NPO法人 流通農業大学

【講義日】2025年5月12日

【講師】 溝口勝(東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻/国際情報農学研究室)

【講義資料】福島の農業と流通業界をつなぐ

【レポート課題】「信頼・ストーリー・連携で実現する持続可能な仕組みづくり」をキーワードにして、「福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデル」を提案してください。

【提出されたレポート】

  1. 今回の講義中に学んだ福島県での農業の現状と ICT による新たな村づくりについての内容を踏まえて、課題 レポートである「福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデルの提案」について記載いたします。 持続可能な仕組みづくりにおいて重要である食品の「安全性、安定供給、今後の展望」の 3 つの要素に沿って 話を進めさせていただきます。東日本大震災以後の農地での除染と農業再生の活動がどのようにして行われて きたのかということを消費者に知ってもらうところから、福島県の農業の新たなビジネスモデルはスタート すると考えます。講義を通して学んだ放射線セシウムの特徴や土壌への影響の及ぼし方は、個人的にこれまで 触れる機会のなかった情報を多く含んでいました。セシウムは粘土粒子に吸着されるため、成分が水中に溶け 出ることはないという点と、埋設した汚染土が数年後に土壌中で移動することはほとんどないという点です。 汚染表土の適切な処理を実施していれば、消費者が漠然と抱えてしまうような土壌への心配は発生せず、福島 の農家の方々が、除染作業やその作業によって失われた農地の肥沃度を回復するための計り知れない努力を されていることが見えてくることは明らかであると思います。人が口に運ぶ食べ物である以上、食品の安全性 は人々の思考の中で一番初めに重要視する部分であるため、「安全性の見える可」に注力して、商品の包装へ 土壌再生までの経緯などを含めた食物が育てられた環境の安全性についての詳細を記載することができれば、 販路の拡大へ進むことができるのではないでしょうか。次に、流通する上で切っても切り離せない部分である 商品の安定した供給についても見ていきます。溝口先生がお話しされていた「美賢村構想」に着目すると、 福島県の農業においての諸課題が ICT によって解決され、今後大いに活用されることが予想されることは、 流通業界との連携において重要な部分であるといえます。水田や畜舎のモニタリングはカメラを使用して行う ことや、自動走行農機を活用して農作業を行うこと、さらに水田の用水を水門と Wi-Fi カメラを利用して遠隔 操作により管理することなど、情報通信の環境整備を実施することで生まれる多くの利点を用いることで、 迅速な防災対応や農地での細やかなモニタリングが可能になり、安定した農作物の生産や畜産の発展の手段 となります。各小売業者が農業や農村におけるこれらの取り組みを理解し、商品の取り扱いへ前進するための 有力な情報になり得ると考えます。食品の流通において卸売業者が販売店へ継続して物の提供を行うことは、 相互の信頼関係に深く影響する部分です。ICT によって生まれる利点を活かすことで、流通業界にとっても 新たな常識として浸透させることができれば、両者にとっての利益の拡大やこれまでにない販売の可能性が 多く生まれるのではないでしょうか。そして 3 つ目の今後の展望や将来性について、震災後の「復興農学」に 関連して、消費者へ興味や関心を寄せてもらえる手段を提案したいと思います。それは福島県の特産品の魅力 を広く宣伝するために、“飯舘ブランド”のような地域の商品に特化したブランドを作ることです。実際に旅行 で福島の地へ訪れる人々が、その土地ならではのものを購入したいと思った際に手に取りやすい商品を展開 することで、それらをさらにお土産として購入して持ち帰った先で友人や家族へ口コミを広げてもらい、商品 自体の認知度や、実際に福島にて見聞きしたことによる福島県の現状についての認知度を高めてもらうための 第一歩として有力であると考えます。福島県の過去、復興、現在そして未来への可能性について全体を通して 学ぶことで、流通業に携わる人々や、商品を手に取る消費者、そして福島の農業従事者の方々への繋がりが できてさらに広がっていくのではないでしょうか。今後の福島の農業を応援したいと心から思います。

  2. 溝口氏は東日本大震災と福島第一原発事故以降、福島県飯舘村を中心に農地除染や農業再生に取り組み、地域 復興と農村の持続可能性を追求してきた。1. 原発事故と農業の現状:2011 年 3 月の原発事故により、飯舘村 を はじめとする福島の農地は放射性セシウムによる深刻な土壌汚染に見舞われた。事故直後から溝口氏らは現地 調査やセミナー、ボランティア活動を展開し、住民との信頼関係を築きながら農地除染法の開発に尽力した。 主な除染法には表土の削り取りや反転耕、水による土壌撹拌・除去などがある。特に、農家自身が実施可能な 簡易除染技術の開発や、除染土壌の安全な埋設方法の実証実験が行われた。汚染土を 50cm 以上の深さに埋設 す ることで、放射線量は 1/100〜1/1000 に減衰し、セシウムの移動もほとんど見られなかった。2. 農地再生と新 しい農学:除染後の農地は肥沃度が低下するため、地力回復が大きな課題となる。IoT センサーを活用した堆 肥づくりや、スマート農業技術の導入による土壌改良が進められている。また、獣害対策として LoRa 通信を 用 いた動物モニタリングや、サル追い払いロボットなどの実証実験も行われている。こうした取り組みは「復興 農学(Resilience Agricultural Science)」と位置づけられ、単なる復旧ではなく、災害に強い持続可能な農業 の構築を目指している。3. ICT とスマート農業による地域再生:飯舘村では「美賢村(Beautiful and Smart Village)」構想のもと、光回線やメッシュネット Wi-Fi、スターリンク衛星通信などを活用した情報通信インフ ラの整備が進んでいる。これにより、高齢者見守り、無人走行車、スマート農業機械の自動運転、水田の遠隔 監視・水門自動操作、動物モニタリングなど多様な実証実験が展開されている。酒米のスマート水田管理から 生まれた純米酒「復興」や、和牛(飯舘牛)のモニタリングなど、ICT を活用したブランド化も進む。4. 農業 と流通をつなぐ新たな仕組み:福島の農業再生には、農産物の安全性と信頼性を消費者に「見せる」だけでな く、「伝える」仕組みが不可欠である。トレーサビリティの徹底や、放射性物質検査結果の QR コード表示、ブ ロックチェーンによる履歴改ざん防止などにより、消費者が自ら安全を確認できる体制が整えられている。ま た、復興や地域の物語性を活かしたストーリーマーケティングや、現地訪問・生産者交流による「顔の見える 流通」も推進されている。ふるさと納税やサブスクリプションを通じた全国展開、ESG(環境・社会・ガバナ ンス)支援型販促も新たな流通戦略の柱だ。5. 生成 AI(ChatGPT)と流通業界の変革:生成 AI の活用は農 業・流通現場にも広がりつつある。ChatGPT は商品説明文や FAQ の自動生成、店舗オペレーション支援、議 事録作成、顧客対応チャットボットなど多様な用途がある。これにより業務効率化や顧客満足度向上が期待さ れるが、指示の具体性や情報の正確性、機密情報の取り扱いには注意が必要である。今後は、AI を活用した販 促支援ツールや Q&A データベースの構築など、流通現場で即活用可能な支援体制の整備が求められる。6. 現 代 の「米騒動」と情報発信の重要性:2023〜2024 年には天候不良や需要増加、ブランド偏重、SNS・メディア による情報拡散などを背景に、一部地域でコメの品薄・高騰が発生した。実際には在庫があったものの、消費 者心理の不安がパニック買いを誘発した。今後は需給バランスの継続的監視、データに基づく備蓄戦略、サプ ライチェーンの強靭化、社内教育と現場連携の強化が必要である。また、信頼ある情報発信と消費者行動の理 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 解が流通現場で重要となる。原発事故後の福島農業の現状と課題、そして信頼・ストーリー・連携を軸にした 持続可能なビジネスモデルの必要性と事故による深刻な土壌汚染と風評被害、農地除染や地力回復の困難、農 業従事者の高齢化と担い手不足など、福島農業は多くの困難に直面している。復興には、科学的根拠に基づく 安全性の可視化、地域の物語性を活かしたブランド戦略、ICT や生成 AI の活用による販促・流通の高度化、そ して消費者や流通業者との新たな「つながり」の構築が不可欠である。今後の課題は、若手農業者の育成と定 着、持続可能な流通ネットワークの確立、そして地域社会の信頼と共感をいかに広げていくかにある。 福島の農業と流通業界をつなぐ持続可能なビジネスモデル提案 1. 信頼の可視化 ・システム・ブロックチェーン×GAP 認証連携: 生産工程ごとのデータ(土壌検査結果・栽培記録・加工情報)をブロックチェーンで管理。QR コードを商品 に付与し、消費者がスマホで「放射性物質検査結果」「GAP 認証取得状況」「生産者の顔写真」を即時確認可能 にする。 ・ AI 品質予測モデル: IoT センサーで収集した圃場データと過去の出荷実績を AI で分析。糖度・食感などの品質を数値化し、パッケ ージに「甘味度 85%」「食感予測もちもち」と表示する。 2. ストーリー共創メカニズム ・生産者ドキュメンタリー動画の自動生成:圃場に設置した 360 度カメラと AI が、農作業の様子を 5 分動画 に編 集。EC サイトで「このトマトができるまで」を自動配信し、購入時に動画リンクを付与。 ・SNS 連動型ふるさと納税:支援者が選択した農家の SNS をフォローすると、成長過程の写真が自動送信さ れ る仕組み。収穫時には「あなたが支援した米」としてパーソナライズ包装で配送。 3. 業界横断連携 ・ネットワーク・需要予測ダッシュボード:スーパーの POS データ・飲食店の予約情報・気象データを統合。 生産者向けに「来月需要が予測される品目 TOP5」をリアルタイム提示。 ・ロボット共用システム:農業法人が所有する自動田植え機・収穫ロボットを、中小農家が時間単位でレンタ ル可能に。利用実績に応じてポイントを付与し、資材購入に充当できる仕組み。 4. ESG 連携型サブスクリプション ・カーボンニュートラル定期便:消費者が月額制で福島産品を購入すると、売上の 5%が飯舘村の森林整備基金 に自動寄付。専用アプリで CO2 削減量を「見える化」。 ・障害者雇用連携パッケージ:農産物の箱詰め作業を地域の障害者施設に委託。パッケージに「この商品は〇 〇施設で梱包されました」と記載し、社会的インパクトを可視化。 要素 具体策 期待効果 信頼 ブロックチェーン×AI 品質予測 消費者不安の解消・プレミアム価格設定可能 ストーリー SNS 連動型ふるさと納税 リピート率向上・若年層の獲得 連携 需要予測ダッシュボード 廃棄率 30%削減・作付計画の最適化 持続可能性の担保 自治体・JA・大学が共同で「プラットフォーム運営委員会」を設立。収益の 10%を次世代農業人材育成基金に 積み立て、IoT 操作が可能なスマートハウスを高校生向けに無料開放する。

  3. 今回のテーマである「福島の農業と流通をつなぐ新しいビジネスモデル」として、グリーン・ツーリズムを 通じて観光客に地域への愛着を育み、EC サイトによって継続的な消費を促すという流れを提案する。 第 1 に、福島県産農産物に対するイメージの課題である。福島県における生産物のイメージは、東日本大震 災以降大きく変化した。放射性物質による汚染の懸念から、多くの国で輸入規制が敷かれた。2021 年頃には EU やアメリカなどで規制が緩和されたものの、一部の国では依然として福島産に対するネガティブなイメージ が残っている。加えて、処理水の海洋放出により中国では日本産水産物の輸入が全面禁止となるなど、原発事 故の影響は現在も続いている。 河野(2022)による調査では、福島県内でも約 5%、隣接地域では約 9%の生活者が福島産農産物に対して否 定的な回答をしており、国内にも風評被害が残っていることが示唆されている。また、菅・川ア(2021)によ れば、安全性の PR や GAP 認証、モニタリング検査などが行われているものの、10 年経ってもなお、消費者 に正確な情報が届いておらず、買い控えも続いている。信頼の回復には、一方的な情報発信だけでなく、生産 者と消費者との直接的な対話による信頼構築が不可欠であるとしている。 第 2 に、信頼関係構築の手段としてのグリーン・ツーリズムである。消費者と生産者との信頼関係を築くた めにグリーン・ツーリズムは有効である可能性がある。ヨーロッパでは、耕作不利地支援や地域の再活性化手 段としても活用されている。実際に地域を訪れた観光客が農業体験や地域文化に触れることで、その地域や生 産物のストーリーを知り、愛着を育むことができるのではないだろうか。 田平・麻生(2007)は、グリーン・ツーリズムが地元農産物の提供や地域文化の紹介を通じて地産地消型農 業の展開を促進し、農村地域の市場化を通じて安定した需要と収入を確保できると指摘している。加えて、流 通業界の関係者がこうした観光体験に参加することで、地域への理解が深まり、より説得力のある販売活動へ とつながる可能性もある。 第 3 に、EC サイトを活用した継続的な販売体制である。近年はサブスクリプション型の野菜定期便など、継 続的消費を前提とした販売形態が注目されている。福島県でも「ふくしまプライド。」というポータルサイトを 通じて生産者の声が発信されているが、実際の販売は各生産者の独自 EC サイトに委ねられており、集約的な 販路とは言いがたい。そこで、福島県内の農業従事者が団体として連携し、定期便のような形で農産物をまと めて販売する仕組みを構築すれば、販売の効率化と消費者の利便性向上が図れるだろう。また、前述のように 観光を通じて地域に愛着を抱いた人々に対し、その後も EC サイトでの購入を促すことができれば、継続的な 関係性が築かれ、持続可能な消費と生産の循環が生まれると考えられる。 終わりに、本提案は、「信頼・ストーリー・連携」というキーワードに基づき、福島の農業と流通をつなぐ持 続可能な仕組みとして、グリーン・ツーリズムと EC サイトを活用した流通の流れである。観光を通じて育ま れた愛着から始まる継続的な消費行動は原発事故による風評被害の払拭と地域農業の持続的な仕組みとなり得 る。今後は、地域全体のステークホルダーを巻き込んだ体験型観光と EC サイトによる販売を組み合わせた統 合的なモデル構築が求められるだろう。 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 参考文献 河野恵伸(2022).「福島農業再生の課題 −流通・マーケット・消費者の視点から−」.日本作物学会第 254 回 講演会要旨集. 菅蒼太・川ア興太(2021).「福島県における原子力災害からの農業復興の現状と課題」.都市計画報告集, No.20. 公益社団法人日本都市計画学会. 田平厚子・麻生憲一(2007).「グリーン・ツーリズムによる地域づくり ― 大分県安心院町を事例として ―」. 日本観光学会誌, 第 48 号.日本観光学会

  4. 東日本大震災 私の住んでいる群馬県北部でも相当な被害がありました。我が家でも自宅の屋根瓦が落 ち、壁には亀裂、2 階建倉庫は 15 センチ程の亀裂・段差が入り、お墓の石塔が倒れる等。また放射能汚染で は放射能曇のその後の動きが発表されました(早川マップ)我が家の北にそびえ立つ武尊山が最終到達地とい うことでした。関係機関の調査が始まりました私の住んでいる地区の放射能測定結果は 105 デシベルでし た。露地野菜、べた掛け資材は全部廃棄、耕作地は行政の指導でプラウ耕等深耕、天地返しをしました。そ の後の測定結果は50デシベルまで下がり植付した農作物は何とか出荷は出来たもののそれまで宅配等でお 付き合いして来た客は全て離れてしまいました。本当に不安と向き合った年でした。 先生はいち早く被災地に出向き汚染除去解消の先頭に立って行動されたお話を伺い頭が下がるおもいで す。我々農業者は土地が資本です。目に見えないものと向き合う、コロナウイルスもそうですがこれほどの不 安はありません。それを調査研究し解消させる方法を教えて下さった先生は地元民のみならず汚染地域全体 の最高の指導者です。汚染地域でもきちんとした対応をすれば安全な作物が出来る「よかったー」飯館村民 の正直な気持ちだと思います。 今回の講義レポートの課題「福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデルの提案」ですが 飯館村に限って言わせて頂ければ、再生復興は無理だと思います。先生から飯館村の議員は誰一人村に住ん でいないと伺いショックを受けました。「せめて議長くらいは住めよ」議員経験がある私の正直な気持ちで す。何故ならば村民の代弁者であるべき村議会議員が村内に誰一人居住していない、いかなる事情があるに せよ村行政の一翼を担うべき議員です。少額かも知れませんが報酬もあるはずです、3 割しか住民が戻ってい なくても議員自身がそこに住み住民の皆さんの気持ちに寄り添いながら生活しなければ本当の再生復興は出 来ません。議会を解散して村に住む 3 割の住民の中から議員を選び直し先ず議会を再生するところから始め なければ飯館村の復興はないと思います。村には何も望めないと思いますし津波・放射能汚染被害にわずか ばかりですが募金した気持ちがないがしろにされているようで残念です。 私が提案する福島の新しいビジネスモデルは当大学の講師の千野和利氏が実践している長崎の離島振興地 方再生事業です。離島振興地方再生協会、この協会の事業は福島のみならず日本全国で実践すべきだと思い ます。私の求める農業の未来が長崎の離島にありました。詳しい内容は先生方で話し合ってください。先生 が話した田んぼの耕作者もこの事業を実践すれば直ぐ見つかると思います。新しいビジネスモデルにはなら ないかもしれませんがこの事業の良い所は「そこに人が住み続けられるため」という点です。過疎防止にも 役立つと思います。日本は食料自給率がこれ程低いのにまだ産地間競争をしています。福島は放射能汚染地域 というレッテルを張られおおきなハンデを背負っています。そこに人が住み続け地域を豊かにする事を目指 している離島振興地方再生協会の事業を新しいビジネスモデルに提案します。

  5. 「福島県の農業と流通業界」というテーマで溝口先生の講義を聞いて、福島県飯館村の農業従事者の震災後 の歩みと現在の取り組みについて、貴重な話を聞くことができた。私自身、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災 の発生当時は中学生であり、北海道に住んでいたため、地震の揺れがあったものの、東北での地震被害、津波 被害の状況、福島第一原発事故の状況は、テレビの報道で見ただけであり、それも時が経つにつれてどんどん 記憶から薄れてしまっていた。 まず、「福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデル」を考えるにあたって、福島県の震災後の現状 を改めて調べてみると、震災発生から 14 年経った今でも帰宅困難の地域があることが分かった。福島第一原子 力発電所事故の影響で、避難指示や居住制限が行われた市町村は、福島県内で 12 市町村にのぼり、事故後の放 射線量や地理的条件により、避難指示区域が設定されている。避難指示が解除された地域も多くあるが、いま だに 7 市町村の一部地域では、避難指示が継続されており、2025 年現在でも約 309 平方キロメートルが避難指 示解除されていないままとなっている(表 1 原発避難 12 市町村一覧 参照)。これは福島県全体の面積の約 2.2%に相当し、除染やインフラ整備が行われ、段階的な制限解除に向けて、復興・再生進められている。 流通業者として福島の農業復興に力添えをする新たなビジネスモデルとしては、以前この大学の講義で話を 聞いた、「無の会」の取組みや「離島振興地方創生協会」の取組みが参考になると考える。無の会(福島県会津 美里町)は「有機農業の推進」、「地域資源の循環利用」、「若手人材の育成」をキーワードに化学肥料や農薬を 使用せず、自家製堆肥を活用した自然農法を実践している。また、堆肥の製造には地域内の資源を活用し、持 続可能な農業モデルを構築するとともに、県外からの移住者を含む若手メンバーが中心となり、次世代の農業 を担っている。農業に関心がある個人と農家をつなぐというプラットフォームがあり、そこに共感した多数の 個人が出資して、新たに地域に根差した農業生産法人を作っていくという、「百姓一揆プロジェクト」を行って いる。また、「離島振興地方創生協会」(離創協)は長崎県に多数存在する離島の豊富な農業資源、水産資源に 着目し、「一次産業の支援」、「バリューチェーンの構築」、「生活基盤の整備」をキーワードに生産者と消費者を 結ぶ活動を行っており、それにより地域経済の活性化、地方創生を目指して活動を行っている。離島地域の農 林水産業を支援することで地域経済の活性化を図るとともに、生産から加工、販売までの流れを整備し、高付 加価値商品のブランド化を推進している。協会の構成員には大手食品メーカーや大手スーパー、総合商社、食 品専門商社などの流通業者も多数加盟しており、実際に離島に足を運んでもらい、生産者と直接対話する中 で、離島の特産物を使用した商品、物産展などの催事を企画してもらうことで、離島の PR も行ってもらえる 関係を築いている。また、離島での生活環境を改善し、定住促進や人口減少対策に取り組んでいる。これら二 つの事例の共通項としては、 @ 地域資源の活用:両者ともに地域の自然や人材を活用し、地域固有の価値を創出している。 A 持続可能な社会の実現:環境に配慮した取り組みを通じて、持続可能な地域社会の構築を目指している。 B 人材育成と定住促進:若手人材の育成や移住者の受け入れを通じて、地域の活性化に貢献している。 という 3 点がある。 福島の農業復興の為には、まずはその「安全性」を消費者に正しく認識してもらうことが第一歩であると考 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 える。一般消費者は放射性物質に関する知識がないので、そこのハードルをクリアする必要がある。そのため には大手企業とのコラボレーションは消費者に対して、良い印象を植え付けることができると考える。「福島の 農産物は安全だ」という認知があってはじめて福島農業の復興が進むと考える。また、元々のその地で暮らす 人々が戻ってこない、農作地が余っているという現状を聞き、新規の就農者を誘致、定住させて、支援を行 い、皆で育てていくを福島県全体で取り組む必要があると考える。これらを原発事故の被災地である地域でも 行うことで、「放射線量の測定、見える化による食品安全への信頼」、「被災地から復興して作られたというスト ーリー」、「生産者と流通業者での連携によるバリューチェーンの構築」によって、持続可能な農業発展につな がると考える。 参考文献 ・福島県 避難地域復興課ホームページ (閲覧日:2025/05/18) https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11050a/?utm_source=chatgpt.com ・ふくしま復興情報ポータルサイト(閲覧日:2025/05/18) https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/m1-3.html?utm_source=chatgpt.com ・復興庁 福島の復興・再生に向けた取組 https://www.reconstruction.go.jp/topics/20240701_fukushima_fukko_torikumi.pdf 表 1 原発避難 12 市町村一覧 市町村名 主な避難指示の状況 双葉町 全域が避難指示区域に指定され、2022 年に一部解除された。 大熊町 全域が避難指示区域に指定され、2022 年に一部解除された。 富岡町 一部地域が避難指示区域に指定され、2017 年に一部解除された。 浪江町 全域が避難指示区域に指定され、2017 年に一部解除された。 葛尾村 全域が避難指示区域に指定され、2016 年に一部解除された。 飯舘村 一部地域が避難指示区域に指定され、2017 年に一部解除された。 南相馬市 一部地域が避難指示区域に指定され、2016 年に一部解除された。 川内村 一部地域が避難指示区域に指定され、2016 年に一部解除された。 田村市 一部地域が避難指示区域に指定され、2014 年に一部解除された。 広野町 一部地域が避難指示区域に指定され、2012 年に解除された。 楢葉町 全域が避難指示区域に指定され、2015 年に解除された。 川俣町 一部地域が避難指示区域に指定され、2017 年に解除された

  6. チョコザップで ちょこっと応援(仮) 〜福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデル〜 =推 察= 福島県が抱えて いると思われる 農業問題 ?人口の減少:2024年度 1,761,853名(前比98.7% 福島県現住人 口調査 より) → 後継者や農業従事者の不足 など ?高齢化の進行 → 後継者不足、文化・伝統の消滅 など ?首都圏や消費地まで遠い → 食物・食品ならば消費期限・賞味 期限の問題、配送コスト高 など ?限定的な交通事情(高速道路、鉄道) → 配送コスト高、定期 集配が難しい など ?流通する術がない → 定期集配が難しい ?機械の老朽化 → 非効率、伝統技法・製法の途絶え ?技術が古い → 手作業などの非効率、多工程、少量生産 ← 大型チェーンなどへの提案に限界 ?東電原発事故による汚染土問題や風評被害 =推 察= 福島県が抱えて いると思われる 農業問題 ?人口の減少:2024年度 1,761,853名(前比98.7% 福島県現住人 口調査 より) → 後継者や農業従事者の不足 など ?高齢化の進行 → 後継者不足、文化・伝統の消滅 など ?首都圏や消費地まで遠い → 食物・食品ならば消費期限・賞味 期限の問題、配送コスト高 など ?限定的な交通事情(高速道路、鉄道) → 配送コスト高、定期 集配が難しい など ?流通する術がない → 定期集配が難しい ?機械の老朽化 → 非効率、伝統技法・製法の途絶え ?技術が古い → 手作業などの非効率、多工程、少量生産 ← 大型チェーンなどへの提案に限界 ?東電原発事故による汚染土問題や風評被害 → 消費期限・賞味期限のことを考えると、生鮮品の状態よりも 加工食品の方が流通させやすい。 =確 認= 福島県が 売り出したい、 強化したい 農水産品 ?県産品重点6品目 米、牛肉、桃、あんぽ柿、ピーマン、ヒラメ ?ふくしまプライド。 福島県で生まれ、つくられ、その価値の誇りを表現したもの 米、もも、日本なし、ぶどう、りんご、きゅうり、トマト、ア スパラガス、いちご、ほんしめじ、なめこ、福島牛、ヒラメ、 メヒカリ、ホッキガイ、ウニ、カレイ、そば、りんどう ほか =提案1= チョコっと運動 チョコっと ふくしま応援 @チョコザップ ?2025年5月15日時点でのchocoZAPの店舗数1,799店 →この店舗数、このインフラを利用しよう! チョコザップでチョコっとふくしま応援 「ふくしま桃、梨で“お疲れアイス”」 ?企画コンセプト チョコザップ店舗にて、チョコっと汗をかいたユーザーに、無料で 一本、アイス(シャーベット)バーを提供(or販売)。クールダウン にどうぞ。チョコザップでチョコっと汗をかいて、チョコっとふく しまを応援することにもつながる! × イメージ =提案1= チョコっと運動 チョコっと ふくしま応援 @チョコザップ ?なにを使う? ふくしま桃の果汁、ふくしま日本なし果汁 など福島が誇る果物 ?だれが作る? 酪王協同乳業(株)(福島県本宮市)や(株)セイヒョー(新潟市 北区)などへの製造委託を検討する。 ?確認事項・検討事項 安定した果汁を確保出来るか、物流をどうするか(日本アクセスに は現時点では口座なし)、各店舗に冷凍庫があるか など ?その後の展開イメージ ファミリーマートなどのCVSでエリア展開、全国展開 イメージ ?RIZAPの店舗数 約1,400店 →チョコザップを利用するなら、RIZAPも利用しよう! RIZAPで良質たんぱく質Get! 「ふくしま牛肉、馬肉、ジビエの良質ジャーキー」 ?企画コンセプト RIZAPで本格的にカラダを作りたい人には、ふくしま牛やジビエ肉 を使ったジャーキーで良質たんぱく質をGET!RIZAP店舗にて良質 たんぱく質が摂れ、脂肪分も少ないジャーキーを提供(or販売)。 筋力も活性!ふくしまも活性! =提案2= 筋力も活性、 ふくしまも活性 @RIZAP × イメージ ?なにを使う? ふくしま牛、ふくしま馬肉、さらにはイノシシなどの害獣の肉 ?だれが作る? (有)宮内ハム(山形県南陽市)や(株)ヤガイ(山形市)などへ の製造委託を検討する。 ?確認事項・検討事項 安定した原料を確保出来るか、物流をどうするか(日本アクセスに は現時点では口座なし) など ?その後の展開イメージ ふくしまブランドとRIZAPブランドのダブルチョップでファミリー マートなどのCVSでエリア展開、全国展開。そのほか、スーパース ポーツゼビオなどゼビオグループ(福島県郡山市)のプロテインな どの売場でも展開 =提案2= 筋力も活性、 ふくしまも活性 @RIZAP イメー

  7. 今までも大学の講義で沖自然農法について、真逆に近いLEDを用いた植物工場の現状などの講義を受け、 農業といっても様々なやり方やアプローチの仕方があり奥が深い事を学んできた。今回もITを活かした 農業のお話だなと思っていたが、福島県飯舘村に実際現地へ行き、生で観てきた方の意見を直接聞く事ができ とても有意義な時間を過ごすことができました。東日本大震災の際、自分が従事している鮮魚の分野でも原発 事故の影響は多大な物であり、震災前後では大きく変わってしまった。鰹や鰈などが良く獲れ相場も非常に 安く、重宝していたが福島県産は一切出てこなくなってしまった。津波の影響で浜通りの漁港に甚大な被害が 出てしまったのはもちろん、放射能の影響も大きかったであろう。現在では多くは無いが福島県産の鮮魚を 見かけるようになり、自分が生きている間には無理なのかなと思っていただけにほっとした部分はあった。 農地の除染作業も先生の分かりやすい説明で、思いの外簡単に出来るのではなどと思ってしまったが小さな 積み重ねの結果で農作物、魚介類などなどが再度流通出来る様になったのだと思い感謝したいです。また、 当時は色々と放射能の影響があり、水道水が危ないと言われ混乱もし、自分の子供もミルクを飲んでいる 真最中だったので気が気では無かった。セシウムに関しては土に染み込まず表面に留まるとの事で除染も 表面の土地を剥ぎ取れば問題ないとの事で情報が錯綜したり、データが不足して居たりはあっても冷静になり 正確な情報を仕入れていれば慌てる事は無く、今後の教訓としていきたい。 復興農学という言葉は初めて聞いたが、レジリエンスと言われると分かりやすかった。復興というとやはり 絶望の境地から何とかして這い上がろうと言った少し暗いイメージはどうしてもある。レジリエンスは自分が 聞いた際は人間の復元力やストレスなどの圧に対する耐性の様なイメージだったが、この場合も立ち直り適応 すると言ったことで単純に元に戻すのではなく、状況に応じて対応していく力なのかと思う。起こった事は 変えられない、無かった事には出来ない、そこでいかに自分で噛み砕いて今後の為に行動できるかが大切だ。 今まで昔ながらの農法でやっていた部分も上手く技術を取り入れ遠隔で様子が見られ手元で操作ができる。 やはり便利だと分っていても長年やってきたやり方は変える事には抵抗があるのはとても共感できる。だが、 見方を変え転換するチャンスと捉え、スマート農業に移行して行ければ人手不足や燃料高騰などの様々な問題 解決に有効なのではないだろうか。何事も悲観するのではなく、前向きに捉える事で見え方が全く違ってくる のでは無いかと思うし、ポジティブシンキングでどんどん生きたい。 課題レポートについてはストーリーマーケティングが最も分かりやすく出来るのではないかと考えた。なぜ この商品なのかをキチンと説明できるかと言う事は、自分の仕事でも常日頃から意識してやっている。産地や 作り手のこだわり(水にこだわっている、国産原料のみしか使わない、その産地で獲れた物しか使わない等)を 買う側である消費者、お客様に伝え共感してもらう事が必要不可欠だ。産地・生産者と小売店や飲食店等を 繋ぐ手段をどうするかが課題だが今の時代はネットの力が非常に絶大であるので SNS を使いアピールし、本来 人間の持つ人と人との繋がりも活かし拡散していくことも一つではないか。距離が遠いから不利だろうとか 利便性がと言う意見も出るだろうが、それを乗り越える程の商品の魅力の伝え方も並行して行っていく事も 大切であり全ての側の人が幸せな気持ちになれる事が最終目標ではないかと考える。

  8. 「福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデル」 2011 年に発生した東日本大震災と原発事故により、福島県は農業や水産を中心とした第一次産業に大きな打 撃を受けた。農業分野では震災による離村や、事業者の高齢化、未だ根強く残る風評被害といった課題が山積 し、震災後十数年経過した今も地域の農業は再生の途上にある。このような状況において、今福島において新 しいビジネスモデルを再構築するために必要な要素を「信頼・ストーリー・連携」というキーワードを軸にし て考察してみる。 ≪信頼≫ 除染作業が完了し、原発処理水の安全性が公表された今もなお、消費者には感情的な不安が残っている。こ のような不安を払拭するためには何が必要であるか。 ・生産者の顔が見える仕組み 生産者が農作物や製品を「私が作りました」と PR するプロモーションを強化 する。 ・放射線データ等のオープン化 土壌、海域、生産拠点、製品等のモニタリング検査の結果を簡単に確認する ことができるシステムの構築。 これらをインターネットや SNS 等を通じて積極的に PR すれば、消費者に信頼を届けるだけでなく、安心に 向けて取り組む姿を見せることで福島の生産者への共感を生む効果がある。 ≪ストーリー≫ 「福島産=不安」という誤解を完全に払しょくするのは困難である。しかし、「福島産=選びたくなる商品」 というイメージを新たに消費者に定着させることができれば、風評被害を凌駕することが可能である。 ・企業や YouTuber とのコラボによる商品開発や地域活性化に向けてのイベント ・サブスク形式のマーケット参入 ・クラウドファウンディングを利用した農地や生産施設のリース、シェア 福島産の商品が安心・安全であることを謳う事と同時に、上記のような新しい販売形態への取り組みにチャレ ンジする姿を PR することで、福島の生産者の再生へのプロセスを消費者に伝えることができる。消費者が福 島産の商品を「食べて応援、買って応援」するためのモチベーションとなる。 ≪連携≫ 震災による離村、高齢化による労働人口の減少は福島の再生の大きな課題である。県内外から新規就農者 や、移住者を呼び込むためには「暮らし」と「働き方」の両方を支える仕組みが必要である。 ・スマート農業の導入 AI を使った生産管理、遠隔操作による機械制御等、テクノロジーの導入で新規就農者 に向け「福島=最先端農業」というイメージを PR する。生産性の向上と省力化は、従来の「農業=キツイ、 儲からない」といったネガティブなイメージを払拭することができる。 ・生活の再構築 「新しい時代の田舎暮らし」を提案する。住民・自治体・民間が一体となり、福島の農業を 入り口とした新しい地域再生プログラムを構築する。「福島=復興途上の県」ではなく、その次のフェーズとし て「福島=住みたい県、働きたい県」となるべく、地域開発やプロモーションを行う。 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 結論 上記の「信頼・ストーリー・連携」の 3 要素によって福島の農業や、福島での暮らしは新しい付加価値を生 み出すことができる。これは「復興」という名の単なる産業再生ではなく、他に例を見ない地域経済の再設計 である。震災からの復興はまだ道半ばである。しかし、その軌跡が新しい日本の農業の在り方や、地方での生 き方のロールモデルになると私は考える。

  9. 1. 提案の背景と目的 福島県は、広大な耕地面積を持ち、桃、米、梨、きゅうりなど多様な農産物の生産が盛んです。しかし、 2011 年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により、多くの農地や施設が被害を受け、農地除染 と農業再生への取組をするものの、いまだ、風評被害や輸出規制の継続、後継者不足などの課題が続いてお り、福島の農業と流通業界をつなぐ持続可能なバリューチェーンの強固な構築を目指します。 2. 福島県の農業の優位性と課題 福島県は全国有数の農業県であり農産物の品質は高く、特に桃や米は全国的に評価されていますが、震災後 の復興には時間がかかっています。 ・優位性:広大な耕地面積と多様な気候帯、首都圏のアクセスの良さ、特産品のブランド力があること。 ・課題:震災と原発事故の影響、高齢化と担い手不足、農地の集積率の低さ、荒廃農地の多さ 3. 「信頼・ストーリー・連携で実現する持続可能な仕組みづくり」に向けた施策案 福島の農業の持続可能な発展のためには、バリューチェーン(生産/農業・製造・物流・販売・消費者接 点)の各段階において、信頼(安全性・品質の可視化)、ストーリー(復興や地域の魅力を伝える)、連携 (行政・企業・消費者との協働)を軸とした一体感ある取組が必要不可欠です。以下に、各段階に対応した 具体的な施策を提案します。 1)バリューチェーン全体を支える官民連携基盤の構築(全体横断) ・官民一体となった法人を新設し、行政・メーカー・食品卸・小売などの会員企業が持つ技術・知見・ネッ トワークをフル活用できる体制を構築する。バリューチェーン全体の調整・支援・情報共有を担う中核機能 を持たせることで、持続可能な仕組みを支える。※4/7講義 離島振興地方創生協会千野理事長講義より 2)新規就農者の参入促進と農業の魅力化(生産) 農業イメージは、儲からない・将来性が見えないなど経済的な不安や依然として3K(きつい・汚い・かっ こ悪い)があるとのこと。イメージを変える施策は以下の通り。 ・福島の成功している若手農家の収益モデルの可視化し、「儲からない農業」のイメージを払しょく。 例)サブスク型販売モデルの導入、スマート農業による生産性向上など。 ・「福島のスマート農業(最先端)や今後の農業の姿」を示し、労働環境と収益性のイメージを払しょく。 ・立地を活かし、農業体験や自然を楽しむエコツーリズムを通じ、都市部の若者や移住希望者の関心喚起。 3)福島ブランドの再構築と販路強化(製造・販売・消費者接点) 福島県は、未だ残る根強い風評や出荷制限により価格面や産地イメージへの影響があり、ブランド力の強化 が必要とのこと。復興に向けて、科学的根拠に基づいた「安心・安全」の発信強化や農家の方の復興までの 想いや道のりをストーリーにのせ、消費者の共感を生み出し、信頼を得ます。 ・復興の象徴となる「(仮称)語れる福島産品」ブランドの立ち上げ、復興ストーリーを軸としたロゴ・パ ッケージデザイン(QRコードあり※)や販促素材(動画、商品・販促POP等)を統一。 ※科学的根拠に基づく安全性の可視化による信頼構築や復興ストーリーによる共感を図る。 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 ・小売店での専用コーナーや福島産品フェアの展開、ECサイトでの季節ごとのキャンペーン展開などを通 じて、消費者との接点を増やし、福島の魅力を発信。 4. まとめ(感想) 講義および課題レポートの作成を終えて、日本は地球温暖化や人口減少により食料安全保障が揺らぐ中、福 島県は、震災から 10 年以上が経過した今もなお、風評被害や輸出規制、避難者帰還の遅れといった課題を 抱えており、今回、「新しいビジネスモデル」の提案を取り組む中で、福島県庁の取り組みなども調べる機 会を得て、福島県の現状を多角的に学ぶことができたのは大変貴重な経験でした(提案内容に新規性が乏し い点ご容赦ください)。日本の農業の再生には、官民一体となった取組が不可欠だと感じていますが、まず は、「食の流通」に携わる一人として、自分にできることを考え、少しずつでも行動に移していきたいと思 います。

  10. 福島県の農業は、2011 年に起こった東日本大震災と福島県第一原発事故により、深刻な打撃を受けた。原発事 故により、大気中に放出された放射性セシウムなどが農地に降り注ぎ、農業ができなくなった地域もあった。 一部の地域では避難指示区域に設定され、長期間農作業ができなくなる事態になり、原発事故後、一定以上の 放射能が確認された野菜、果物、米、畜産物、水産物などの食べ物は出荷制限や風評被害の影響を受けた。 東日本大震災から 14 年経つ現在も風評被害で苦しんでいる農家も多い。 今回の講義において、放射性セシウムの性質や放射性セシウムの除去の方法、福島の農作物の安全性など学ぶ ことができた。また、ICT による業務の効率化において様々な取り組みをされており、今後の技術の発展によ りさらなる業務の負担が軽減されていくことが、農業を守る手段となっていることに気づかされた。 福島県農産物の課題は、福島農作物は安全がしっかりと保障されているという事実を消費者が知らない、又は 適切に消費者に発信されていないことで苦労している農家の方が多い。私自身も今回の講義を受講するまで は、福島県の農産物の安全性について詳しく理解できていなかった。先ずは、食の安全性を消費者に伝えてい かなければならないと感じる。また、福島の魅力も同時に伝えていかなければならない。福島の魅力である豊 かな自然、歴史と文化、温泉や食文化などの魅力に触れてもらいながら、数多くの人と触れ合い様々な魅力を 伝える。福島に来て実際に食べた食は記憶の引き金になる。幼少期に祖母が作ってくれた煮物の味、初めての デートで食べた食べ物の香り、海外旅行で食べた日本食ではない料理の味など五感を通じて脳に記憶され、食 べ物を口にした瞬間に記憶がよみがえる。そして、思い出は誰と食べたかによって色付けされ、家族や友人や 恋人など場の雰囲気や人間観と深く結びついている。そこで私が提案したいことは、福島応援半額キャンペー ンである。具体的には、商品券の配布であり、福島県限定で使えるプレミアム商品券である。例えば、予め 5 万円で購入した商品券は福島県では 10 万ポイント使用できる。10 万円で購入した商品券は福島県では 20 万ポ イント使用できる具合である。物価高の昨今は、安近短のトレンド要素が強い。安近短とは、費用が安く、距 離が近く、日程が短いことである。福島県は東京から新幹線に乗り 1 時間 30 分程度で行くことができアクセス も非常に良い。このキャンペーンを通じ福島の魅力を伝えると同時に福島の強みを再発見し活用していくこと が次世代へ繋がる希望だと考える。私自身、岩手県出身であるが、岩手県に住んでいるときは地元の魅力など 皆無だと思っていた。改めて、地元を離れると地元の魅力を気づかされる経験をした。福島県もこのことと同 様であり、地元に住んでいる人に地元の魅力は発見しづらい。首都圏などから人を呼び、人口流動が行われる ことにより福島県が活性化される。福島の食べ物は圧倒的においしいし酒もうまい。そして、子育てや教育支 援が充実しており、保育料の補助や医療補助も充実している。山、海、湖、温泉が豊富であり自然とのふれあ いを重視している家庭には魅力的である。福島県の食の安全性と魅力を発見してもらい、人と食のつながりを より深く味わっていただきたい。

  11. ポケモン×福島の農業×流通業界 ポケットモンスター(※以降ポケモン)は、全世界に通用するコンテンツであり、1996 年に販売を開始した ゲームソフトを起点に、アニメ、グッズ、カードゲーム、ライセンスなど、様々な流通チャネルを通じて消費 者に届けられています。またキャラクターを活用したグッズ類の中には、食べ物にも活用されており、お土産 品などを通して日本全国で販売されている。そのような中で、キャラクターのライセンスを持つ株式会社ポケ モンは「ポケモンローカル acts」と称して、道や県ごとに選ばれた「推しポケモン」が、地域の魅力を国内外 に発信するお手伝いをする活動(Acts)を行っていて、私はこの取り組みを福島の農業と流通業界をつなぐ新 たなビジネスモデルに活用できないかと考えました。ちなみに「ポケモンローカル acts」では、キャラクター 名を冠した公園の整備やコラボ商品の開発を都道府県と組んで取り組んでいるため、行政との連携も可能とな ります。(飯舘村にも関連した場所(マンホール、ポケ蓋)があります。) 事業モデルとしては、まず@ポケモンとのコラボ商品の開発⇒A流通業界(スーパーや百貨店、専門店)で の販売⇒B販売時のキャンペーン企画⇒Cツアーを企画し、飯舘村に人を呼び込む、このような流れを考えま した。「福島の農業」の部分に関して言えば、例えばツアー企画として抽選で当たる飯舘村満喫ツアー(飯舘を 丸ごと味わう旅)とし、実際に現地に赴き、農作業体験や収穫体験などをしながら名産品を味わってもらうと ともに、現在の飯舘の現状を知ってもらうこともいいですし、飯舘は天の川が見えることでも有名なような ので、そういったところもツアーに加えてもいいかもしれません。ポケモンとのコラボ商品は、農産物に関係 するものがよく、パッケージへのキャラクター使用などが想定されると考えます。 現在ポケモンのゲームが初めて販売されてから 29 年経過し、その当時ゲームを遊んだことがある世代が親に なり、子供がいる人が増えていく中で、親子共通のコンテンツから子供への継承も可能であり、一連の体験が 子供の教育にもプラスの影響が期待でき、継続的に企画を開催することによって、持続可能な取り組みとな ると考えています。 その他に農業とのかかわりについては、満喫ツアーの中での農作業体験(コラボ商品の関わりをもたせる) はもとより、耕作農地のサポート制度(オーナー制度)などもできるのではないか、と私は考えます。 流通業界としては、こうしたツアーへの共同参画により、自社ブランドの浸透や地域振興への貢献を ESG 経 営への取り組みの一環として捉えることができ、双方にメリットがあると考えます。 最後にかなり付け焼刃なアイデアで少し突拍子もない部分もあるかもしれませんが、ポケモンの影響度は計 り知れないものがあると思います。ポケモンローカル act の取り組みは、基本ライセンス使用料が発生しない ため、一般的なコラボとは一線を画します。営利目的ではない分、ポケモンと地域の魅力がともに発信される ことが期待できるのではないかと思い、今回提案させていただきました。

  12. 序論 東日本大震災と原発事故から 14 年が経過した現在、福島の農業は様々な取り組みにより再生への道を歩んでい ます。農地の除染技術の開発、スマート農業の導入、B&S Village 構想など、技術と人の連携による復興が進 められています。しかし、福島の農産物が消費者に届くためには、生産者と流通業界の強固な連携が不可欠で す。本レポートでは、「信頼・ストーリー・連携」をキーワードに、福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジ ネスモデル「福島リジェネレーション・ネットワーク(FRN)」を提案します。この仕組みは、科学的根拠に基 づく安全性の「信頼」、復興の歩みを伝える「ストーリー」、そして生産者・流通業者・消費者の「連携」によ り、持続可能な福島農業の未来を創造することを目指します。 本論 1 1. 現状分析:福島農業の課題と可能性 福島の農業は原発事故後、科学的に安全性が確認されているにもかかわらず、風評被害という大きな壁に直面 しています。溝口勝氏の研究によれば、セシウムは土壌中にほとんど移動せず、除染後の農地で栽培された白 米の放射性セシウム濃度はすべて基準値を大幅に下回っています。また、地力回復のための技術開発も進んで います。しかし、これらの科学的事実が消費者に十分に伝わっていないことが課題です。 一方、飯舘村をはじめとする被災地では、ICT を活用したスマート農業や「飯舘ブランド」の開発など、新た な価値創造への挑戦が始まっています。こうした取り組みは「復興農学」という新しい農学の可能性を示すも のであり、希望や挑戦を意味する Resilience(回復力)の精神を体現しています。 また、令和の米騒動の例からも明らかなように、流通業界には正確な情報提供と在庫管理の重要性が再認識さ れています。この教訓を活かし、福島の農産物に関する信頼できる情報を消費者に届ける仕組みが必要です。 本論 2 2. 福島リジェネレーション・ネットワーク(FRN)の提案 FRN は以下の 3 つの柱から構成されます。 (1)デジタルトラストプラットフォーム「福島トレースシステム」: リアルタイム品質モニタリング:IoT センサーを活用した栽培環境データと放射性物質検査結果をリアルタイ ムで記録・公開します。 ブロックチェーンによる履歴保証:生産から流通、販売までの全工程をブロックチェーンで記録し、改ざん 防止と透明性を確保します。 消費者参加型検証システム:消費者が商品の QR コードをスキャンし、安全データを確認・評価フィードバ ックできる双方向システムを構築します。 AI による信頼性予測:蓄積データを AI が分析し、品質予測や安全性評価を「信頼スコア」として可視化し ます。 (2)ストーリーコネクト「福島の物語」プロジェクト: 生成 AI 活用コンテンツ制作:生産者インタビューから魅力的なストーリーを生成 AI で制作し、流通業者向 けに提供します。 AR/VR 体験コンテンツ:スマホで畑の様子・作業風景を AR/VR で体験できるコンテンツを提供します。 「語れる野菜」育成プログラム:流通業者向けオンライン研修で福島産品の魅力や背景を深く理解します。 ストーリー販促キット:販売店用の動画、POP、SNS 素材をパッケージ化して提供します。 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 (3)サステナブルコネクション「つながる福島」プラットフォーム: バーチャル産地訪問ツアー:Zoom や Metaverse 技術を用いた遠隔産地視察を定期ライブ配信します。 福島サポートサブスクリプション:月額制で福島産品を定期配送し、収益の一部を農家支援に還元します。 ESG 連携プログラム:企業 ESG 活動の一環として福島産品を活用し、ESG スコア向上を支援します。 流通×農業イノベーションラボ:生産者・流通業者共同の新商品開発・販売戦略ワークショップを開催しま す。 本論 3 3. 実装計画とビジネスモデル FRN の実装には段階的アプローチを採用します。 第 1 フェーズ(2025 年?2026 年):基盤構築期 ・デジタルトラストプラットフォーム基本システム開発 ・モデル農家 10 軒との実証実験 ・首都圏協力小売店 5 店舗でのパイロット販売 第 2 フェーズ(2026 年?2027 年):拡大期 ・参加農家を 100 軒に拡大 ・全国小売店 50 店舗への展開 ・ストーリーコネクトコンテンツ充実 第 3 フェーズ(2027 年以降):完成期 ・全国展開とグローバル展開(台湾等) ・他被災地域へのモデル横展開 ・完全自立運営へ 収益モデル: ・プラットフォーム利用料(月額) ・消費者サブスクリプション(月額会員費) ・企業向けコンテンツ提供料 初期投資は政府復興支援事業、クラウドファンディング、ESG 投資を活用します。 本論 4 4. 期待される効果と社会的インパクト FRN の実現により、以下の効果が期待されます。 ・風評被害の解消:科学的根拠に基づく安全性可視化で消費者不安を軽減。 ・付加価値の向上:ストーリー性付加で福島産品の価値向上と価格プレミアム実現。 ・持続可能な農業基盤確立:安定販路確保で農家収入安定・新規就農者増加。 ・コミュニティの再生:生産者・流通業者・消費者のつながりが地域再生に貢献。 ・新たな農業モデル創出:ICT とストーリー融合の新形を全国発信。 結論 「福島リジェネレーション・ネットワーク(FRN)」は、「信頼・ストーリー・連携」をキーワードに、福島の 農業と流通業界をつなぐ新たなビジネスモデルです。デジタル技術を活用した信頼構築、ストーリーによる共 感創出、多層的連携促進の 3 つの柱により、持続可能な農業の未来を創造します。 本取り組みは単なる風評被害対策ではなく、日本農業の新たな可能性を示すものです。溝口勝氏の「復興農 学」精神を体現し、困難を乗り越えて新たな価値を創造する Resilience(回復力)を具現化します。FRN を通 じて、福島産品が「安全だから買う」から「価値があるから選ぶ」商品へと変化し、日本農業と流通の新たな モデルケースとなることを目指します。 ICT とストーリー融合の「福島リジェネレーション・ネットワーク」は、技術と人の力を結集し、福島の農業 と流通の未来を切り拓くプラットフォームとして機能し、全国・世界へと広がっていくことを期待します。序 論 東日本大震災と原発事故から 14 年が経過した現在、福島の農業は様々な取り組みにより再生への道を歩んでい ます。農地の除染技術の開発、スマート農業の導入、B&S Village 構想など、技術と人の連携による復興が進 められています。しかし、福島の農産物が消費者に届くためには、生産者と流通業界の強固な連携が不可欠で す。本レポートでは、「信頼・ストーリー・連携」をキーワードに、福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジ ネスモデル「福島リジェネレーション・ネットワーク(FRN)」を提案します。この仕組みは、科学的根拠に基 づく安全性の「信頼」、復興の歩みを伝える「ストーリー」、そして生産者・流通業者・消費者の「連携」によ り、持続可能な福島農業の未来を創造することを目指します。 本論 1 1. 現状分析:福島農業の課題と可能性 福島の農業は原発事故後、科学的に安全性が確認されているにもかかわらず、風評被害という大きな壁に直面 しています。溝口勝氏の研究によれば、セシウムは土壌中にほとんど移動せず、除染後の農地で栽培された白 米の放射性セシウム濃度はすべて基準値を大幅に下回っています。また、地力回復のための技術開発も進んで います。しかし、これらの科学的事実が消費者に十分に伝わっていないことが課題です。 一方、飯舘村をはじめとする被災地では、ICT を活用したスマート農業や「飯舘ブランド」の開発など、新た な価値創造への挑戦が始まっています。こうした取り組みは「復興農学」という新しい農学の可能性を示すも のであり、希望や挑戦を意味する Resilience(回復力)の精神を体現しています。 また、令和の米騒動の例からも明らかなように、流通業界には正確な情報提供と在庫管理の重要性が再認識さ れています。この教訓を活かし、福島の農産物に関する信頼できる情報を消費者に届ける仕組みが必要です。 本論 2 2. 福島リジェネレーション・ネットワーク(FRN)の提案 FRN は以下の 3 つの柱から構成されます。 (1)デジタルトラストプラットフォーム「福島トレースシステム」: リアルタイム品質モニタリング:IoT センサーを活用した栽培環境データと放射性物質検査結果をリアルタイ ムで記録・公開します。 ブロックチェーンによる履歴保証:生産から流通、販売までの全工程をブロックチェーンで記録し、改ざん 防止と透明性を確保します。 消費者参加型検証システム:消費者が商品の QR コードをスキャンし、安全データを確認・評価フィードバ ックできる双方向システムを構築します。 AI による信頼性予測:蓄積データを AI が分析し、品質予測や安全性評価を「信頼スコア」として可視化し ます。 (2)ストーリーコネクト「福島の物語」プロジェクト: 生成 AI 活用コンテンツ制作:生産者インタビューから魅力的なストーリーを生成 AI で制作し、流通業者向 けに提供します。 AR/VR 体験コンテンツ:スマホで畑の様子・作業風景を AR/VR で体験できるコンテンツを提供します。 「語れる野菜」育成プログラム:流通業者向けオンライン研修で福島産品の魅力や背景を深く理解します。 ストーリー販促キット:販売店用の動画、POP、SNS 素材をパッケージ化して提供します。 (3)サステナブルコネクション「つながる福島」プラットフォーム: バーチャル産地訪問ツアー:Zoom や Metaverse 技術を用いた遠隔産地視察を定期ライブ配信します。 福島サポートサブスクリプション:月額制で福島産品を定期配送し、収益の一部を農家支援に還元します。 ESG 連携プログラム:企業 ESG 活動の一環として福島産品を活用し、ESG スコア向上を支援します。 流通×農業イノベーションラボ:生産者・流通業者共同の新商品開発・販売戦略ワークショップを開催しま す。 本論 3 3. 実装計画とビジネスモデル FRN の実装には段階的アプローチを採用します。 第 1 フェーズ(2025 年?2026 年):基盤構築期 ・デジタルトラストプラットフォーム基本システム開発 ・モデル農家 10 軒との実証実験 ・首都圏協力小売店 5 店舗でのパイロット販売 第 2 フェーズ(2026 年?2027 年):拡大期 ・参加農家を 100 軒に拡大 ・全国小売店 50 店舗への展開 ・ストーリーコネクトコンテンツ充実 第 3 フェーズ(2027 年以降):完成期 ・全国展開とグローバル展開(台湾等) ・他被災地域へのモデル横展開 ・完全自立運営へ 収益モデル: ・プラットフォーム利用料(月額) ・消費者サブスクリプション(月額会員費) ・企業向けコンテンツ提供料 初期投資は政府復興支援事業、クラウドファンディング、ESG 投資を活用します。 本論 4 4. 期待される効果と社会的インパクト FRN の実現により、以下の効果が期待されます。 ・風評被害の解消:科学的根拠に基づく安全性可視化で消費者不安を軽減。 ・付加価値の向上:ストーリー性付加で福島産品の価値向上と価格プレミアム実現。 ・持続可能な農業基盤確立:安定販路確保で農家収入安定・新規就農者増加。 ・コミュニティの再生:生産者・流通業者・消費者のつながりが地域再生に貢献。 ・新たな農業モデル創出:ICT とストーリー融合の新形を全国発信。 結論 「福島リジェネレーション・ネットワーク(FRN)」は、「信頼・ストーリー・連携」をキーワードに、福島の 農業と流通業界をつなぐ新たなビジネスモデルです。デジタル技術を活用した信頼構築、ストーリーによる共 感創出、多層的連携促進の 3 つの柱により、持続可能な農業の未来を創造します。 本取り組みは単なる風評被害対策ではなく、日本農業の新たな可能性を示すものです。溝口勝氏の「復興農 学」精神を体現し、困難を乗り越えて新たな価値を創造する Resilience(回復力)を具現化します。FRN を通 じて、福島産品が「安全だから買う」から「価値があるから選ぶ」商品へと変化し、日本農業と流通の新たな モデルケースとなることを目指します。 ICT とストーリー融合の「福島リジェネレーション・ネットワーク」は、技術と人の力を結集し、福島の農業 と流通の未来を切り拓くプラットフォームとして機能し、全国・世界へと広がっていくことを期待します。

  13. 「持続可能な仕組みづくり」を考えました時に、ボランティアや趣味であるならば毎回、赤字であってもいい かもしれません。しかし、職業や商売を考えますと利益を出し続けないと長期的な持続可能は難しいかと思い ます。農業経営は全く素人ですが、今まで赤字であったり、ほとんど儲からなくても続けてこられたのは、小 規模、家族的規模の農家が自分たち家族が食べる事ができて、少しの余剰を販売することによって何とか維持 できてきたのかと思います。このような小規模零細農家が大部分で、その従事者も高齢化でどんどん減り、根 本的に日本の人口も減っているわけだから、将来農業に就労する人も減っていくと耳にします。そこで講義に もありましたが通信情報技術や機械の自動化を利用する事によって生産性を向上させていくのが最近のスマー ト農業の1つなのかと思います。生産性が向上して農作物の収穫量が上げる以外にも、豊作等でも値崩れしな いような高付加価値の農作物も大事になってきます。又技術等が高度化するほど農業機械や設備の値段が高く なり、その投資コストを回収できないまま、更新時期がきてしまう問題もあるかと思います。以前ニュースで 現在は大規模農家にある程度集約化されているが、集約化は地域や作物の種類によってバラツキがあると耳に しました。現在の福島県は都心以外の地域と同様に人口が減り、高齢化が進んでいるかと思います。そしてそ のスピードは加速していくかと思います。農業以外にも各産業を持続可能にするためには福島県に定住又はあ る程度の長期間住まわれる人を増やす必要があるかと思ます。 しかし、それも中々難しいでしょうから、福島県にまずは来てもらうことで福島県の農業を始めとした各産 業を活性化させることは簡単とは言いませんが取り組み易いかと思いました。講義の農業も単なる農作物その ものを流通を通じて消費者に届けるだけでなく、福島ならでの高付加価値を最終消費者までしっかると届ける ことが流通業界の新たな役割や新しいビジネスチャンスがあるのではと感じました。 他に消費者も見たり、聞いたりするより、経験を通じでのほうが、いろいろ記憶に残りやすいので、福島で の食体験ツアー、農業体験など体験してもらう等で福島へ実際に来てもらう取り組み等、福島から全国や海外 ではなく、全国や海外から福島へ呼び込むビジネスが沢山生じれば、もっと福島の農林水産業や観光業が潤う かと思います。そしてその体験した人々が、改めてSNS等を通じて情報発信してもらう。付加価値は、オリ ジナル品種、特別な栽培方法、有機野菜などの農作物そのもののブランドと福島という地域の事情(復興から の復活、安心安全への取り組み)などを流通業界、食品メーカー等にPRし、理解していただき、消費者へ付 加価値を流通業界、食品メーカーに届けていただく。若者や海外向けならオールドメディアよりソーシャルメ ディアの方が、自由性があり、若い人や海外には新ビジネスのチャンスがあるかと感じました。 又福島に長期間いてもらうことができるような人に対しては、例えば、空き家を改装して住んでもらい定住 していただく。改装費や家賃の住居費用を官か企業が負担する代わりに、その人に@県内の農業等に従事して もらうA上記のように空いた店舗を改装して民宿や飲食店を運営してもらう。民宿ではインバウンド客や国内 客に対し福島県の何らかしらの魅力を発信してもらう。飲食店では、福島県の食材を使った新たな料理メニュ ーを提供してもらう。(地産地消)Bゲーム、アニメ、漫画等のコンテンツとコラボして福島県を観光スポット や食材を使用した料理を海外向に発信することにより福島県の魅力をPRし、福島県へのインバウンド客を増 やすや食材を輸出する機会を増やす。C全く農業と関係ない海外イベントにも参加し、福島県産の料理や食材 講義レポート NPO 法人 流通農業大学 を販売する等を考えました。 流通業界が、生産(農業等)→流通→消費へ一気通貫に通ずるために全くの新たな仕組みより、既存のモデ ルや官民(企業)、団体等が一体に連携、コラボをすることが結果として新たなビジネスモデルを生み、その際 には、インバウンドを含めた海外、将来性がある若者へ目を向けると成功する気がしています。

  14. 「福島の農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモデル」の提案 ・信頼面について 一般消費者は、一般的に風評被害には過剰反応を示すが、安全・安心については、興味がなければ知ろうと しない現実があると思われます。 国産野菜=安全・安心 中国産=農薬汚染など信頼性が低いなど、大きく間違っていなくてもイメージ先行 で選ぶ消費者は多いのではないでしょうか。 トレーサビリティは、何か起こった時の追跡手段で信頼性より原因究明の要素が強いようにも思えます。 震災後は、福島の農産物だけではなく、三陸産海産物なども忌避する人は多く、生産者の苦労は想像し難い ものがあったはずです。 しかし、あれから14年後の現在では福島産を避ける消費者はいないように思います。 信頼性を増すためには、飯館村ならではの特産・名産のPRに力を入れて、飯館村の野菜だからという理由で 消費者に選んでもらえる商品作りを目指すのがいいのではと考えます。 信頼は、イメージやブランド力があってこそ付いてくるものであって、数字だけでは表せない部分が大きい のではないかと考えるからです。 ブランド戦略において、実際に商品を販売する小売店の果たせる役割は大きいと思います。 この部分は、生産者だけではどうにもならないかと思いますが、タッグを組むことで双方に利益を生み、 一過性で終わらせることがなければ持続性も期待できると考えられます。 大企業でなくても可能ではないかと思います。 ・ストーリーについて 福島の農業にストーリー性を持たせることは、不幸にも大震災に見舞われた地域だからこそ、復興に向けての ストーリーがあると、今回の講義で気が付かされました。 除染、農地の地力回復、生産再開までのストーリーは、絶望や怒りから希望ややる気に変わっていく過程が 素晴らしく、知れば大勢の人が関心をもつはずです。 まずは、関心をもってもらうことだと思います。 関心が無ければ、人は知ろうともしないんだということが、今回良くわかりました。 まずは、流通業界が自分たちの売る商品に関心を持つこと(持ってやっていたらすみません)で変わってくる のではと考えます。 ・連携について 流通業界がブランド発信をする、消費者にストーリーを語ることで関心をもってもらう販売方法を、特化して やる店舗を作るビジネスモデルがいいと考えました。 単なる農産物直売所や道の駅とは、一線を画す店作りを流通業界が主体となっておこなうビジネスモデルを 提案させていただくことで、課題レポートといたします。

  15. 私はスーパーマーケットの精肉部に従事させて頂いていますので精肉部として考えてみました。まず私が考 えたことは、講義中溝口講師が仰っていていました、福島の現在使われていない広大な水田を貸して頂き自分 たちでお米を作ると言うことです。もちろん福島で育てたお米を販売する事もありますが、お米を作る際に飼 料用米も一緒に作るという事を考えました。今回の講義では福島には飯舘牛と言う品種がある事を知りまし た。そこで畜産農家の方と「連携」してサカガミで作った飼料で育った飯舘牛を育ててもらいそれをまたサカ ガミで販売をさせて頂くと言う事を考えました。現在の日本ではトウモロコシ等の飼料は輸入に多く頼ってい ると耳にしたことがあります。そこで国産原料の飼料さらにはサカガミで作ったともなると自分で言うのもな んですが、きっと素晴らしい飼料ができるのではないかと思います。そうすると安心や安全性が高める事が出 来るだけでなく、地元の飼料を使えば輸送に掛かるコストやエネルギーを削減でき環境にとっても良く、それ が「信頼」に繋がってきます。また畜産農家の方と直接的なやり取りをすることで利益をより確保知ることが 出来るのはないかと思います。さらにエサから育てた飯舘牛という「ストーリー」も出来ます。私たちはそれ をPOP(point of purchase advertising の略です)でそのストーリー、生産者の想いをお客様の「食 卓」にお伝えすることではないかと私は考えました。また野菜や果物ではよく見かけますが、「私が作りまし た」等の生産者シールと言うのでしょうか?それを精肉でも導入することでよりお客様に安心や安全性を伝え ることが出来、継続して商品を消費して頂く。さらに店舗での産地フェア等も開催することも出来ますね。ま た飯舘牛をやる際には震災から復興したことを前面にアピールしていきたいと感じました。と言いますのも福 島県ではありませんが同じ東北地方に属する岩手県大船渡市に本社を構えるアマタケさんでは、東日本大震災 で甚大な被害が出ましたが 同年 7 月 1 日被災した工場が復興稼働し、その 5 年後 2016 年 7 月 1 日宮城県に サラダチキン専門工場を竣工したことから日本記念日協会より 7 月 1 日をサラダチキンの日に認定・登録され ました。私自身過去にアマタケさんのサラダチキンを売り込んだ際には、このことを POP にて説明して販売を していました。もちろん他に特売をはじめ色々やっていましたが前の年に比べて倍以上の売上と点数を記録す ることができました。そう言った経験もあるので正式に認定されるのは難しいかもしれませんが、初めて飯舘 牛を置いた日などこじつけでも良いので「飯舘牛の日」のような記念日をお店独自に決めることでさらに販売 促進に繋げることが出来るのではないかと私は感じました。以上が今回の宿題である「信頼・ストーリー・連 携で実現する持続可能な仕組みづくり」をキーワードにして「福島農業と流通業界をつなぐ新しいビジネスモ デル」について私が考えたことになります。 私たちサカガミは他のスーパーとは違い値段ではなくその品質で勝負しています。「信頼を伝え、関係で売る 時代」まさに私たちにピッタリな言葉で、この言葉を胸に日々作業に従事したいと感じました。 今回の宿題に取り組む為に、頂いた資料やメモを見返していく中で、一つ気になったことがありますのでこ こで質問させていただきます。原発から 30 キロ地点の飯舘村では場所によって汚染度に違いがありそれにより 東京電力からの助成金に差が出でしまい問題になったとのことでしたが、ほかの原発から 30 キロ地点の市区町 村では同様のことはなかったのでしょうか?またそのようなことがあった場合になぜ溝口講師は飯舘村という 場合を選ばれたのか?お聞かせいただければ幸いです。


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Last Update 2025/6/24