土壌圏の科学(2025.12.2)

土壌の凍結とその利用

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、学生が講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づき、より深みのある理解を得られるようにすることを目的に作成しています。

資料

土の凍結(2025.12.2)  受講者31名(もっといた筈:感想未提出者は提出してください)

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(参考)昨年度のQ&Aとコメント:今年と比較してみてください。

Q&A

  1. 凍土を人工的に作り維持するためにはずっと冷却し続ければならないのですか?その場合どれくらいのエネルギーコストがかかり、それはどれくらい環境に影響しているのか気になります。
    -->はい。でも凍土厚を維持するために冷却するだけなので凍らせるときより圧倒的にコストは安くなります。
  2. 土壌の凍結には膨大なエネルギーが必要になる気がしたのですが、そのあたりの省エネ化などは進んだりしているのでしょうか。
    -->膨大なエネルギーといっても夏に東京で冷房代に比べたら大したことはありません。
  3. ALPSでトリチウム以外の核種が取り除かれるとあったが、トリチウムを取り除けるような技術が開発される見込みはあるのか疑問に思った。
    -->トリチウムは核融合発電の燃料になります。資源のない日本にとっては核融合発電の技術開発は個人的にはチャンスといえます。トリチウム水を濃縮する技術は重要ですね。調べると結構あるようですが、現状では実用化に向けてコストや規模、効率などの課題が指摘されているそうです。 ChatGPTトリチウム分離・濃縮技術
  4. 土壌水の熱力学のパートで、現実の土壌中では水の中に様々な物質が溶け込んでいると思うがそれらが熱力学ポテンシャルに影響を及ぼしていないのか(あるいは誤差範囲なのか)気になった。
    -->溶質はもちろん水ポテンシャルに影響します。塩漬けにすると野菜中の水が抜けるのは塩によって野菜の外の塩水の水ポテンシャルが低いからです。この溶質による体積あたりの水の化学ポテンシャルの低下量は「浸透圧」と呼ばれています。
  5. 凍結工法の発明と発展
    -->講義中に説明しました。より詳しく知りたければ自分で調べてください。
  6. 土を凍らせるために必要なエネルギー、凍らせたままにしておくためのエネルギーはどれほど必要なのでしょうか
    -->(ヒント)0℃の容器内の水1gを凍らせるのに必要なエネルギーは-80cal(熱を奪う)。0℃の容器内の氷1gを解かすために必要なエネルギーは+80cal(熱を与える)。つまり容器周囲を0℃に保っておけば氷は融けません。あとは自分で推算してみてください。
  7. 霜柱がニードル状になるのが不思議だなと思いました。土から出てきたあと隣のものとくっついてアイススケートのリンクみたいな感じになってもいいのになと思いました。
    -->霜柱は温度勾配の方向に氷が結晶化して現象だからです。
  8. 霜柱に7階建てのものがあったという話について、どのような条件がそろえばそのような霜柱が出来上がるのでしょうか。
    -->1階の床面が0℃以下になりその下から水が供給され、その日のうちに氷の結晶成長が一度停止し、翌日また1階の床が0℃以下になり水が供給され・・・、これが7日間続けば7階建の霜柱マンションができます。(上階の霜柱が壊れなければ途中休憩しても良いかも)
  9. 畑の土は1日に1cmしか水が移動しないということですが、それは例えば雨や水やり等は含まれないのでしょうか?感覚的には、鉢に水やりをするともっと速く(数秒程度で)水が出てきます。
    -->講義では説明を省きましたが、均一に充填された土についての透水性の性質でした。鉢の土は密に詰まっていませんので緩い隙間から水が流れ出てきます。
  10. 永久凍土の話では生物との相互作用の重要性が指摘された。放射性物質の移動には土壌物理だけではなく、生物に取り込まれた放射性物質が生物の移動により拡散するケースもあるのではないだろうか。
    -->はい、あります。その影響評価をする必要があります。
  11. 凍土遮水壁ができた後にも福島原発内の汚染水をくみ上げて処理した理由がわからなかった。ChatGPTは凍土遮蔽壁では地下水が完全に止まらない、水位が上昇して海に流れる危険があると言うが、汚染水をくみ上げるから水位を同じにするように地下水が流入するのであって、汚染水がそこにあればそれ以上地下水は流入しないのではないだろうか?
    -->鋭い質問ですね。原子炉下の土(地盤)は密閉されていないので地下水とも連続しています。大雨の時などは原子力建屋内に屋根からも雨水が入り込むのでもしも汲み上げなければ高濃度の汚染水が下に移動してしまいます。そのために汚染水を汲み上げて下から上に地下水が上がるよう制御しているのだと思います。(たぶん)
  12. 火星の凍土を研究することで今後どのようなことに応用できると思いますか?
    -->火星移住計画(テラフォーミング)、資源開発など

講義で重要だと思ったこと

  1. 凍土遮水の方式では施工面積が小さく、遮水壁が不必要になっても溶けるだけなので土壌に及ぼす影響が少なく、総合的に環境負荷が小さいという点。
  2. 穴があったら突いてみること。
  3. 土壌は物理学的な視点で見ることも大切
  4. 凍土の透水性の低さや強度から、地中での建造物に適すること。
  5. 凍土は強度、遮水性、温度の均質性、低環境負荷において優れており、さまざまな工業的な利用法があるということ。
  6. 凍結工法が重要だと思った。地下空間は昨今も開発が進んでおり、今後も掘削技術として有用であるためである。薬剤を注入せず土壌環境にも良いと思われる。一方で、冷却にかかる電気等の供給が、どんな場所でもいかなる時も維持せねばならない難しさがあるような気がした。
  7. 凍土壁は普通の土壌と比べて地下水の遮蔽性が高い
  8. 農学部とはいえ、数学的物理的な理解も十分に必要であると思いました。
  9. 永久凍土の地面の上で生活する人々の暮らしの知恵が興味深かった。貴重な資料や資源としてではなく、自分の生活を送っていくために凍土を守っているお話には、永久凍土と共に生活しているということを感じさせられた。
  10. 凍土形成の仕組みとその有用可能性。
  11. 凍結工法の完全な遮水性。遮水性が高いことでトンネルを掘る時のシールドも水で濡れることがなく、また原発における凍土遮水壁も機能するから。
  12. 土の凍結はトンネル・地下鉄工事や原発など色々な方面で活用されていること
  13. 思いきり
  14. 今まで海ほたるを、なんの感情も抱かずに利用していたが、今日の建設法などを聞くと先人に感謝せずにはいられないと思った。
  15. 今まで、トリチウム汚染水を海洋放出しているのは日本くらいで危険性を孕んでいると認識していた。しかし世界のトリチウムの液体放出量を見てみると日本よりもはるかに多く、日本の報道と世界のトリチウムの認識が異なっているのだと実感した。このことから一部の情報よって偏見を持つのではなく、正しい情報を科学的視点から得ることが重要であると思った。
  16. 凍土壁の形成によるトンネル工事の工法。凍らせるだけっていうのがシンプルで面白かった。
  17. 水ポテンシャルに従って水が移動すること
  18. 凍土の研究をすることで遮水壁から始まり遺跡の保存や放射性セシウム除去など、広い分野で応用できる点
  19. 福島第一原発事故における、凍土を用いて汚染された地下水の循環を止め、さらなる被曝を防ぐ試みの例を学び、凍土が人々にとってとても有用であるということが重要だと思った。
  20. 海底トンネルの建設方法は今まで考えたことがなかったので非常に学びになり、凍結法が非常に興味深かった。
  21. 凍結工法は環境負荷が少ないこと。工事等において、地下水や土砂への対処法は凍結工法の他にもあるが、環境への負荷が少ないという点が他の技術と一線を画す重要な点だと思った。
  22. 放射線・除染を考えるためには、放射性物質が粘土にトラップされていることを念頭に置く必要がある。
  23. 放射能汚染でセシウムが粘土に吸着する話や凍土の剥がし取りで容易に除染できるという話が興味深かった。原発事故は今後も起きる可能性があり、土壌物理学の応用として積み重ねた知見を保存し、事故が起きた際に迅速に共有する仕組みが重要であると感じた。この点でチェルノブイリ原発事故で得られた土壌物理学に関する知見にどのようなものがあったのか、福島原発事故の後でそれがどのようにアップデートされたのかに関心を持った。
  24. 凍土による壁の形成は短時間で行えることや水の遮断が可能なこと、そして工事の際に小面積でも可能なため、壁が必要だが、狭いという場所でも活躍できることが、そのまま海底トンネル工事や原発の汚染水かくり、汚染土壌はぎとりで応用されているということ。
  25. 凍土による遮水壁はボーリング孔を開けて冷却管を入れる方法のため、掘削して鉄板を埋め込む工法に比べて小面積で工事を行うことができる点で優れている。
  26. 「凍土遮水壁は万能ではない」ということ。原発の配管が複雑で凍結しないなどの問題があるため、他の対策と組み合わせる多層防御方式が採られることが多い。また、深さも30mという限度があるため、完全に遮水することはできない。
  27. 水ポテンシャルなどと密接に関わる土壌の性質やその研究が、遺跡の保存など広範な分野と関連すること。
  28. 凍土による地下水の分断
  29. トンネルの建設をはじめとして、地下空間の利用は都市開発上重要であり、その中では土地改良が必要となってくる。その一つの手段として、地盤凍結工法の利用は重要である。
  30. 今回の講義を受けて初めて凍土という存在を知り、福島第一原発での凍土壁の活用事例や従来のセメント、薬液注入では対応が難しい大口径の地盤改良における凍土壁の利用など特性、環境などの影響を踏まえて様々な方法があることを知った。凍土壁は万能ではなく、課題もあるが他の工法では達成できない止水性があり、今後状況に応じた技術選択の可能性が社会の安全につながり、それらのいい点悪い点を踏まえて最適な方法を選ぶ視点が重要だと思った。
  31. 頭でっかち・インテリにならず、まず現場に行ってみることが大事。
  32. 凍結工法が重要だと思った。地下空間は昨今も開発が進んでおり、今後も掘削技術として有用であるためである。薬剤を注入せず土壌環境にも良いと思われる。
  33. 凍結工法は環境負荷が少ないこと。工事等において、地下水や土砂への対処法は凍結工法の他にもあるが、環境への負荷が少ないという点が他の技術と一線を画す重要な点だと思った。

自由意見

  1. 凍土の科学という今まで全く考えたことのない分野の話でとても面白かったです。ツンドラ構造土や火星の構造土は柱状節理と似たような原理に思えた。
  2. 液状水が水蒸気に相変化することで水ポテンシャルが低くなり、水の移動が起こる仕組みは植物の蒸散による水分の吸収の仕組みと通じていると思いました。
  3. 凍土の研究も農学部のフィールドであるというのは知らなかった。理学系の研究や、インフラ系の工学の分野と親和性の高い話題で興味が持てた。
  4. 七階建ての霜柱が見てみたいと思った。
  5. 凍結工法で凍らせたところを掘る時、凍結した土壌が溶けて水分が出てきて壊れたりしないのだろうかと思った。
  6. 土壌凍結が意外と自分達の生活に関わりがあることが分かり興味深かった。
  7. 凍土研究が思わぬ分野で知識が役立つところがすごく興味を持てた。
  8. 凍土に関する知識だけではなく、数学を用いて凍土形成や凍土の保持を研究することに関するお話が一番興味深かったです。
  9. アクアラインの工事にも用いられたという話が興味深かったです!
  10. どこに行っても体力と食欲を維持します!!興味深いお話をありがとうございました。
  11. 処理水の海洋放出について、トリチウムの半減期が12年と短いことも強調されるべきではないかと思いました。
  12. 何かの本でものを燃やすよりも凍らせる方が多くのエネルギーを必要とすると習ったので、ものを凍らせる技術がインフラ的側面で活躍しているのが意外だった。
  13. 水ポテンシャルの話で、前期課程の「森の生物学」で植物の道管では水ポテンシャルの差を利用して水分・養分が送られると学んだことを思い出しました。
  14. 凍土遮水壁についてはこれまで存じていなかったし、地盤凍結工法がこんなにも利用されていることも知らなかったので、土壌凍結に対する理解の重要性を認識することができてよかった。また、それほどに応用先があることが興味深かった。

他のコメントを読んで考えた追加の質問・コメント

  1. 凍結工法は維持のために多くのエネルギーを要すると思ってしまっていたが、地下の温度は比較的一定かつ深くなれば低くなることを考えると予想よりも少ないエネルギーで維持できそうであるとわかった。
  2. 火星の凍土の研究についてコメントがあった。火星には生き物がいないので、火星にあるのは土壌ではなく岩石の粉だけではないだろうか。そうだとすれば、その凍土の性質は地球の土壌とはかなり異なるのではないかと、ふと思った。
    -->レゴリス(regolith)ですね。有機物を含まないという点では「土壌」とは言えないのは確かです。しかし、有機物を含まない岩石の風化物であっても物理的には無機物の粉体でありその粉体の隙間に水があれば、低温・低圧の条件下で固体と気体の状態で水が存在し得ることが水の状態図から断言できます。そして、その「凍土」は強度や透水性の面では地球上の凍土と近いと考えられます。
  3. 農学部か、そうでないかという括りでもって自分も気付かぬうちにバイアスをかけてしまっているのだなと思った。
  4. 11.凍土遮水壁ができた後にも福島原発内の汚染水をくみ上げて処理した理由がわからなかった。という質問は確かにそうだと思った。しかし、もし多量の雨水が流入した際、不透水層、凍土遮水壁で囲われた領域の地盤が緩み、最悪の場合液状化などが起きうることも考えられなくもない。このような観点からも汲み上げて処理するのは理にかなっているような気がした。
  5. 火星の凍土の話があったが、火星の太陽が当たらない面は非常に低温だと聞いたので凍土を作る間もなく凍っているのではと思った。火星や月では土壌ではなく岩盤が露出していてその上に少し風化した砂が被っているようなイメージだっったのでそもそも火星に土壌があるのか気になった。
    -->2の質問と重複しますが、要するに「土壌」とは何か、という定義の問題ですね。生命を含まない粉体は土壌でないとも言えます。
  6. 火星の凍土が具体的にどのようにテラフォーミングに活用できるのかが気になりました。
    -->例えば、火星上に基地を作る際に凍土に基礎杭を打ち込む必要があるなど。ChatGPTに聞いたら体系的に次の回答がありました。ChatGPTの回答
    昔こんな研究発表をしたことを思い出しました。火星凍土に関する研究
    パワポ:Moisture and salt movements in sand during evaporation under reduced pressure, Symposium on Freezing and Cold Region Phenomena@明治大学農学部, 論文(2001, 2002, 2003

    惑星の永久凍土(末吉・溝口, 2004)
  7. 自分は文系出身なのですが、農学でも数学物理の理解は必須だということを痛感しました。

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Update by mizo (2025.12.9)