放射線環境科学23



放射線環境科学(2023.12.13)  受講者 12名
担当: 溝口勝

講義内容


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。
 まずは自分のレポートがあるかを確認してください。ここにない場には受領できていない可能性がありますので知らせてください。

講義の感想

  1. 河北新聞では菅野さんによるコメントで「表土はぎ取り法」は金がかからない革新的な除染方法だというコメントが載せられていたが、東京新聞ではそのコメントの部分のところだけ消されていたという話が今日の講義で重要だと思った。新聞記事の内容であっても安易に信じるべきではないということであり、このように都市の人に地方の実情が正確に全て伝わっているわけではないということを示しているからだ。
  2. 今回の講義で一番大切だと思ったことは、学問は決して万能ではなく、問題が発生した時には研 究室での研究だけではなく、実際に当事者と対話して解決策を見つけることの重要性である。も ちろん、除染においては放射性セシウムや土壌の特徴のように研究データに乗っ取って効率的 かつ確実に農地の安全性を回復させることは重要である。しかし、偶然原発事故の被害に遭っ てしまった地元の人の感情を無視しては研究者との信頼関係が築けず、長い目で見ればデメ リットが大きくなってしまう。そのためにも、専門家の力を借りずとも農家自身ができる除染方法を 考案したり、除染後に栽培した作物の安全性を確かめたりすることも重要だと感じた。また、現地 の農業を再生させ(reconstruction)、風評被害を払拭するだけでなく、ICTの活用や担い手不足 解消の一案を提示するなど、むしろ震災前よりも良い状態にする復興(resilience)を重視すること は大切だと感じた。
  3. ・現場にいないと抽出できない問題があること。汚染土の上に客土を被せたあと空間線量はどのくらい減るのか、Csは移動しないのか、水に溶け出して下流を汚染しないのか、などの問題は、汚染された国土で生活しなければならない不安ゆえに具現化したものであるように感じた。 ・漠然とした問題を個々の課題として抽出することが求められていること。自分は他人が何に困っているのか、何が嬉しいのか汲み取る能力がとりわけ欠けているので切迫感がある。困っている人がそこにいなくとも抽出されるべき問題だってある。これについては尚更「今の自分にはできない」という危機感を覚える。 ・抽出した問題を解決するには基礎科学に基づく技術、というかマニュアル構築が必要なこと。専門家だけがわかるマニュアルではなく、専門教育を受けなかった者でも実行可能な言葉遣いでなければならない。 ・自分の得意分野を応用できるかどうか、現場に行って初めてわかる場合があること。 ・住民主導か専門家主導かという二分法は本質ではなく、お互いに知見を出し合い、できることを分担してやっていけるといいなと思った。
  4. 講義の中で最も印象に残ったのは、復興についての話です。震災および原発事故直後、前を向くことができなかった現地の生産者の方々が、今は夢や希望といった前向きな考えを持つことができていると聞けたことは、非常に驚きました。事故直後から福島に関わっているからこその言葉であると感じました。また、そのことによって、福島への対応に変化が生じていることについても、貴重なお話が聞けました。ありがとうございました。
  5. 私は今回の授業を受けて、セシウムは土壌中でほとんど移動せず、土壌放射線量が理論通りに自然減衰しているという事実が大切だと考えました。埋設汚染土が安全であるかという問題は関心があったのでその点を知れてよかったです。そこから2045年までに福島から除染土を移転するための現状の課題が明確になりました。  また、そのようにして蓄積されてきた放射性セシウムと土壌に関する復興知と実際の農業を結びつける必要があると感じ、その点が現在復興のために残っている問題点であるとも感じました。科学技術だけでは風評被害をなくせないことを忘れずに、農学と農業の信頼関係を大切にする姿勢が大切だと思いました。
  6. 今回の授業で最も印象に残ったところは、被災した地域で今現在行われている農 業などの産業再生の活動である。一度全てを失ったことによって、最新の技術を導 入する下地ができたようにも感じられた。そして、今行われてる、最新技術などを 利用した農業、畜産業などが成功を収めることによって、日本全体にもプラスにな り、また復興中の地域も日本の最先端を行く地域として、新たな形に生まれ変わる 事ができるように感じた。自分は工学系に進むことを考えていて、今までは放射線 の測定などの面しか考えてこなかったが、その後の復興には様々な分野の技術が使 えることがわかり、貢献の仕方の幅が広がったように感じた。
  7. 都市部の想像とは裏腹に、今福島現地で問題となっているのは除染問題というよりもその後の農業などの復興についてだということが大切だと思った。農地再生・修復のための新しいIoTの活用や企業・新機能業者を呼び込む工夫をすること、さらに復興知を次世代の人々だったり都市部の人々に伝えることが重要だということを学んだ。
  8. これからの農業にITを導入していく中で福島はとても大事な役割を果たすと思いました。 避難によって人がいなくなった土地でもう一度農業を始める場所が福島です。 今現在進行形で農業が行われている土地よりも新規のインフラを整備しやすいからです。 今の日本で新しい街づくりのというのはなかなか行いにくいと思いますがとても行いやすそ うな土壌が揃っているなと感じました。
  9. いかにして農地を復興させるか、という学術的な話も興味深かったが、それ以上に復興 後に先?が取り組まれた様々な事業の話が最も印象に残った。飯館村の農業を以前の状態 に戻すことを最終?標とするのではなく、新しい取り組みを飯館村から始めようという気 概に復興の希望を強く感じた。先?の得意分野を活かして農業とIcT技術をコラボレーシ ョンさせたり、新たな取り組みを進めることで、原発事故の印象が強い飯館村のイメージ を刷新することができると思った。街が再び豊かになるところまでを含めての復興という ものを初めて意識したので、他の被災地について考える時も今後はそうした視点を持って 考えていきたい。
  10. 人生万事塞翁が馬のところで沈み込んだ時に次にわくわくが来るだろうなと期待してしめしめと思うというのがすごい良くて人生長いし頑張ろうと思った。 インターネットやデジタルをうまく活用した農業への取り組みが聞いていて面白かった。インターネットオタクをやっていた時期があったからこそ関われるという面白さ、福島の事故が起こった時にちょうど専門だからアサインされるところとかも基礎学問を固めて期を待つことの大切さがわかってよかったです。 あとハチ公ラーメンなんで焼き鳥がささっとるのかと思っていたがとてもとても納得した。おいしかったです。 快活に話す気持ちよさと大切さを知りました。
  11. 君たちは、与えられた問題、つまり絶対に正解がある問題を解くのは得意なんだけど、現場から課題を見つけたり、発見したりする能力が足りていないんだと思う。と溝口氏はおっしゃっていた。まったくもってその通りというか、痛いところを突かれたというのが正直なところであった。 少し自分語りをすると、私は東大むら塾飯舘班の副部長をしている。そして東大むら塾飯舘部は、講義での紹介の通り、溝口研究室から支援をいただいて飯舘村で活動している。活動していて感じるのは、これは誰がための活動なのか、という疑問であり、焦燥である。私たちは、またひとつ勉強になった・ふむふむといって、ただ東京に帰っているだけではないのか、果たしてそれでいいのか。もちろん、訪問する過程で学びが得られるのは素晴らしいことだが、周囲に何も変化を起こさずして、お金をいただくに見合う活動と言えるのだろうか。たしかに私たちには、溝口氏のような農学に関する専門知識を持ち合わせていない。だから何もできないと決めつけてはいないだろうか。村民の方(たいていは農家さんのことが多いけれど)ひとりひとりの話に耳を傾け、現場に潜む課題を抽出できたか、あるいはしようとしたのか、己を顧みる機会となった。 課題を解決する、そのための専門的知識であり、頭と手を動かしてやり抜く力であり、ファシリテーション能力であろう。ただ、それらが未熟だからと言って、課題を発見する能力から目を背けてはいけない、そのように感じた。
  12. 今日の講義で特に印象に残ったのは、 農学栄えて農業滅ぶ という言葉だ。私はこれまで生命科学や生態系に関する研究に興味があり、農学部を志していたのだが、この言葉を聞いて学問の発展が実際の産業に結びつかないことへの懸念を持った。私が今主に触れているのは「農学」だが、世の中に学んだことを役立てるためにはただ勉強するだけではなく、現場を見ることや体験することも重視していく必要があると思った。また、飯館村復興の話の中で、大学と村が連携するプロジェクトがいろいろあることを知り、興味を持った。日本酒造りは特に面白く感じた。


みぞらぼ
amizo[at]mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
Update by mizo (2023.12.21)