東京大学総合科目一般・水と土の環境科学

福島から始まる復興農学24

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。

資料

福島から始まる復興農学(2024.5.2)  受講者?名 講義スライド

今日の講義で学習した中で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. 復興にはさまざまなことが必要だが、協力精神がやはり大切だということ。
  2. 原発被害に対して正しい理解を持つこと
  3. メディアの情報を鵜呑みせず様々な情報を理解してから判断をすること。今までなんとなく福島はもう放射能で壊れた地域で、福島からの農水産物は全部食べてはいけないものだと思っていたんですが、今日の授業で科学的な資料を初めてみて、物事を鵜呑みすることはよくないと気付きました。
  4. 他の人がやりたがらないことを自ら引き受けること。
  5. 大学生の時代に何かしらの基礎となる能力を養っておくこと。人間万事塞翁が馬。
  6. 福島の農産物はセシウムを多く含んでいるわけではなく、風評被害で消費者が減ってしまっているということ。
  7. 地元の人同士の繋がりが復興において1番大事だと思った
  8. 現場の声を聴くこと
  9. 原発事故後の復興は土の回復だけでなく、地域全体の幸福生活を目指すべきだという点
  10. 風評被害に苦しむ被災地に対して、消費者は冷淡に忌避するのではなく、助け合いの精神であえて被災地の作物を買うべきだという言葉に、思わずハッとしました。
  11. 復興について。復興とは何なのか?と真剣に考えたのは初めてだった。長期的な視点で街をつくり直していくことはもちろん、住民も外部の人も協働して、住人が精神的な安心感や幸福感、達成感を得られることも復興の一部だとわかった。
  12. 土壌汚染に対して適切な処置を講ずることの重要性
  13. 飯舘だけの問題ではないが,田舎に若者が住むという状況をいかに維持するかが大きな課題であると思った。
  14. 放射線への正しい知識を持って、創意工夫を積み重ねながら除染などの課題解決に向けて取り組んでいくこと
  15. コミュニティの維持においてコミュニティの崩壊時にコミュニティの復興かそれに依存しない方法を模索するかの舵取りを素早く行うこと
  16. 災害のあった農地を捨てるのではなく、復興していくということ
  17. 農家・農村に住む人のために農学があるのだということ
  18. 復興において重要なのは技術だけでなく、正しい知識の普及も、風評被害による復興の遅れを防ぐためにとても大切だということ。
  19. 被災地で、若者がいなくなることや風評被害が広がることなど復元力がなくなってしまうような状況を解決するための方法を考えることが重要であると思った。
    --->最近こんな冊子作成に協力しました。「集落のミライズを描いてみよう!〜人×ICTではじめる農村地域づくり〜」
  20. 「復興」の意味について、現地の福島民と研究職の方々で考え抜くこと
  21. 原発被害について正しい理解を持つこと
  22. 放射線量を測定したり、除染したりというのは、全て国とか県がやっていたのではなく、立ち上がった地元の人たちもいるということ。
  23. 地域の復興にも農学が重大な役割を果たすこと

質問

  1. 飯舘村の復興のために努力を重ねていることがとても素敵だと感じました。関心を持たないで距離を置くことは簡単だが、苦しんでいる人々がいるという現状や知識を持って、特に若者が些細でもいいからムーブメントを起こすのが大事だと感じました。
  2. 汚染された表土を地中に埋めるという方法が紹介されていたが、そこで農業を行った場合、農作物の根が汚染層に達することによる悪影響はないのか
    (回答)根が深くまで伸びない作物であればCsの移行はほとんど無視できるレベルだと私は考えていますが、環境省は飯舘村長泥地区で実験をしています。「飯舘村長泥地区における再生利用実証事業」  現地見学会もたびたび開催されています。
  3. 土壌物理学について先生がどのような研究をされているのかより詳しくお聞きしたいです。 キャップ制の関係でこちらの講義を聴講という形で受講したいのですが,必要な手続きはありますでしょうか。
    (回答)まずはこれ(私の土壌物理履歴書)を読んでみてください。 いま土壌物理学に関する講義は土壌圏の科学( A1ターム)の中で土壌の凍結を担当しています。凍土遮水壁の話などをしています。
  4. 農産物や海産物の線量値が低くても、過剰な心配をして購入を控える人たちは多いと思います。そうした人たちに、安全ですと訴えていくのは重要なことだと先生は考えますか。
    (回答)いいえ。十人十色です。科学的なデータに基づいて、自分が許容できるならば許容すれば良いし、他人が許容しないのであればそういう人もいるんだな、と思うだけです。
  5. 放射能漏出時のシミュレーションがあったのに関わらず必要なその時に使われなかったのはなぜなのか

自由意見

  1. 確かに情報を発信することは必要ですが、風評被害をうまないためにも、正しく受信する能力が必要だと思いました。
  2. 最近、現代の技術を盲信してしまうこともどうかなと思いました。地震みたいな災難時には、先端技術は壊れたりうまく作動しない場合が多いのに、インターネットなどの技術で制御できる装置で管理しようとすることは危険ではないのか思いました。
    (回答)その通りです。1通りの方法に頼るのでなく、複数の策を講じることが大切だと思います。インターネット技術はその一つだと考えています。災害対策用のStarlink衛星インターネット利用法の研究開発も重要だと思っています。
  3. 東大むら塾の活動に興味を持った。
    (回答)今からでも入会してはいかがですか?詳しくはホームページを見てください。
  4. 東日本大震災の被災地域などの、災害に遭った地域の復興ももちろん興味があるが、過疎化するなど地域が衰退した地域の農業の再発展の手助けも興味があるので、似たような支援もできるのではないかと考えました
    (回答)飯舘村は原発事故で一気に人口が減少しましたが、今後日本が迎える超高齢化社会に10年早く直面しているとも考えられます。飯舘村の今の問題を解決することは将来の日本の農村の問題解決に繋がります。
  5. 自分が興味ある分野は地域開発と関係ありますが、今回授業の災害後復興とは違うという印象を持っていました。ただし今回先生が復興を回復力という視点から解釈し、地域住民の幸福を目指すという点は共通で、勉強になりました。
  6. 私は岐阜県のド田舎出身ですが、いつも祖母が地元に帰っておいでねと言うのが正直苦痛ですが若者に会うと年寄りは元気が出ると聞いて、年寄りも年寄りで頑張ってるんだなと思いました。
    (回答)その通り!できる時におばあちゃん孝行をしてあげてください。
  7. スマート農業の推進により農村に若者を呼び込むことは有効な戦略だと思った。東京のオフィスから遠隔操作で農業を行い1ヶ月に1回ほど現地へ赴くようなスタイルも実現できれば農村の再興も可能だと思う。(農村の人口増加にはつながらないが、、、)また、土壌汚染について溝口先生は発ガン率の上昇する放射性物質の基準値を政府より高く見積られており、それ自体は正しいと思うのですが、政府発表は重大な責任を伴うことから万が一に備えて基準値を低く見積もっていると思います。しかし、安全性を担保するあまり現地の住民の生活が制限されることは望ましくないため、安全性と規制緩和の均衡を議論を重ねて見極めていくべきだと思った。
    (回答)1.交流人口という用語があります。都会の人に農地を貸し、平日はインターネットカメラや気象・土壌データを眺めて週末に農作業に来てもらうような新しい農業サービスも可能だと思います。2.放射性物質(放射線)の基準値をどこまで許容するかは人それぞれです。各自が判断するしかないと思います。
  8. むら塾ってどんな活動をしているんでしょうか、、、祖父母が農家なので気になります。
    (回答)ホームページを見てください。
  9. ニュースで見る除染や原発事故の様子ではかなり大変な作業や土の処理方法に難儀する姿ばかりだったが、わずか50センチ土を掘って表土を埋めればそれで事足りるというのは衝撃的だった。国はもっと学術的な成果や民間の試みに門戸を開いていくべきだと思ったし、もし国の方法で進めていくのであれば最終的な処分の筋道まで見通した上で除染作業に踏み込んでいくべきだったのではないかと思わないではいられなかった。
    (回答)国は国なりにやっていると思います。許容の度合いが人それぞれだということだと思います。
  10. そもそも今後の日本の農業を考えるにおいてコミュニティの維持ということを重視する必要性があるのかどうか? 個人的にはコミュニティに依存しないような基盤を作らなくては行けないと思う
    (回答)若くて健康なうちはそう思うかも知れませんが、いずれは皆年老いてゆく。結局、人は一人では生きていけないのだと思います。だからこそコミュニティが大切なのではないでしょうか?
  11. この二回の授業で農業というものを実感的に少し知れた気がします。ありがとうございました
    (回答)それは良かった。農の業(なりわい)について引き続き考えてみてください。
  12. 先生は自分の研究だけでなく、それが活用される現場のことも考えねばならないと仰ったが、私もそうあるべきだと思う。独りよがりにならず、ちゃんと農家の皆さんのためになる農学を目指すにはどうすればいいか考えるヒントになってありがたかった。
  13. 事前のシミュレーションが実際には使えなかったり、実際の農地では野獣などのことも考えなければならなかったりと、技術を実用的なものにするには経験することが重要なのだろうけれど、それに加え知識と想像力も必要なのかなと思いました。
  14. 確かにメディアで情報を発信することも大切ですが、同時に受けて側が誤った情報に惑わされず正しく受信することも必要だと思いました
    (回答)はい、その通りです。だからこそ、誤った情報に惑わされないようしっかり勉強しておく必要があるのです。
  15. 僕の母親は放射能汚染を心配して、今でも福島産の食べ物は買おうとしません。母の影響を受けて、去年の夏休み、友人と浪江を訪れるまで、僕の中で福島は遠い存在でした。原発事故直後から、福島と積極的に関わってきた先生のお話を聞くのは新鮮でした。

Q&A読後の追加の質問や意見

  1. むら塾の新歓結局行かなかったのですが少し考えを改めます

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Update by mizo (2024.5.7)