や幼い子供たちが実際に地元の農産物を美味しく笑顔で食べる姿をPRすることで、TVCMやパンフレット、ボスターを通して「安心安全」を伝えることができるのではないかと考える。
     卸売業界で働く者として、卸売業の特色を活かして風評被害の払拭や価値提供のお手伝い、販路拡大といったことで被災地をまるごと売り込むプランド化戦略に貢献し、被災地の復興に役立てることができるだろう。外部の卸問屋という認識から、被災地の「仲間」として同じ目線でプランドイメージの形成に取り組むことがとても重要だと考える。

  6.  この度は、「原発事故後の農業と地域社会の再生」を受講させて頂きまして、ありがとうございました。
    ある日突然原発事故により被災された方々のつらさを思うと心が痛みますが、そういった方々に寄り添って力になり続けてきた溝口講師の行動力と継続力には敬服しました。そして被災者の方々には、力強い支えになっていた事と思います。
     「レジリエンス」とは不死鳥の如く復活して幸福を取り戻す能力の事で、原発被害を被った農業と地域社会の再生でレジリエンスが試されているとおっしゃり、除染土の処理、七壌肥沃度の低下、コミュニティの崩壊など問題は山積み状態でした。しかし、農学者の横井先生の教えを胸に、現場主義のもと手当たり次第に現地実験を繰り返して行く中で除染法を次々と編み出し、今では大学の様々な分野の研究者がこの間題に取り組むようになったというお話を聞き、それは講師や農家の方々が行ってきた事は正しかったという事の証明であり皆様の努力無くしては導けなかった結果だと思いました。
     さらに除染後にも、純米酒作り・そば作り・ブランド和牛の復活などが行われており、困難な状況でも希望を失わず未来に向け歩き続ける人々は本当に素晴らしいと感じました。私が同じ立場だったら心が折れてしまい何もやる気がしなくなってしまったでしょう。帰村宜言後村に戻った人々には、不屈の精神がありとてもたくましいですが、この方々の支えになり続けた講師のお力・行動力等も不屈であり、この講義の内容を少しでも自分自身に取り込んでいく事で、私も少したくましくなりたいと思います。 そして溝口講師は、「風評被害」について何度も話され心を痛めているご様子でした。そんなお話の中今回のレポートに「流通業界で働く者としてあなたのできるふくしま(被災地)復興について考えを述べよ」と言う課題を頂きました。言うのは簡単。現実化は私の力では困難かもしれませんが、述べさせて頂きます。
     まずは、商品を仕入れて販売する立場として、また消費者としてもなるべく福島のものを買う事です。ただ放射能に対する安全性がきちんと証明されていて「安全・安心」な表示が産地の方でして頂いている事は重要で、安心すればみんな仕入(買い)易いと思います。あと価格は大事なのでその商品に見合った価格(納得できる付加価値があれば安価でなくてもいい)にして頂ければと思います(今の時代にコスト削減は大変ですが、コスト上昇を補う意味でも商品に付加価値を付け納得した上で「儲かる」価格で買って頂くようにするのは重要)。安心で美味しい(儲かる)品であれば、仕入れ・販売すると思います。一消費者としても買ってみようと思います。
     また、もし仕入れる事が出来た場合、その仕入れた商品を売りにつなげる事です。「安心・安全で価値のある商品」であるならばアピールポイントは沢山あるので陳列・POP を駆使し、さらには現地の方が実際に販売応援をして頂ければ販売力がアップします。そうしてお客様に福島の良さを分かって頂き、それがお客様から広がって行けば、復興に貢献する事になると考えます。
     色々と述べさせて頂きましたが、何かお役に立てれば幸いと思います。この講義で福島について知り得た事を少しでも活かし、福島への貢献と自分の成長につなげられればと思います。
    ありがとうございました。

  7.  今回の溝口先生の講義を受講したことで、今後の業務においても通じること、課題としていただきました内容の「私のできる流通業界としての福島復興について」の二点がございます。

     一点目の今後の業務に通じることは、先牛は福島の原発事故にてセシウムに汚染された飯舘村にご自身が出向き新聞やインターネット、テレビなどのメディアで報じられている内容が信用できるかを実際の現場に足を運び土壌状況などを確認されると伺いました。弊社は、業務用のエキス調味料メーカーであり、BtoBビジネスをメインとする企業となります。お取引先へ訪問する際は事前に訪問する企業の情報をインターネットや諸先輩方に聞きながら調査し、商談内容を考え様々な提案をします。ここ最近ではWEB面談の普及に伴い、ZoomやTeamsを使用して面談をすることが増えてきました。電話やメール等に比べて相手の顔が見えること、場所を間わずどこからでも参加できることで商談のハードルが下がったように感じます。然しながら、WEB面談は相手の顔は見えるものの熱量などは伝わりにくく相手の反応や感触が分かりづらいと感じます。対面商談では、直接顔を合わせることで相手がどれだけ興味をもっているか反応をみながらコミュニケーションがとれるため的確な提案が出来、最終的には信頼を得ることにつながると考えます。昭和的な考え方かもしれませんが、この「対面商談(現場)」は重要であり、実際に現場に足を運び状況を確認する先生のお話が私の業務面でも通じると考えました。

     二点目は、私のできる流通業界としての福島復興について」となりますが、まずは私自身が現場(福島)に足を運びたいと考えます。季節の味覚を堪能すること、福島県のご当地の食べ物や観光地を回りそのすばらしさをSNSで発信することにより結果としては、自分自身の経験談が世界に広まり風評被害を払拭させることに少しでも貢献できると考えます。
     また、ビジネスになるかはわかりませんが、先の説明の通り弊社はエキス調味料メーカーとなります。商品としての価値はなく廃棄となってしまうような野菜や畜肉などの端材を原料として、弊社で加工して商品化することで福島ブランドの価値を高めた商品となり、地域活性化にもつながり「未利用資源の有効活用」、SDGsにもなるのではないかと考えました。そういった商品を食品メーカーに向けて販売PRしていくことで福島の復興になるのではないかと考えます。
     今回は貴重なお時間を頂き大変ありがとうございました。

  8.  日本にはたくさんの資源が眠っているのと同時に山や海に島など私たちが、普段目にする場所でも存在しています。しかしながら、今現在資源が不足している・設備投資もままならないということで資源を輸入に依存している現状です。地熱発電や水力発電、太陽光発電など日本は、科学と自然・先人たちの知恵を融合させたエネルギーを生み出す技術があるのに、目を逸らすのだろうかと思います。これらのことは、他のことでも言言えます。今回の講義でも題材にありました、原発事故における周辺地域に対する対応・措置を記者会見した際の報道のあり方です。当時のニュースや新聞を見返してみてみると、私が感じたことは、しかるべき対応を行うはずの政府高官や東京電力の責任者たちは、曖昧な表現やマニュアルな回答を繰り返しているのではないかと思いました。資料のグラフや内容のエピデンスがどこの資料を引用しているのか、わからないことや不透明な事が多く、懐疑心が生まれたのもまた事実です。そして、私が感じた思いよりも遥かに根深く、このまま信頼していいのかと思った人たちがいることを改めて知り、その人たちがどのような手法で困難を乗り越えていったのかを知ることができた貴重な時間でした。改めて感謝の意を送りたいと思います。
    飯館村の農家に限らず、牧場経営、果樹園などにもたくさんの土・水が関わりあって共生していること、土をないがしろにすることは出来ない。先人たちが残した知恵・肥沃な土地をいかに後世に残していくことができるのかが、今後の農業などの一次産業に携わる人たちの課題ではないかと思います。そのためには、テクノロジーの活用が鍵となっていきます。しかし、上記で述べた通りのままでは、莫大な資金を使ったのにも関わらず未活用のままで終わってしまうのではなく、きちんと活用されるためには、一つの地域の中で試運転を行い問題点の改善、様々な専門家の意見を集約するのが良いのではないかと思います。風評被害の払拭における福島復興について、流通小売業で働くものとしての意見は、まずは、お客様が持つ福島のいい所、悪い所、疑間に思っていることを聞き、現地視察をしたうえで、東北フェアではなく、福島だけのフェアを開催するのが、いいのではないかと恩います。理由として、現地視察に行ってみてきた福島の写真現地の調査機関が出している安全性のグラフ等を貼ることで信頼できる要素、安心感が生まれるのでないのでしょうか。また、福島の美味しいものを上澄みだけを見るのではなく、マイナーな生産品、加工品を福島だけのフェアでは取り扱うことができるため、一部のお金を生産者支援に充てることも出来ます。消費者の方々は、もっと深く福島についての理解を深められるのではないかと思います。次に生産者、各会社の営業の方を招き実際に食べてもらうのはどうでしょうか。スーパーマーケットでは、試食販売ができるので、実際に口にすることができ、現地の方々の美味しいアレンジレシピ、食べ方を学ぶことができるのではないのでしょうか。
    また、ミステリーボックスの限定通販というのはどうでしょうか?漁師?福島県のローカルスーパーの鮮魚バイヤー・シェフが選ぶ福島の海の詰め合わせセット、タクシーの運転手さん・トラック運転手さん・鉄道関係者が選ぶお土産に持っていく、おやつに食べるご当地お菓子の詰め合わせセット。福島で採れたもので作る地酒・服など地産他消セットなど普段目にすることの無い物ばかりでなく、商品のこだわりをストーリーにした冊子やオススメの食べ方を載せたり、福島応援の一環で実際にあるお店の割引クーポンを入れたりすることで、気に入ったお店を実際に訪れたり、通販で購入したりするようになるのではないでしょうか。

  9.  講義に、仕事の関係でお伺い出来ずに、申し訳ございませんでした。福島の農産物は、子供のころから身近だったような気がしますが、震災後以前より名前を聞かなくなっている気がしています。私が携わっている海外輸出の事案でも、福島さんNGのお客様がまだ、いらっしゃいます。中高の同級生が、農学を研究して震災後福島に移り住んで研究しておりまして、先生の研究に近しい部分もあるかもしれないと思い、そういう意味でも、講義を直接お聞きしたかったなと存じます。復興の農業工学(レジリエンス)を教わりましたが、そもそも農業工学という学問があったからこそ、日本のどこでもこのお野菜やお米が作れるという状態になったという事を知りませんでした。日本人は、歴史を守りつつ、新しい合理的な取り組みにも挑戦する民族だと思っておりましたが、今回コロナウイルスの流布で感じたのですが、科学的な根拠にあまり関心がないという事がわかりました。どうしたら、風評被害を減らせるかというのは、科学的なアプローチが最適と考えます。
    セシウムは、土の中に泌み込まないという知識がありませんでした。六ヶ所村の使用済み燃料などは、相当地下に埋めても、相当長い間、危険な状態であり続けているような報道なので、それに準じたような内容なのではないか、そもそも除染というのが、上部組織がピンハネをしたり、避難地域にいる方々事態にも利権が発生し、そのコストを送電権を一手にもつ東京電力管区内の他の利用者の利用料に乗っていたり、少し違和感を感じていました。それをすっと解決していただけるのが、農家自身ができる除染という仕組みだと感じました。農家の皆様自らが、科学的な知識に基づき、自分たちの土地を取り戻すというのは、他の地域に住む人間から見ても最も、わかりやすく、是非そこでできた農産物を購入したいと思うものだと思いました。復興知というのは、現場で起きてくるものだろう思いますし、十分、その内容が、これからいろいろな災害や、地球レベルでの環境変化が起こったときに、英知となるものだと思います。福島の人が、福島の土を守るために農業を行い、その挑戦は皆の英知になるという発想が自分にはなく、面倒くさいので、あえて、福島の物を選択する不必要性を感じていました。安全性はもちろんではありますが、そのレジリエンスの物語が、その人達だけの物語でなく、みんなの物語になることが、流通のビジネス上一番良いように思えます。チェルノプイリは、今も周りに人がいないとの事です。そこに居た人はいるわけですが、覆い隠されたままです。先生の活動に感謝申し上げます。

  10.  今もなお、復興のために尽力しなければいけない東日本大震災の爪痕。それはひとえに崩壊した建物や住まいといった環境をとりもどすのみならず、風評被害という信頼を損なう根深い問題の解決の糸日を探すこともまた、一つの復興支援の形であるのだと今回のご講義を聴いて改めて痛感しました。
     復興支援と一口に言っても、それは多岐にわたります。経済的支援や直接的なボランティア活動、さらには心のケアといった心理的支援と様々です。流通業に携わる私達が出来る事は何かと言えば、もちろん経済的支援が大きな内訳になるかと思います。そもそも流通業とは生産者と消費者とを結びつける仲介業の役割があてがわれますが、私達は日頃のお客様との間に培ってきた信用をもとに、新たな商品をお客様に紹介し、販売していく事になります。そしてこの役割が復興支援の要となる大きな役割になることはいう間でもありません。お客様は商品だけではなく、私達を通してその商品の信用を図る。それを踏まえるとまず第一に普段の仕事から誠実であるということが前提となります。商品そのものだけではない、そこに携わる一人の人間としての清廉さが商品の信用度を高めるのだと思います。では誠実である、清廉であるというのはどういう状態かというと、きちんとその商品と向き合う事が挙げられます。 その商品の魅力、安全性や場合によっては売り手にとって不都合な事も正しく理解し、それを伝えたうえでお客様へ商売を行うこと。そうした姿勢を貫くことこそ長きにわたるお客様との信用取引に繋がるのだと思います。風評被害で今なお苦戦する福島を始めとする地域の商品は、影響力のある著名な人物に限らず、いつも日常生活の中に入り込んでいる私達のような身近な存在の人物との対話からも解きほぐしていけるのではないでしょうか。そうした信用関係を軸にしながら、福島の商品に携わる人々と連携して、特売セールや、生産物の魅力を伝える福島フェアを売場のメインコーナーで展開し、販売促進に挑むことが出来ます。また、単なる生産物の販売にとどまらず、新たな商品企画を行い調理した形のものを提供するなど、お客様のご家庭の食卓に並べやすいものやイメージしやすいものを提供することによって、より商品を手にとってもらう事の出来る場を設ける事が可能です。
     いずれにせよ流通業の現場にいる私達は、お客様の声とはたまた生産者の声を代弁する立場でもあります。双方の想いをしつかりと聞き入れ還元していくことが使命のように思います。それを正しくやり通せたとき、両者だけではなく仲介する私達流通業に従事する側もが恩恵をもらうことができる「三方良し」の立場に立てます。日頃からお客様に誠実な仕事をすること、そして商品の知識や理解を現場の人間がしつかり勉強し、それぞれが共有すること。これが今の私達に出来る復興支援の形ではないかと感じました。
     加えてもう一つ私達自身が念頭に置いておきたいのは、ビジネスとして福島の人達も私達も対等であるということです。支援となってしまう以上、施す側と恩恵を受ける側との関係が生まれ水が上から下へと流れるように上下関係の様相が時に浮かび上がります。その商品への愛着や自信がそうしたゆがんだ関係でかすんでしまうのだとしたら健全な復興はありえないのではないでしょうか。新たな顧客となるお客様とをつなぐ場、両者の意向を聴きいれる役割を担うまでが私達の役割です。今後の自立的支援をも見通すと、福島の人達が地元の生産物への自信を高めていくことも必要なポイントだと考えています。そうした内側のマインドを強固にすることも復興の足掛かりになるのだと信じて、私にできることを少しずつ取り組んでいきたいです。


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Last Update 2023/7/17