土壌圏の科学(2023.1.11)

土壌の凍結

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。
最終的にはこのようなページになります。---> (イメージ)


資料

土の凍結(2023.1.11)  受講者50名

講義資料 出席フォーム(提出締切:1月17日23:59)

Q&A

  1. 土の凍結でちょうど良く汚染土だけ取ることができたというのが面白かったです。それが除染にどのくらい役に立ったのか知りたいです。
    (返信)実際に公的な工事で使われることはありませんでした。公共工事は実績が優先されますので。
  2. 凍土壁を作る上で、凍結棒(?)をどこまで挿入するかの目安があるのかどうか気になった。
    (返信)凍結菅はボーリングマシンで30m深さの掘削孔を1m間隔で掘って挿入したと聞いています。
  3. 講義内容そのものについての質問ではないが、凍土、福島、情報通信技術など、農学に関わる部分とはいえ、多分野に渡って研究をするのは大変ではなかったですか。
    (返信)大変だと思ったことは一度もありません。原発事故後にこんなことをやっているのは世界中探しても誰もいないのでとても楽しい。現場で見つけた課題を即研究テーマにできるのも面白くて仕方がない。最近はサルから里山を守るために開発中のフィールドWiFiカメラでサルがいつどこから出没するのかを毎日観察しています。「七人の侍」という映画を知っていますか?まるで映画の主人公(菊千代)になった気分で、野生サル群とマサル(勝)の飯舘決戦の日も近いと思いながら毎日戦術を考えています。
  4. 福島第一原発に凍土壁を導入する際に、他の工法と揉めた、みたいな話を聞いたことがあるのですが、いかがだったのでしょうか。
    (返信)揉めたというより、分厚い鉄板で放射線を遮蔽している敷地内では通常の工法(地中連続壁工法など)が使えないので、狭い敷地内でもボーリング用掘削機だけで施工可能な凍結工法しか選択肢がなかったと聞いています。これを読んでみてください--->凍土と人工凍土壁についてのQ & A 凍土分科会会長をやっていたこともあるためか、日本雪氷学会・凍土分科会のページから当研究室にリンクが張ってあるwww
  5. 先生が凍土の研究を始めた時は、「そんなことやって何になるの」と非難の眼差しを向けられたこともあった、ということをちらっとおっしゃっていた気がします。私だったらそこでマイナスな思考に陥ってしまいそうですが、先生はその時どう乗り越えましたか。
    (返信)当時は三重大学の助手をしていたので、ナニクソ魂を発揮して、毎年卒論生を連れて大阪の地下鉄工事の凍結工法の現場見学会を実施して凍土愛を維持していました。--->私の土壌物理履歴書
  6. 粘土の隙間の話で、セシウムがカリウムのいた場所に居座るというのは、セシウムが一度入ったら嵌まって抜け出しにくいことだけが理由ですか。それとも穴に引き寄せられやすい性質などがあるのでしょうか。
    (返信)講義では説明を省きましたが、アルミニウム八面体シート内の3価のAlイオンが粘土鉱物の生成過程で2価のMgやFeに一部置き換わっていている(同型置換)ためにシリカ四面体シートの粘土表面はマイナスになっています。そのために1価の陽イオンのKやCsが(Naは水分子を引き寄せた水和状態で)電気的なクーロン力で粘土表面に引き寄せられています。しかしKよりもCsの方が六員環の孔のサイズにピッタリしてために一旦嵌まると抜けにくくなるらしい。自然の妙だね。(--->聞いてみよう!あなたの知らない“土の世界”-放射性セシウムとの関係-
  7. 凍土壁で水を遮断した場合、流入しなかった地下水はどのような挙動をするのでしょうか。
    (返信)原子炉建屋群を迂回して太平洋に流れ込みます。--->福島第一原子力発電所 汚染水対策の概要

今日の講義で学習した中で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

 
  1. 凍土遮水壁が災害に有用なこと
  2. 凍土に遮水性があったこと。またその特性を活かして工業的に凍土が活用されていたこと。
  3. サラサラだったり柔らかかったり、ミクロに見ると流動体的な面を持つ土壌を凍らせることで扱いやすくできるという発想は非常に興味深い。
  4. 土壌は微生物とかだけじゃなくて凍土もあるということ。
  5. 凍土には高い強度や小さい環境負荷をはじめ、遮水性など色々な利点がある。
  6. 凍土研究は、凍上害の克服、凍結工法といった凍土の利用、気候変動のセンサーとしての活用、惑星の分析などに必要である。
  7. 土壌が凍結する時に、粘土粒子に吸着している物質が移動すること、他の農学技術にも生かされそうだと思った。
  8. 凍土の技術は地下水の遮断や、凍上害、永久凍土の融解など様々なことに適応して考えることができ、また生きる上で土壌は欠かせないものということ。
  9. 凍土と聞くと、永久凍土や原発汚染水関連の事象をイメージしていたが、凍結工法という形でトンネルの掘削等に利用されており、環境負荷が少ない上に、強度や遮水性の面からもメリットの多い工法であると知り、非常に興味深く感じた。 "
  10. 東大農学部として現場から課題を発見し、解決する学習の強化が必要だということ。 私自身、アフリカや東南アジアでの開発農業に興味があるため、現地に行って何が問題となっているがローカルな視点を持つ必要性を感じる。"
  11. 土壌凍結は寒冷地での自然の現象でしかないと思っていたが、農業のみならず工学的な側面もあることがわかった。
  12. アクアラインの作り方に関して、海底の地上より上の部分に筒状のトンネルを設置したのかと思っていたが、地中を凍土工法によって掘り進んでいたことは驚きだった。自分が気になったものについて調べて確かめることが必要だと感じた。
    (返信)トンネルのすべてを凍らせるわけではありません。掘削の最初と最後の部分やトンネル接合部分だけです。
  13. 凍結工法の具体的な特徴と、特にどの段階が工事を進めていく上で困難か。
  14. 私が今行っている机の上で理論を学ぶことだけでは足らず、実際に現場に足を運んで問題を発見解決していくことが重要だと感じた。
  15. 実地的な農学の知識を座学として取り入れてそれをまた実地へ活かしていくことに大切さ
  16. 凍土が色々なことに応用できることが大事だと思いました。特に地球温暖化に関して、永久凍土の融解をセンサーとして活用でき、それを守ることはすごいなと思いました。
  17. セシウムが農地土壌中に固定されるメカニズム
  18. 土の凍結でちょうど良く汚染土だけ取ることができたというのが面白かったです。それが除染にどのくらい役に立ったのか知りたいです。
  19. 地盤凍結工法
  20. 凍土
  21. 熱力学を用いて吸着水の動きを記述できること。
  22. 放射線と粘土の話は以前他の講義でも聞いたのでもう一度きちんと復習したいと思った。
  23. 凍ると水を通さなくなる
  24. 被災地で夢を持って活動している人がいること、レジュリエンス。
  25. 地下にトンネルを通す時にどうやって穴を維持しているのか昔気になったことがあったので、凍土壁の施工について知れたのは楽しかった。
    (返信)シールドマシンは前面で土(岩盤)を削りコンクリートの円柱を入れながら地中を掘り進みます。
  26. 凍土という、農業には一見関係ない分野が、農地のセシウム汚染を解消するのに役立ったことは面白いと思った。農学は実学だが、役に立つか分からない未知のものを研究することが本質なのには変わりないのかなと思った。
  27. 土壌中の水の挙動は熱力学で記述できるということ
  28. 学生という若い世代の人間にとって座学は大切であるが、現場に出て自ら課題を見つけて取り組むことが非常に大事であるということ。
  29. 興味を持って研究に打ち込む。
  30. 土壌中の水分の凍結過程を解明し把握することが、凍土害対策や福島の遮水壁としての活用、温暖化による永久凍土融解への取り組み、さらには汚染土の除去など、広く活用の可能性が広がっている。この原理から現場は農学の面白さ。
    (返信)はい、現場を持っていることが農学の強みであり、面白さです。これを読んでみてください--->福島から始まる復興農学
  31. 凍土が地球の現象やあらゆる問題を解決できるということ。
  32. FFBL
    (返信)FPBLですね。
  33. 土から離れては生きていけない。 "
  34. ポジティブ思考 ユーモアを持って楽しく生きていたらきっとどうにかなる(どうにかできる)と勇気を頂きました。しんどい時こそ楽しく頑張りたいと思います、ありがとうございます。"
  35. 土の中の水が凍り、霜柱が成長することで起こる凍上害に関して、土の中で霜柱が成長するのは、霜柱が少しでも生じると、表面近くの水が少なくなって水ポテンシャルが低下するため、それによって霜柱の真下まで水が上昇してきて、そこでまた霜柱が形成されるからであるというのが重要だと思った。
  36. 凍土は様々な用途があるということ。自分は今まで、地理で学習するような地質面での凍土しか馴染みがなかった。しかし、都市部の道路建設にも凍土が利用されることを知り、非常に身近に感じることができたし、大変興味を持った。
  37. 凍土は崩壊しないくらいに強く、解凍すると凍結前の地盤に戻るため、トンネル工事などでの利用が注目されている。
  38. 凍土が多岐に渡り利用されていること
  39. (メインの土壌凍結の部分ではないが、)将来どうにかなる、という楽観的な気持ちを忘れないこと。私は元々ネガティブ思考が強いのもあり、やりたいことがはっきりしない将来に対して漠然と不安を感じることが多い。今日のお話を聞きながら、逆にそんな私だから、いろいろ分からない未来を楽しむ気持ちも大事なのではないか、と少し前向きになれた。
  40. 紙の上で考えるだけでなく、現場に足を運んで、見たり、話を聞いたりすること。
  41. 放射能汚染土壌の除染が、冬に土壌表面が凍結するのを待てば効率的にできること。
  42. 凍土に関してその環境を再現するのが難しい分、実地調査を行うのが大切なのだなと感じました。
  43. 凍土の特性とそれを利用することが重要だとわかった
  44. 強度や遮水性など凍土工法にはさまざまな利点があること
  45. 凍土壁が強度、遮水性や環境負荷の観点で優れていることや凍土壁の生成過程
  46. 凍結工法は強度・遮水性、均質性、環境負荷の少なさという点で優れた工法であること。
  47. わくわくグラフ。心身の健康を大事にしていれば今よりもっと楽しいことがあるということ。
  48. 凍土壁を利用した凍結工法が、地下部での建設において重要であること。
  49. 霜柱のでき方
  50. 正義のために知識と知恵を絞る、どんな生き方をしたいのか考えて勉強する。

自由意見

 
  1. 毛管現象とか物理を勉強して分かるようになりたいと思いました。
  2. 学生の心情に寄り添った授業でとても面白く、内容に集中できました。
  3. 単に土壌だけではなく、それに関連した事柄、トンネル工事や凍土での建築・パイプライン、シベリアや惑星上での話を包括的に聞けて興味深かったです。
  4. 稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞けという言葉が胸に響きました。何事に対しても、偏見や先入観を捨てて、心を開いて自分の目や体や耳で感じたいなと思いました。面白くて楽しかったです。明るい気持ちになれました。ありがとうございました。
  5. 楽しい話し振りで面白かったです。研究のために自分で実地に赴くことについて考えたことがなかったのでそのきっかけになりました。
  6. 先生のお人柄が素敵だと思いました。
  7. 体力付けます。
  8. ユーモアのある授業で楽しかったです。
  9. オンライン受講で即座に反応できませんでしたが、私は北海道出身で祖母の家庭菜園畑の土が春先にひび割れしているのを見ていたので、凍土のひび割れの話は身近に感じました。
  10. 何度か講義を受けたことがあるが、焼き鳥の話は初めて聞いた。
    (返信)これを読んでみてください--->真実は1次データに宿る
  11. 凍土についての話面白かったです。自分は今座学で土壌物理学を学んでいて、難しいと感じていたが今日の講義を聞いてもう少し頑張ってみようと思いました。
  12. 面白い講義をありがとうございました。いつか福島に行きます(できれば飯館村)
  13. 内閣府に勤めているときにわくわくグラフが上昇されていたのが、(政府の仕事は大変だと他の先生が嘆かれているのをよく耳にするので)意外に思いました。どういうことにわくわくしたのか、気になります。また、復興農学会のHPを先生が作られたとは知らなかったです、HPの写真美しくてとても好きです!
    (返信)私の土壌物理履歴書の「役人として見た農学と土壌物理」を読んでください。
  14. 意外性に溢れる授業でした!
  15. 健康第一で楽しく生活したいと思います。
  16. 講義の本筋からは外れますが、霜柱を構内でも見つけられることに驚きました。
  17. かなり幅広い内容の講義で、オムニバスの最後としても良かった。
  18. 霜柱ができるメカニズムについて考えたことがなかったのでなるほどと思いました。普段目にしているような当たり前の現象にも疑問をもって見つめることが大事だと感じました。
  19. 凍土に関する知識は寒冷地帯の永久凍土ぐらいしかありませんでしたが、凍土はトンネルの建設や放射線汚染除去など、重要な場面で活用することができるものだと知り、大変驚きました。自分は現在卒論生で、土壌の物理性とは離れた分野を研究しているのですが、2年前にこの講義に出会っていればこの分野の研究室に進むことを検討していたと思います。興味深い講義をありがとうございました。
  20. ハチ公の話が面白かったです。あと溝口先生が学生時代遊んでばかりだったけれど教授になった話が面白かったです。

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Update by mizo (2023.1.18)