東京大学総合科目一般・水と土の環境科学

福島から始まる復興農学23

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。

資料

福島から始まる復興農学(2023.5.18)  受講者?名

講義スライド

この講義を受講する理由(4月20日と重複している可能性あり)

  1. おばあちゃんちが農家だからということにしといてください。
  2. 環境に関する知識を身につけたかったから。
  3. 食糧環境を考える上で、土壌について考えることを避けられないと思い、土壌について考えるのにこの授業が最もふさわしいと思ったから。
  4. 農業関連の知識を学習したい
  5. 今の農業に関する問題を知りたかったから。
  6. nhkの番組で土のすごさを知り、それについてもっと学びたいと思った。また、私は高校時代地理を選択しており、土の種類は少し知っていたので、土について気になっていた。
  7. 農業をはじめとした水と土に関して広く理解をすること。
  8. 食糧問題についてのアプローチ方法の選択肢を知るために受講しました。
  9. 食料生産に興味があるため、環境、特に土の観点から農業をより良くしていくための知識が知りたい。
  10. 様々な教員の考えが知れることに期待しています。
  11. 私は文科1類に入学したのですが、明確に将来の夢なども決まっておらず、総合科目で興味深そうな幅広い学問を履修しよう思い、出身地の関係で身近であり、興味のあった農業について受講してみようと思いました。
  12. 農業や地方のことについて知りたいです。
  13. 貧困や飢餓の問題に興味があり、それらを解決には農業が深く関わっていると考えたから。

Q&A

  1. 放射線による土壌汚染からの復興には洪水の被害からの復興に活かせる部分はありますか。
    (返信)”復興”という考え方そのものは共通するでしょう。ただ、放射線は目に見えない点が厄介だと思います。
  2. 粘土中にセシウムが取り込まれるということだったが、植物が根から栄養を取り込むときに、どれほど吸収されるのか、逆に植物に吸収させて除染するという方法はないのか。
    (返信)農作物ごとに移行係数が測定されています。ファイトレメデーションという土壌浄化法があります。この方法は汚染物質濃度が低い場合に使われます。今回の原発事故直後のヒマワリを植える活動をしたボランティアグループが多くありましたが、地表面に放射性セシウムが集積していたので結局は表土削り取り法で除染作業が行われました。
  3. 農業が安全に可能になるセシウムの量の基準は定められていますか。
    (返信)定められています。農業そのものというより食品に含まれる放射性セシウムの上限値が国ごとに決まっています。日本の基準EUやアメリカの1/12とかなり厳しくなっています。
  4. 文科省、農林水産省、環境省などの「国」がまったく愚かな対応(間抜けな方策、或いは何もしないで)をとっていることが歯痒いです。他方で、研究費を下ろしていただくために「国」におもねった態度を取る場面もあるかもしれない。そういう気持ち悪さと、どう向き合えば良いのでしょうか。
    (返信)研究者とは何かを常に問い続け、毅然とした態度で研究することが大切です。とは言っても研究費や生活費がないとやっていけないために研究者に向いている学生が博士課程に進学しない現実があるのも事実です。科学技術立国を目指す日本の抱える深刻な問題です。
  5. 情報技術の導入以外に新しい日本型農業を始めるためにされていることや考えていることはありますか。
    (返信)日本の伝統的な農法に注目しています。例えば、江戸時代に書かれた会津農書に記載されている「堆肥づくり」など、農水省のみどりの食料システム戦略は伝統農法と最先端技術の融合なしでは実現しないと思います。 "
  6. セシウムは粘土にとらわれた後、空気中に逃げることで自然減衰するのでしょうか。 また、飯館村でご飯として食べる米ではなく酒米を選択したのはなぜですか。"
    (返信)雨水などで泥水になって溜まった粘土が乾燥し粉々になった後に土埃として空気中に移動する可能性はゼロではありませんが、ほとんどは土中に留まったままです。酒米を選択した理由は、単純に日本酒が好きだから。
  7. Given Japan's (and other countries too for that matter) declining farming population, the integration of IoT in farming is becoming more and more common, however, what are the limitations of such technologies? And what can be done to overcome some of these limitations?
    (返信)The limitations is not to reach signal in moutanious rural area. The govermnet should support the reseearech and developmnet of ICT in rural area in order to "digital garden city concept".
  8. 放射線セシウムは粘土質の土壌にキャッチされて流出しないため、土壌をひっくり返すか50cmの穴に埋めればよいというお話だったと思います。そこで気になったのですが、セシウム以外の放射性物質は存在しないのでしょうか。存在したとすると、同様の方法で対処できるのでしょうか。
    (返信)セシウム以外の放射性物質は無視できます。また、埋設法は、セシウムが粘土鉱物に強く吸着(固定)される特性があるので使えます。他の放射性物質には使えないと思います。
  9. 他の授業で原発と微生物に関する発表をしたいのですが、やはり実際には微生物によるバイオレメディエーションはされていないのでしょうか。ウランを呼吸に利用する微生物やセシウムを蓄積する糸状菌などの記事はあったのですがどれも現実的でないようです。もし先生が微生物を絡めて除染をするならどんな方法がありますか。また、実例がもしあれば教えて頂きたいです。先生が知っている放射線や原発に関することを全部教えてほしいです。
    (返信)セシウムを選択的に食べる(吸収する)微生物がいたら面白いですが、仮にいたとしても結局はその生物(セシウム)を集めて処理する工程が必要になります。個人的には糸状菌を使ってセシウムを集める技術開発の方が可能性があるような気がします。なお、放射線は放射性物質が崩壊する際に放出される物理現象です。微生物も原子からできている以上、微生物で放射性を消すことはできません。

今日の講義で学習した中で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

 
  1. 現場に行く!!
  2. 土壌の仕組み
  3. 科学は、机上の空論に留まるのみならず、現場で実践的に役立つ存在でもありえて、むしろそうあるべきものだと感じた。特に農学においては、現場に寄り添った研究が必須であると思う。
  4. 砂粒の物理的性質など、土壌について知り、雰囲気だけで判断せずにそのデータを有効活用して凍土剥ぎ取りなどの対策を取るべき。 "
  5. 「科学的に分かっていること」を理解してもらう難しさが重要だと感じました。 国の政策がいまいち頓珍漢なことがあるのにしたって、科学的なことを理解してもらっていないからだし、人々に理解してもらうのはもっと大変ですよね。"
  6. 実際に現場に立って体験し、考えること。 "
  7. いつかいいことがあるし、今はないやる気も出てくるんだから、ドーンと構えて生きるべきだ。(冗談です) 稲のことは稲に聞け。農業のことは農家に聞け。これが最も心に残りました。"
  8. 復興のためには、理系文系関わらず様々な研究者、政治家、メディアなどが協力することが必要だということ。
  9. 地表付近の土を地中に埋めるだけで放射線の状況は大きく改善する。
  10. 現地に即した情報をもとに、科学技術を適切に利用していくこと。 "
  11. 現実に起こった問題に対して、自分の身に着けてきた知識や技能をうまく活かして、現地の人や他ジャンルに秀でた人とも協力しながら、取り組むこと(抽象的ですみません)。 自分も現実のニーズに合ったスキルや能力をぜひ身に着けていきたいと思いました。"
  12. 現場で実際に起こっていることを科学で説明できなければならない、というお話が重要だと思いました。基礎学に立脚した現場主義、のスライドでお話があったと思いますが、研究は人々を助けるために行うものだと改めて思えました。
  13. 農学栄えて農業滅ぶという言葉は現在の日本の技術の大半が抱える問題を象徴するものだと考えられる。
  14. FPBL。今までは座学で知識をただインプットするだけで、現実に活かせるような経験がほとんどなかった。FPBLの考え方を身につけ、建設的な思考ができる人材になりたい。
  15. 環境工学において、食を支えるにおいて、「農業基盤=農業インフラ」が重要である。 "
  16. 学者と政治家の信頼関係について話されていたことが自分は1番重要だと思いました。 学者が根拠としてのデータを持ち出しても世の雰囲気から学者の意見があまり尊重されないということをお聞きして、とても残念だと思いました。政府は国民からの信頼をまずは重視してしまうからこのようなことが起きてしまうのかとも思い、このような事態を防止するには、国民へのデータ提供などを進めて世論で感情に流されないようにするのがよいのだろうかなどと考えてしまいました。"
  17. 科学者の声を拾い上げて、責任をとるのが文系の役目だということ。
  18. 国をはじめとした各団体の動きを待たずに自分で問題を見つけて考えること。
  19. Communication amongst scientists and policymakers while maintaining integrity
  20. 科学知よりも雰囲気が優先されて政策が決まってしまう、とおっしゃっていたのが印象的でした。一見人々に受け入れてもらえなそうなことでも、根拠を示しながら根気強く説明し実行することが大切であると感じました。
  21. 現場を大事にする
  22. 復興支援のために、現場に一度赴いて現場を自分の目で見ること
  23. いざという時、学者の示したデータを信じ決断する。
  24. 農業の安全性について、イメージで語るのではなく、数値で知る努力をすること
  25. 行政や専門家が継続的に現地に赴き、住民や農家と信頼関係を築いた上で実証的な研究や復興支援を行うことが重要だと思った。

自由意見

 
  1. 大事な活動だと思います。頑張ってください!
  2. 思い込みだけで専門家の意見を否定するのは良くないと思った。きちんと原理を理解して、定められた「客観的な安全」を受け入れる姿勢が大切だと思った。 "
  3. 「正しさ」を理解してもらう難しさって本当に大変だよなと思います。 私自身は理系で、両親は文系なのですが、例えば原発問題だったり、気候問題だったりを、理科的な知識を交えて説明することの難しさを常々感じます。 私自身の知識不足が勿論大きいのですが、両親の知識に合わせて説明する難易度が非常に高いなと感じています。"
  4. 研究者が政治家などのステークホルダーに提供した情報や研究成果が正しく活用されないというのは問題だと感じました。この問題を解決するためには、政治家などのステークホルダーの研究に対する理解が足りてないことが原因な気がしました。
  5. 数式を相手にするだけでなく、人間と農業との関わりを常に考え続ける姿勢を忘れないようにします。
  6. 具体例が多く、現実の問題に対しての理解のとっかかりになるので都会育ちの人間にはありがたい知見でした。
  7. 復興とは自ら動き出すことなのではないかという話が、なるほど確かにと感じた。
  8. 科学者の声を拾い上げて、責任をとるのが文系の役目だということが印象に残りました。文系の私は理系の人のように直接問題解決に携わることはできないかもしれないけれど、その分他の役目を果たせるようにしたいと思いました。
  9. 行政に入って行政の態度を変えるor外部から一般の人に訴えかけて正しい知識を理解してもらう このどちらかを行えれば、もう少しましな日本になるのではないかと思いました。
  10. There is still often hesitance in the minds of people today on buying products (especially agricultural ones) from Fukushima due to the fear of radiation, etc. and I wonder how long it will take for people to finally accept them as being safe (or at least safe enough) "
  11. 研究者として研究を行うだけでなく、積極的に現場に出て活動されていることに感銘を受けました。 飯舘村のスタディーツアー、都合が合えばぜひ参加させていただきたいです。"
  12. 表土削り取りや水による土壌撹拌・除去、反転耕といった農地の除染法は確かに一見しただけだと本当に十分除染できているのかは自分が現地の農家の立場だったら怖いだろうなと思った。放射線物質は目に見えないし不安なことも多いと思うが、前を向いて復興していくためにはちゃんと示されたデータを信じ、不死鳥の如く活動することが大切だと思った。

Q&A読後の追加の質問や意見

 

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Update by mizo (2023.5.20)