放射線環境学20

復興農学による原発被災地の農業再生

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。
 

資料

復興農学による原発被災地の業再生(2021.1.7)  受講者約60名

講義スライド

講義中のグループ討論で提出された質問に対する回答

  1. Q 全国的に飯館村と同じような汚染状況の地域では、具体的にどのような除染が行われているのか。
    A 福島県の浜通り地域特有の問題ですので全国的にはこれほど大がかりには除染は行われていません。世界史にも残る大事業といえるかも知れません。事故直後は福島県中通り地域でも表土を削って地中に埋めるような作業が行われていましたが、いまはほとんど行われていません。

  2. Q 田車かき掃き出し法による負担と費用はどれくらいなのでしょうか
    A 国の公的な除染法に比べたらほとんどゼロです。作業する人の人件費だけです。私は農家が自ら除染したらその除染費用を農家に補助すれば良かったのにと思っています。

  3. Q 反転耕と汚染土の埋設はどちらも農地に汚染土が残っているという点で農家の人々の不安や不満を解消しているとはいえないのではないか。?
    A はい、その通りです。でも科学的データに基づいて安全性を理解してもらうしかありません。それをどういう方法でやるのか?本当に納得してもらえるのか?サイエンスコミュニケーションが大切だと思います。

  4. Q 土の上と下を入れ替えるのが良いと思ったが、取り組みとしてそこまで進んでいるように思えないがどうしてか??
    A 1枚の田んぼでも汚染の程度にはばらつきがある。土を入れ替えるだけで工事費用は莫大になる。それよりは表土をとるだけの方が早くて安い。

  5. Q 田車法での排水路でこし取られたセシウムを含む泥は、またそれを汚染土として回収するということでしょうか。その場合の表土剥ぎ取りに比べたメリットというのは汚染土の量が少なくなるということなのでしょうか。
    A いいえ、乾いたら上から汚染されていない土をかぶせるだけです。

  6. Q 表土削り取り、水による土壌攪拌、反転耕のそれぞれの金銭的コストや環境的影響、所要時間の差はどれほどになるのでしょうか。
    A この順番に早く・安くなります。

  7. Q 10000ベクレル以上で表土剥ぎ取り、5000-10000ベクレルで水による攪拌などこの基準はどのような根拠で決まっているのか
    A 過去の土壌科学の文献や研究に基づいて基準が決められました。工学的には5000と10000Bqはエイ、ヤッというところがありました。

  8. Q なぜ表土剥ぎ取りに比べ、凍土剥ぎ取りの方が費用が安く済むのか
    A 勝手に凍って固まり取りこぼしがないからです。

  9. Q 客土を行うよりも表土を削り取ることを行なっている中で、最終的に削り取った表土はどこでどのように処分されるのでしょうか。
    A 飯舘村では8000Bq/kg以上の土は大熊町の中間貯蔵施設に運ばれ、それ以下の土は長泥地区の地中に埋設される予定です。

  10. Q セシウム以外にも粘土中に固定されやすい1価の陽イオンはないのだろうか
    A ありません。Naなどは水分子で水和された状態で粘土表面にゆるく吸着しています。偶然にも原子のサイズが粘土鉱物の穴のサイズとほぼ同じなので、セシウムが一番固定されやすいのです。

  11. Q 砂に対して水を入れて振ると粘土が浮かんでくるという話が冒頭にありましたが、これと同じようなことが大雨が降ることで起こり、土壌中に埋めたセシウムが粘土に混じって流れ出すということはないのでしょうか。
    A ありません。50cm以上の汚染されていない土が被っているので汚染土がむき出しになるくらい深く耕うんして水と混ぜない限りはセシウムを固定した粘土は動きません。また、データでも示したように普通に水田稲作をしても土壌中で放射線量が最大値を示す深さは変わりません。これは土壌中で粘土粒子が移動できない結果です。ちなみに、水たまりになりやすい窪地には粘土が集まりやすいため放射線量が高くなります。

  12. Q Cs(を含む粘土)が土壌中で移動しにくく浅い位置にとどまるということは、カリウム施肥は137Csが十分に崩壊するまで継続しなければならないということですか。
    A いいえ。時間経過とともにCsは粘土に固定されて、植物根が利用しにくなるので普通の施肥管理(窒素・リン酸・カリ)をして、カリ不足にさせしなければCsの吸収はほとんどありません。

  13. Q 汚染土を埋設した場合セシウムの移動はほとんどないとのことでしたが、土壌の構成成分によって影響は出ないのでしょうか?粘土鉱物が少ない土壌でも同様な結果が期待されますか?
    A もちろん土壌によって移動のパターンは異なります。たまたま阿武隈山系の土は花崗岩が風化した土だったのでセシウムを固定しやすかったのです。

  14. Q 戻らないと決断されている住民の方が30%ほどいらっしゃるとのことですが、その方々にもこの講義や記事のような説明ができたら、故郷に戻ってきたいと思われる方もいらっしゃるかなと思ったのですが、その方々とお話ししたり、ご報告したりできる機会などはあるのでしょうか
    A 残念ながら報告の機会はなかなかありません。時々、市民が主催するシンポジウム等でお話しする程度です。個人的にはTwitterで広く発信しています。

  15. Q 住民感情にのっとって反転耕ではなく表土剥ぎ取りが続いたとのことでしたが、住民感情よりもコストなどを優先するという選択肢はなかったのでしょうか
    A 日本は民主主義の国家ですから住民が納得しない限りそれは難しい。問題は誰がそれを住民に説得できるかになります。国->県->村、と仕事が下りてきたものの、結局は住民を説得しきれなった。合意形成というのは本当に難しいものです。

  16. Q 汚染土の長泥地区への埋設はスムーズに決まったのでしょうか。(例えば住民の反対など)
    A もちろん反対はありました。特に、当事者でないマスコミや一部の研究者などは今でも反対している。でも、村役場と長泥の住民の何度にもわたる話し合いにより実現しました。

  17. Q NPOに主婦の方から電話があったとあったのですが住民の方に理解を求める説明会などはどのようにして行ったのでしょうか。
    A 住民とは飯舘それとも下流の市町村の人のことでしょうか?説明会は開いていません。YouTubeを公開しただけです。ちなみに、住民とか村民にいろんな人がいます。私は住民とか村民といった場合、それは誰のことを指すのか常に注意するよう心掛けています。

  18. Q 最後の参加者の方は科学が裏付けをすることによって避難者が不利益を被っているということを主張しているように思えます。これに関して確かに意見すべき相手は科学者ではなく行政であるとは思うのですが、科学の信頼という点に関して、事実を明らかにしつつも行政に対し何らかの働きをすることも科学者の責任にはなり得ませんか。
    A はい、そうです。科学者の責任・役割は重要です。でも責任になるからと真実にめを背けて逃げるわけにもいけません。科学者にもいろんなタイプがいます。科学者もひとりの人間として、いろんな立場の人がいることを理解した上で真実を追求し、根気よく説得する義務があると思います。

  19. Q 現地の農家の方々に対して、放射線に関する基礎科学的な授業(α線、β線、γ線・X線はそれぞれ中身が違うなど)は行ったのでしょうか。
    A はい、やりました。ドロえもんの本はそのための教材のつもりです。

  20. Q 現地の住民と農業活動をしていく信頼関係を築く上で、科学技術に基づいた話を根気よく続けるという方法が一番良い方法だと思いますか。
    A むしろ根気よく通って顔を合わせることが大切です。科学技術の話はおまけとして説明するくらいのほうが良いと思います。

  21. Q 土壌汚染の改善は進んでいるが、それが県外の元住民に正しく伝わり、戻ってくる人が増えているのか?
    A ぼちぼちですね。福島県内の新聞はいまでも土壌汚染を話題にしていますが、首都圏の新聞は全く報じていません。3月11日が近づくとお祭りのように取材に来るだけです。マスコミがもっと継続的に伝えるべきです。

レポート課題

溝口研究室 Mizo lab. ホームページ  のTopicsの記事の中から1つを選んで読み、講義を聴いたことを参考にしながら、「あなた自身ができそうな被災地の農業再生について」考えを述べよ。A4で1枚にまとめて提出すること。
  自分のレポートがあるかを確認してください。非公開にしたい人はメールください。どれも良く書けているのですが、何となくいいな、という感想には花丸をつけてみました。(成績とは無関係です)

  1. 自分の農地を自身で除染したい百姓魂(「原発事故後、いかに行動したか」より)」のトピックを読み、実際に被災地を訪れた際にただ作業に加わるだけでない方法での農業再生を考える。しかし高度な土壌物理学の知識があるわけではなく、放射線に関する知識も本講義で得られたものしかないので、科学的な農地のステータス改善の提案は困難である。そこで被災地の農村地域に他地域からの旅行者を誘致することで被災地の農村が外貨を獲得する方法を考える。グリーンツーリズムにあるように都会に在住する人々が被災地での農業やその周りの自然を体験する旅行のツアーを計画する。被災地やその近辺の自然の美しい地域を現地調査、聞き取りによって探し、PRして観光名所化するとともに、農地近くにある廃校などの利用可能な建物を宿泊施設とすることで農業体験者の滞在先を整備する。そうした具体的な計画、土地・利用方法を現地の方々とのワークショップ等を経て考えていくようなことは自分自身にもできそうな被災地の農業再生である。またそうして出来たツアー計画についてSNSや動画メディア等を通じて認知度を向上させるような取り組みも実現可能と考えた。
     

  2. 私はtopicsの中から「スマート農業の死角」、「真の復興、飯館村民に学ぶ」の二つの記事を読んだ。まず、被災地の農業再生が目指すべきゴール像について。これまではいかに放射性セシウムを作物中から取り除き基準値以下の作物を作ることができるか、つまり除染によって農地を震災前の状態に戻すことが求められた。しかし、私はもし被災地前の状態に農地や農家の方が戻ったとしても元来農業が抱える高齢化問題に直面するだけなのではないかと考える。記事にもあったように除染されて制限が解除されても若者はあまり戻ってきていない。高齢化がさらに進んだ土地で元来の農業を復活させても未来はない。そこで被災地の農業再生が目指すべきゴールは次世代のライフスタイルに沿った農業形態の確立であると考えた。具体案は、「被災地のインフラの拡充及び住宅の建設による都会に住む人々の誘致、そして農業と本業が両立できる自然に恵まれた環境での新たなライフスタイルの提案」だ。withコロナやICT技術の発達により都市一極集中の時代は終りを迎えるだろう。インフラが整っていればどこにいても仕事ができる時代に照準を合わせて、被災地となった農地は変わる必要がある。飯館村のように東北には自然が豊かな場所が多い。人がごった返した都会と自然に囲まれ空気もおいしい地方、インフラも仕事も条件が変わらなければ人々にとって魅力的な居住地は後者になる。これで多くの新規住民を獲得できれば農村の高齢化問題は解消される。次のステップで新規住民に家族農業を提案する。地元の農家の方々のノウハウとドローンなどの技術を組み合わせれば、農業にかかる労力は格段に減る。本業の片手間にドローンで農地を管理したまには家のそばの自分の農地に作物の成長を見守りに行く。経済的にも精神的にも豊かな新たなライフスタイルが被災地の農村で完成する。ここで目指す農村のあり方は単なる都市化ではなく、インフラが充実しながらも自然に囲まれた次世代農村である。まだ自然が壊されていない東北の農村だからこそ提案できる地域の在り方である。もちろんこの案には多くのデメリットや懸念点も考えられるしそもそも実現不可能かもしれない。しかし、被災地の農村における再生は、ただ元に戻すことではなく変化する時代を見据えてその時代の流れに沿った姿に変化することだと私は定義したい。被災地の強みと時代の需要のマッチが大切だ。
     

  3. 福島原発事故以来の福島における問題は、客土後の農地再生、避難した住民が戻ってこないことによる農業の人手不足等が挙げられる。これらの問題を解決するためには、農業に携わる人数を回復させること、農業を開発すること等が方策として考えられる。東京にいる自分たちができることのひとつとしては我々が農業に対してもっている、地道で大変であるという従来のイメージを反転させ、若者が興味を持つことができるような農業方法の導入・改革が考えられる。その例として、ICT (情報通信技術)を活用したスマート農業の導入が挙げられていた。他に考えられることとしては、定期的な現地調査を繰り返し、サンプリングした土壌などについてシミュレーションを行うことで農作業に画期的な物理的、もしくは化学的な工夫を加えるようにすることもある。私は以前、工学部で、事故が発生した後の原発のような人が立ち入れない危険な場所での作業を行うことができるロボット開発を行なっているという話を聞いた。このように、他学部と協力して現状高齢化が進んでいる農地での農家の方々の負担や健康リスクの軽減に繋げられる機械やシステムの開発に取り組むことも有効ではないかと考えた。そしてそれは規模が大きくなることも厭わずに進めていきたいものである。
     もうひとつ、自分たちにできることとして、福島の現状をよく知るということが考えられる。これまでの授業でも風評被害といった問題が大きく存在することが紹介されてきたが、福島県産の農作物にネガティブなイメージを持つ人が多くいることはそれらの農作物の需要や価格の低下をもたらすこととなる。その結果、現地の農家のモティベーションは下がることになるため、農業人口の減少の加速、ひいては地域の過疎化にもつながってしまう。実際は福島県産の農作物に基準値に触れるような危険な作物はないため、その事実を周知のものにすることが必要だと考えられる。そのための具体的な方策としては、講演会に加えて、小中学校等の教育機関で汚染に関する授業を取り入れることなどがあるのではないかと思われる。
     最後に、これが最も大事なことだと思われるが、現場の人の話を聞くことで現状をより深く理解することが挙げられる。これまでの講義を通して、汚染状況等は理解したつもりでいるが、それでも理論的なことが中心であり、自分も分かった気になってしまうことは危険であり、説得力もあまりない。最新の情報や実際福島にいる人々が感じていることを深く知るためには、様々なことに興味を持って調べたり、現地を訪れて様子を観察したり、実際に話を聞いたりすることが必要ではないのだろうかと思われた。そのようにすることで現場に対して親近感を持つこととなり、さらに現状改善への意欲が高まることも期待されるのではないだろうか。
     (ホームページ内のtopicとして、「若者の交流や挑戦 活発に (毎日新聞, 2018. 10. 27)を読み、参考にしました」
     

  4. 農業農村開発の技術を考える」の記事を読んだ。昔の共同作業があった頃の農村から機械などが導入されて村の行事も変容していくというのを、実際の農民や村人目線で考えたことがあまりなかったので、記事を読んでその目線を少し追体験できたようでとても印象的だった。私自身将来途上国の農業の発展に関われたらと思っていたが、その最に想像していたのが技術や機械の導入や、収量の多い品種の開発などであり、実際にその地域で暮らしている人たちの生活や文化やそれらが導入されることによるその生活の変化についてリアルに想像したことはなかったことに気付かされ、技術導入などは一方的に押し付けるものではなく実際そこで暮らす人々に基づいていることの重要性を改めて確認できた。
     被災地での農業に話を戻すと、本日の講義でも、除染作業の際に農家の方の意向で実際にはほとんどの除染方法がが表土削り取りになった話や、自分の農地の除染は自分自身でしたいという意向から凍土剥ぎ取りでの作業が行われたなど、当たり前かもしれないが農家さん自身の自分の土地への熱意が感じられ、またそれが農業再生への動力になって動かしているような印象を受けた。
     これらから、農業再生で主力となるのはやはりあくまでその地域の人たちの力であると思ったので、私自身ができそうな被災地の農業再生としては、その現地の人たちの復興や農業再生へのエネルギーの後押しをすることだと思う。もし将来的に直接的な援助をできるような機会があれば現地の人たちが求めているものをうまく掬い上げてプロジェクトを行うなどが考えられるが、現在すぐにできるものとしてはありきたりではあるが福島県産の農産物を買うことだと思う。しかし風評被害などの問題もあり、福島県産の農産物はスーパーなどの直接買える場所から消えてしまって、未だにキュウリなどの例外を除いて業務用でないものはあまり出回っていないと聞いた。そこで今回調べてみたところ米に関してはJAで通販での直販を行っていることが分かり、本日の講義で主に水田の話が扱われたこともあり興味が沸いたのでぜひ一度購入してみようと思う。
     

  5. 溝口研究室ホームページTopicsの中において、下野新聞2020年4月26日の日曜論壇の記事を拝見させていただいた。というのも、今回の講義の中で最も自分に印象深く響いたことが「現場主義」であるためだ。現地で実際に先生方が赴いていらっしゃる姿、現地での調査を重ねていらっしゃること、また、福島第一原子力発電所による放射能汚染の事故が生じた半年後、2011年9月より東大農学部の有志の方々が飯館村で現地調査活動を行われていたり、授業中のブレイクアウトセッション前に読ませていただいた記事のような説明会・カフェの実施など、被災地の農業再生について考えを深め、様々な策を講じていくためにはまず、現場で現場の状況について自分の五感の全てを通じて調査し、事実を事実として「知る」ことが大切であると講義から学んだ。東京近郊で机に向かい、飯館村の現地におけるデータと向き合い続けるだけではなく、現場に行くからこそわかることがあり、そして初めてわかる、現場で必要とされていることがある。同時に、現場に自ら赴き現場を知っているからこそ、住民の方々と話し、調査結果をお伝えする際、住民の方々の感情や思い、深く知りたいと思っていることを理解できる時もあると授業内の記事を読んでいる過程で感じた。飯館村など被災地の土壌に関する現状を理解するためには、土壌に関する根本的な知識の理解が欠かせないことを感じ、私自身ができる被災地の農業再生として、土壌のメカニズムを今自分ができる最大限の理解を行うことだと考えている。今の私は、文科三類から理転し、化学や生物の基礎的な知識すら何も身についていない状態で農学部に進学しようとしている一人の未熟な大学生に過ぎない。化学や生物を一から、いや、ゼロから学んでいこうとしている私だからこそ、今の私が大学の講義や自分での積極的な勉強を通して土壌のメカニズムや被災地の土壌に関する現状を学び、加えて、コロナの状況を鑑みながらも飯館村に実際にお伺いし、現地の状況や調査を拝見させていただくことで、吸収したことを子供などへ文字や実際に会えるイベントなどを通じ、伝えられるのではないかと思う。今回の課題では「私自身」ができそうな被災地の農業再生ということであったため、伝える相手を「子供」とした。というのも、今私は大学の女子サッカー部で子供向けのサッカースクールを行なっており、「自分自身ができること」を具体的に考えた時、子供に説明したい、と思ったのである。自身の行なっている活動と重ねながら考えを記述することは確かに個人的な話だと思うが、誰が誰に伝えるか、という部分は伝わり方、受け取り方、響き方の点で、非常に大きな鍵を握っていると思う。私は子供と大人の境界を今生きていて、大人がどんどん近づいてきている。子供だからこその感情や疑問を少しずつ消していかなければならない、そんな今、この時が過ぎてしまう前に、境界を生きる私が、これから世界をますます広げていく子供たちに、自分が大学という環境に置かせていただいているからこそ得られている学びと自らの五感でしっかりまっすぐ感じた「事実」を自分の言葉で伝えることに意義があると考える。講義中におっしゃっていた、一部の表現が消された形になった新聞のように、時には事実が少しゆがんでしまいそうになる一部のメディア媒体を通してではなく、自分の表現で事実を伝えることが大切に思えるのである。大きな政策を作ろうと、大きな目標を立てて努力を重ねることは確かにとても大切だ。だが、「今の私」ができる被災地の農業再生に向けた取り組みは、あまりにも大幅に背伸びをして大きな目標に向かう取り組みではなく、「今の私」にしかできない、先述のような取り組みをするべきだと考えるのである。
     

  6. 今すぐにできることと、長期的な目標としてできそうなことの2点があると考えられる。
     今すぐできることとしては、まず被災地の農産物、およびそれを用いた商品を消費すること、またそれをSNS等のインターネット上で発信することによって、身の回りの人にそれを勧めていくことが考えられる。
     長期的な目標としては、まず様々な分野の知識を学び、より強い効果を持つ農業再生を見つけていくことが考えられる。具体的な目標を立てることは難しいが、例えば安全を保障するようなデータを取って公開することなどは、数字として安全性を示すことができるという点で有用であるのではないかと考えた。
     

  7. 「真の復興、飯舘村民に学ぶ(下野新聞日曜論壇2)」を読んだ。
     

  8.  溝口ラボtopicsの「福島県飯舘村の除染に尽力−スマート農業で再生へ」を読み、それについて考えることを述べる。
      記事では、現在までい工法の普及などで着々と土壌の除染を進めてはいるが、帰村率はまだまだ低く、除染後の土地でどのような農業を展開するかが課題になると述べられている。実際の例としてICTの活用が提唱されていて、むしろ最先端の農業を始めるいい機会かもしれないとも書かれている。私も、この意見には賛成である。今回の復興を機に最先端の農業を発達させることができれば村の外から若者を呼び込むことができ、災害発生前以上に村の人口を増やすことができるかもしれない。村の人口が多くなればもともと住んでいた地域住民も村に戻りやすいであろう。までい工法に対して、理論的には安全なことが明らかなのにも関わらず理解が得づらかったことなどを考えると、もともと村にいた高齢の農家の方などは放射線に対する負のイメージが強く、安全なことが科学的に証明されても自分たちから村に帰るとは考え難い。そのため、村にもともと住んでいなかった私たちの世代のような若者が実際飯館村に移住したり、飯館村でフィールド研究を行ったりして最先端の農業を積極的に推進する必要がある。
      次に、最先端の農業をどのようにしたら推進できるかを考える。ICTを活用した農業には、ロボットや、ビッグデータ、人工知能、IoTを用いるものがある。ロボットを用いれば農作業の手間が省け、農場を拡大することもできる。また、ドローンなどの機械は特に他の技術と組み合わせやすい。例えば、ドローンとAIを組み合わせることによって作物の状態を分析し、自動的に農薬を散布できるドローンを作り出すといった応用も可能である。ビッグデータもAIとの組み合わせで気象の分析などに有効になる。IoTを用いた場合には市場の動向やニーズを把握してそれに合わせた農業を展開できる。こういった農業を推進するには、農学に関する知識のみならずAIや機械に関する工学的な専門的知識などが必要である。それのみならず、初期投資に非常に大きなお金も必要である。大学や企業などから資金を提供してもらえるほど魅力的にこの取り組みをアピールする能力も身につけなければいけない。そういったことを考えると、私たち農学部の学生はやはり農学を実験室や教室で学ぶのみならず、実際に現地に赴いて実践してみたり他の分野の知識も吸収したりすることが重要であると考える。
     

  9.  福島の農業再生について、自分自身が出来ることは非常に限られているように思われる。というのも、政府のように巨額の資金を出せる訳でも政策を施行出来る訳でも無いからである。そこで、個人の出来ることの内で、最も大きな影響を与えうることを考えてみると、他者に影響を与えることである。特に、昨今は SNS を通して多く人と情報をシェアすることが出来るので、SNS を有効活用することで、大きな効果を生み出せるのではないかと考えられる。まず、福島の農業再生における問題点として、風評被害と若者の農業離れが有る。各々の問題について、個人レベルで出来る解決策を以下に考察していく。最初は風評被害についてだが、現在ではそこまで風評被害が残っている印象はない。しかし、風評被害が無いとはいえ、福島の農産物が大量に消費されているというイメージは無い。これでは福島の農家にお金が回らず、福島の農業は伸びない、ないし廃れていってしまう。故に、これに対して個人で出来ることと言えば、極力福島の野菜や米を買ってみるという、アクティブな購買の他、利益率の高い酒などの嗜好品を買う際に、授業で挙げられたような福島の酒を買っていくことで、農家を経済的に支援することが考えられる。また、SNS などを使って良いレビューを残しておけば、新規カスタマーの獲得にも繋がる。農業によって経済的に安定するようになれば、規模を拡大することでより収益を増やしつつ、復興及び発展をすることが出来るのではないだろうか。
      以上が農産物を買う側から出来る支援であるが、いつまでも他者に引っ張られたままでは真に復興したとは言い難い。ここで着目したいのは、みぞらぼの Topics の記事にあったように、避難指示解除後に村に戻ってきたのは、一部の高齢者だけであった。どんな産業でもそうだが、後継者がいなければ廃れてしまう。特に今回の場合、避難して都会に来た結果、都会で職を得ているので、わざわざ村に戻ってまで農業を行う理由が無いのであろう。又、農業は多額の初期投資及び栽培に対する知識が必要であるので、それも人々が農業に帰って来ない理由となるのだと思われる。それに対する最も手っ取り早い解決方法は、人々の農業に対するハードルを下げることである。例えば、東京から日帰りの農業体験ツアーなどによって、田舎の風景や自然を体験してもらい、それによって栽培した作物は、後日ツアー参加者に送られることで、農業に関心を持ってもらうというプランを考えてみる。普段都会に住んでいる人間としては、田舎の風景は心休まるものがある上、自身が植えた作物がちゃんと成長し、収穫できたことを知ることで、多少は農業に対するモチベーションも湧くのではないかと思われる。そして、現地に比較的安い値段で土地や機材を貸し、そこで自由に作物を作って良いとすることで、都会から人を呼び込むこともできるし、定年退職後にそこに移り住んで農業を営むかもしれない。
      これはあくまで想定の話であるが、いささか現実的ではない話ではない。特に今日は ICTが発達しているため、上記のようなプランが有れば、リアルタイムで作物を都会からモニタリングすることが出来るだろう。そうすれば農作物に対する愛着も湧くのではないかと思われる。実際そのようなプランは無く、現状コロナで人々の移動も自粛するよう呼びかけられている。しかし、再び人々が自由に移動できるようになった時、農家の手伝いにいくことで、日本の田舎の風景や人々の温かさをネットを通じて多くの人々に知ってもらうだけでも、少しは福島のみならず、日本全体の農業の復興に繋がるのではないだろうか。
     

  10. 特別知識を持ち合わせているわけではない自分にできる被災地の農業再生活動は限られている。知識がないので技術的な支援はできず、個人なので大規模な活動もできない。この記事では、東京大学のサークル「東大むら塾」が農業を通じて村おこしに取り組むプロジェクトが紹介されている。
     直接的に復興作業や農業に関わることが、被災地の農業再生に最も貢献できる方法ではないかと思う。まずは農地の除染が求められるが、放射性セシウムはほとんど土壌表層に吸着しているため、表土剥ぎ取りや反転耕といった対策が有効である。除染には労働力が必要なので除染ボランティアがあり、こうした活動に参加することが一つの方法である。
     農地の除染が終わっても、人手が戻ってこないという問題がある。ただ帰村を呼びかけるだけでは戻ろうと思う人は少ないかもしれない。しかし、復興活動に参加する人数が増えれば被災地に活力が戻り、帰村を考える人が増えるのではないかと思う。
     被災地に関心を持ってもらうために、活動をアピールすることも重要である。情報発信はボランティア活動の参加者を増やすために必要不可欠である。また、前向きな姿勢を見せることで現地の人々に元気を与えられるかもしれない。
     最終的に農業を支えるのは現地の人たちなので、最も重要なのは農家の方たちの活力であり、ボランティア活動はそれを促進する役割があるのではないかと思う。
     実際に現地で活動していると、復興を行う上での課題が見えてくることもある。知識はなくても問題点を発見することはできるので、気づいた問題点をまとめて知識を持った研究者などに報告すれば、何かに役立つことがあるかもしれない。
     帰村者を増やすためには農村の活性化が必要である。農村そのものを活発にするひとつの方法として「農泊」がある。農泊を実現するためには都市との交流が必要であり、県外からのボランティアは都市と農村を橋渡しする役割を担うことができる。こうした活動はある程度長い時間をかけて行う必要がある。ボランティア活動は地域に寄り添って行われるべきものであり、現地の人々と良好な関係を築きつつ協力して行わなければならない。個人で取り組むにはハードルが高いので、記事で紹介されているようにサークル活動としてある程度大人数で行うのが良いと思う。
     直接的な支援は労力的、時間的に大変であるが、間接的に農業を支援する方法もある。復興した農地で生産された農産物を購入することは、その地の農業を活性化することにつながる。特産物を使った料理を紹介するなど、世間の関心を集めそうな方法で情報発信を行えば、農産物の需要が増加する可能性がある。
     SNSでの活動は個人でも大きな影響を与えられる可能性があり、被災地の情報発信などにも役立つ。プラスの情報を発信するだけでなく、マイナスな情報を訂正する必要もある。原発事故は非常にショッキングな出来事だったので、当時被災地や被災者に対する偏見が多く生まれた。事故からもうすぐ10年になるが、偏見が完全になくなったとは言えず、いまだに被災地の農産物に対する抵抗感を持っている人が一定数存在する。正しい情報を積極的に発信することで偏見をなくすことも復興の促進につながる。
     個人にできることは小さいが、特に間接的な支援は簡単に行えるものが多いので、日本全体でこれらを実行すればかなりの効果が得られるのではないかと思う。
     

  11. 私は「飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生」を読んだ。溝口先生は土壌物理学者でありながら、その土壌で稲を育てたり、お酒までつくったりと様々な分野に関して、地域の人に寄り添って研究活動を行っておられ、それが長い年月、地域の人々に信頼され活動を続けられている由縁であると感じた。理論だけを語るのではなく、実際に現場に足繁く通い、実演し地域の方々を救うその姿こそが研究者であるのかと、考えを改めさせられた。
     この記事での研究者が住民の信頼を得られていないことや、政府の除染政策では現地の人々は納得しなかったことを考えると。溝口先生の「現場主義」が大切であるということがわかった。
     私は、農業経済学専修内定者だが、農経の生徒として行動するとするならば、現地の人の声を聴く機会を設けさせていただき、現地の人が何を求めているかに即して、農業再生行動を始めることが大切だと思った。また、一消費者としては、ありきたりなことになってはしまうが、福島産の農作物を買うということが、その被災地の農家の方々の農作物をつくる意欲の向上につながるのではないかと思う。
     溝口先生の講義を受けて、今後の人生「わくわく」を積み上げていけるよう、世界の様々な分野の問題に興味が持てるよう、いろいろな学問分野に触れていきたいと感じた。
     

  12. 飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生」やその他「若者の交流や挑戦 活発に」なども読んでみた。
      農業再生における課題には土地の汚染、帰村率の低さ、風評被害があると考え、授業及び記事では主に除染及び帰村率の低さを克服する新たな技術などが中心に説明されていたと思う。さらにこの問題は容易に解決できるものではなく、授業でも除染の取り組みによる農業復興や、その技術による安全性を伝える難しさや現場で実践する際の理論との相違などがあり、現在自分が農業復興に寄与するのにこの二つの除染、農業技術といった方法を用いるのは現実的ではないと考えた。ただし除染については凍土を剥がす作業に人手が必要で、学生の自分にも可能ならそれに参加するというのは一つの方法であると思う。主に考えるのは風評被害に対する対策である。風評被害の改善と福島県産農作物の需要の回復が農業を積極的に行う動機の一因になり、それによって復興に貢献することを期待している。前置きが長くなったがこれから「私自身ができそうな被災地の農業再生について」述べようと思う。その方法は簡単に言うと「被災地の農作物に関する正しい知識を広めると同時にその農作物が他の産地の同種のものより勝っている点を伝えていくというものである。」なぜこのような方法が良いと考えたかというと、まず現状、正しい知識が広まっているとは言い難いことが授業、記事を読んで感じたからである。政府が推奨している除染方法より効率の良い方法が見つかっているにもかかわらずそれが実践されていないところからもこれはうかがえる。安全について正しい知識がないと風評被害が起こるのは当然である。風評被害では誤った知識が広まっているということによって知識だけではなく悪いイメージが定着することが大きな問題であると考える。このような状況ではたとえ正しい情報を伝えても消費者からするとそれは他の産地の農作物の安全性に対する情報と同じ土俵に立ったにすぎず、なんとなく良くないイメージがある方をわざわざ買うかというとそうではないと考える。以前この放射線環境学において農作物の需要についての講義の際、シェアが一度他の産地のものに取られたものについてはその回復が難しいというお話を聞いたがこれもこのような消費者の感情が一因ではないかと考える。そこで被災地のものを積極的に買う理由を消費者に伝えることが必要である。具体的な方法としてはSNSやウェブサイト、ブログなどによってそれらの情報、魅力を伝えていくことが挙げられると思う。この方法には拡散のされ方によっては非常に多くの人に向けて情報発信ができるという利点がある。ただしこの場合、情報発信者が一学生であるという点や、本当に農学を学んでいる大学生かが相手に伝わらないといったことにより十分な説得力を得られないというデメリットがあるといえる。より効果的に伝えるには対面による紹介が必要になると思う。そこで例えば五月祭などの大学の催しの場を利用して企画としてその農作物の情報を伝えたり、可能なら農作物を使用した飲食を提供したりするといったことを通して知識とイメージの改善を図るといった試みが学生でもできる中で有効な手段であると考える。
     

  13.  現場に長い時間をかけておもむき、実際に作業を行う人からの声も聞いてそれに対して解決策をその場で一緒に考える。この姿勢が被災地の共同体それぞれのやり方での復興を真に後押しする唯一の方法であり、これに異を唱える研究者や国の役人は少ないのではないか。しかし、この方法がすべての共同体で実践されているとはいえない状況である。地方に骨をうずめて頑張りたいとは思っているが、周りの意見などからなかなか一歩を踏み出せない研究者を全国区でつないで組織化し、土着研究者としての活動を後押しして全国展開し、その活動を推進し、農学が地域に根ざす重要性を、実績をもって伝えることができたらいいな、とお話を聞いていて思った。
      本筋に話を戻すが、私自身ができそうな被災地の農業再生は、酪農の再生である。放射線の被害を受けた牧草地の除染を、水田と同じ表土と中層の土壌を入れ替えるやり方で行い、再び餌場として使える牧草地をつくる。母牛については、牛乳のセシウム濃度が上がらぬよう、また次世代の仔牛の健康に影響が出ないよう、当面は餌の牧草を別の場所から持ってくる。牛舎も高圧洗浄によって除染するが、どの部分に放射性物質が溜まりやすいのか、洗浄している間に牛はどうするのか、といった課題を酪農家と対話しながら解決策を探っていく。また、牛の健康状態や放射線量を24時間体制で監視するためのICT化を推進する。このように科学的に効果のある放射線対策を行った後、マーケティングを行う。復興庁によると、放射線の被害を被った農家に待っている困難は、風評被害の他に、顧客に他の産地の産品に差し替えられたことによる販売ネットワークの損失があるという[復興庁、2019]。これを取り戻すには、単に消費者の風評被害をなくすだけでなく、中間小売業者の風評被害を受けたくないという思いを解消することが重要である。震災前まで顧客としていた取引先に出向き、科学的に完全に安全であることをアピールした上で品質を改めてチェックしてもらい、再び取引先に選んでもらえるよう交渉する。そこで使ってもらえるようになったら、その小売業者を使う消費者に対しても、福島の農業再生によって生産が回復した牛乳であることを伝え、福島の牛乳が安全であることを知ってもらうのと同時に、福島の他の農産品にも興味を持ってもらえるようなラベリングをする。震災から10年が経った今、放射性セシウムにまつわる問題は放射線の減衰に伴って大きく変わってきたにもかかわらず、福島農産品に対する理解や偏見は報道の量が減ってきているために事故当時のまま固定されている人も少なくないと思う。この状況を現地の人に寄り添って考え、解決策を考えるのもまた、農業再生に一役買うと考える。
     
     <参考文献>
     ・コロンブス、2019
     飯館村に通いつづけて約8年?土壌物理学者による地域復興と農業再生.http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/edrp/fukushima/fsoil/columbus1905.pdf. 2020.1.7.
     ・復興庁、2019
     東日本大震災からの復興の状況に関する報告. https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/20191122_kokkaihoukoku.pdf. 2020.1.7.
     

  14. ブレイクアウトルームの時に読んだ資料や講義内容で仰っていた、被災地の農業再生のための活動は非常に有意義であると自分は思う。僕個人ができることは非常に小さく、また、まだまだ土壌物理について理解が出来ていないことも今日の授業でよくわかりました。その中で今回僕が注目したのは、先生のホームページのTopicsより、私の土壌物理履歴書(土壌物理学会誌)の一番最後の項目である、今後の土壌物理学の展望 ? 土壌教育についてです。
     この項目で、先生は土で作ったゲームについて仰られています。実は少し前に、Nintendo Switchで『天穂のサクラヒメ』というゲームが発売され、このゲームが、自分自身で害虫避けや水の世話などをして、より良いお米を作ろうというものだそうです(他にもアクションゲームとしての要素もあるそうです)。僕自身はプレイしていないのですが、お米の育て方について調べるための参考や攻略法として農林水産省のホームページを見るというのが挙げられているらしく、これが非常に参考になるそうです。このゲームはYoutubeで実況者によって配信、動画化などもよくされており、その影響で今まで稲作に興味がなかったが、面白そうだからやってみようという人も現れていると思います。このようなゲームで、農業再生についての項目などを加えて見ても面白いと僕は考えます。直接的ではないかもしれませんが、農業系のゲームの開発によって、自分たちよりもっと若い世代の人にゲームをプレイしてもらって知識を蓄えてもらい、現実世界でその知識を活かして農業再生に携わることも可能だと思います。
     補足:『天穂のサクラヒメ』のホームページのURLを貼っておきますのでよければご参照ください。
     https://www.marv.jp/special/game/sakuna/
     

  15. 飯舘村のセシウム汚染された農地の除染をテーマにした講義で、初めて聞くような除染方法ばかり聞くことができて非常に勉強になった。
     被災地の農地再生の方法として凍土のはぎとりという手段がかなり効果的だと思った。セシウムは実際に土壌の深くまでは到達せずに表土付近に多く留まるという性質と、東北の気温が低くて寒いという気候を活かした方法であり、安価で人の手によって行うことができる。
     他の方法で田車による除染が挙げられていたが、これも効果的だと思った。濾過の実験からわかるように、水を流しても土壌が地下に染み込むことはなく、さらにセシウムは土壌に固定されているため安全だということが保証されていて、住民たちにどうにか理解さえしてもらえれば実用的である。
     さらに、他に紹介された農地再生の方法で、埋設汚染土の上で農業を行うものがあった。これは、セシウムを含んだ汚染土壌を地面から50センチの深さに埋めて上に綺麗な土壌を被せれば、地表に到達する放射線量は100分の1?1000分の1まで抑えることができるというデータをもとに行われた。しかし、私がここで少し疑問に思ったのは、年月が経ち風などで地表がどんどん削られた際に、果たして今地表から何センチのところに汚染土壌の層があるのか分からなくなってしまうのではないか、ということである。もし長い年月が経って地表に実は汚染土壌がむき出しになってしまったら、かなり深刻な事態である。そのため、この方法では正確な記録を必要とし、常に管理する必要がありそうだ。
     
     以上のことから、私自身ができる被災地の農地再生を考えたときに、もちろん大きい機械を用意するような財力はないため、手作業でも行うことができる凍土のはぎとりが最も現実的だと思った。しかし、今のご時世現地に赴くということは批判を浴びるかもしれないため、まず第一に、現在行われている農地再生の手段において、セシウムが生活用水に支障はきたすことはないなどといった安全性に関する情報を発信することが重要だと考えられる。
     

  16. http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/edrp/fukushima/fsoil/191002shimotuke.jpg
     上記の溝口教授が大田原高科学部の生徒13人と福島県飯舘村を訪れたという内容の記事を読んだ。飯舘村では、汚染のひどい表層土壌(土壌の表層部分に放射性セシウムなどのような放射性物質のほとんどが溜まるという事実は過去の別の教授の授業においても何度も提示されてきた)を撤去、埋め立てする「までい工法」なるものを実践することによって農産物が放射性物質を吸収してしまうことなどのようなリスクを減らす活動が行われている、というのは記事でも講義でも学んだが、スマート農業も行っているというのは記事で知った。遠隔操作や農地モニタリングなどが行われているそうだが、実際に汚染されてしまった農地に近づかなくてもさまざまな作業ができるのはとても画期的なシステムだと思った。放射線に関して十分な知識が農家に行き渡っているとはいえない現在、無根拠な不安を抱いてしまっている農家も少なからずいると思う。農場に近づくことなくできる作業が増えたり、汚染が可視化されたりすることはそのような農家にとってかなりありがたいことなどではないかと思った。
     「あなた自身ができそうな被災地の農業再生」に関してだが、までい工法のようなシンプルな方法での放射線対策は実際に農場に行く機会があれば自分でも実行可能なのではないかと思った。被災地の農場へ出向く機会があったら、できる範囲で放射線対策に関する活動を行ってみたいと思った。また、無根拠な不安を抱くことがさまざまな放射線対策の実行を滞らせたり、風評被害を招くことにつながったりするので、まずは自分が正しい知識をつけることから始めて、それからその正しい知識を広めることなどにつなげていけたら、微力ながら自分でも被災地の農業再生に貢献できるのではないかと考えた。
     

  17. 放射性セシウムはほぼ水田土壌の表面にある。そのため被災地の農地の除染には表土削りとり、水による土壌攪拌・除去、反転耕がある。また冬に土が凍るという性質を生かして、凍った水田で氷土剥ぎ取りを行った。この汚染度は素掘りの穴に埋め、上に綺麗な土をかぶせることで処理できた。汚染土は50cmの深さに埋めることで放射線量を1/100~1/1000にできた。これに対し、下流の方にすむ人から水が汚染されるのではないかと心配する声が上がったが、泥水は砂の層を通ると透明になって出てきて、放射性セシウムのほとんどは粘土粒子に強く吸着されているのでセシウムだけが水中に溶け出ることはなく、実際の農地では下の土は厚く、砂よりも細かい粒子で構成されていることが多いので放射性セシウムを固定した粘土はそれらの粒子の間に次々に捕捉されるため、汚染土を埋めたことによって水が汚染される心配はない。またこのように地上から80cmと50cmの間に汚染度を埋めたところで土の放射線量を計測すると理論通りに自然減衰しており土壌中では4年間の間にほとんど移動していなかった。そのため飯館村で問題になっている大量の汚染土をこの方法で処理する計画が考えられている。
     またホームページの「飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生」の記事を読んだ。事故後から勉強会や研究会をおこない放射線や放射能のモニタリングや除去方法の開発に取り組んでいるNPO法人とともに活動をされていた。避難指示が解除された後でも飯館村の帰村率は低く既存車には高齢者が多い。ここで表土剥ぎ取りによって生まれた汚染土を先ほどの処理方法で処理した。またこれに加え除染後の農業復興のためにICT農業の導入に取り組み、リモートで水田の水門を動画で確認しながら操作できるようになった。またブランド牛である飯館牛の画像の1時間ごとの取得や相対体温のモニターも可能になった。データの通信環境が整っていないことを利用して通常とは異なる周波数を使用できるような電波特区の検討もされている。特産品開発にも取り組まれ、とれた米を使ってつかって純米酒が作られた。また小学生が実験を通じて土の性質を理解できる蝶なプログラムや科学館での出前授業も行われた。また飯館村は農業生産には向かない土地であり、活気が生まれるように訪欧の機会を設けたり、男性に育児休暇を与えたり、公用車を電気自動車にしたり、学校給食を地産地消にしたりと様々な取り組みが行われている。
     先生が方法を考えて指示を出すだけでなく、実際に飯館村に継続して行かれて、現地のNPO法人と協力して継続して活動をおこなわれたように、実際にその場所に行き現状を知ることはとても重要だと感じた。理論的にはうまくいきそうに見えたことでも現場にはそれぞれの事情があり必ずしもそのまま適応できるわけではないこともあった。また、復興のために特産品を作ったように、コロナの影響で今が難しいがその地域にいってその地域で作られたものを買い、その存在を人に広めることも重要だと思った。また震災や事故から10年近く経っており、意識が薄れがちだが、他人ごとにせずどのような状態で、そのようなことが行われているのか知ることで、どのようなことが今課題となっているのか知ることができると思う。またその地域で活動している団体が外に向けて行っている説明会などに参加することで現場にいる人の声が聞けると思う。
     

  18. 自分自身ができること、と考えると、「被災地の農業作物や放射線の仕組みなどについて正しい知識をもち、偏見を持たないようにする」ことが最も簡単な事だと思います。までい工法や反転耕などに、「地中に汚染土があるのは不安」「地下水に放射性物質が流出するのではないか」などの地元住民の不安が出たのも、震災後に福島県産の農作物の売り上げが減少したのも、やはり一人一人の知識が不足している事の影響は大きいように感じます。国の基準値などについて知識をもち、偏見を無くし、正しく恐れることが大事だと考えます。
     また、このご時世では少し厳しいかもしれませんが、実際の農家さんの話を聞くなど、現地での体験というものもしてみたい、と思いました。世の多くの人は、特に大きな発信力を持たない人たちです。遠く離れた被災地の声は、メディアで届かないものはなかなか知る機会がありません。これから社会に出る身として、現地の声を直接聞いて胸にとどめておくのは、自分自身のモチベーションにもなりますし、とても重要なことだと思います。
     

  19. 飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生」を読み、自分自身ができそうな被災地の農業再生について考えを述べることとする。
      まず、私がこの記事や講義を通じて感じたのは、「地元の方々は政府が進めた反転耕は嫌がったのに、までい工法は嫌がらなかったのか」ということである。前者は農地内に汚染土が残るのに対し、後者はひとまずは汚染土を農地から除去できるという違いはあるが、いずれにしろ農地やその付近に汚染土がとどまることには相違がない。汚染問題でよく聞かれる現地の方々の意見として汚染物質の除去といったものがあったように思うがこの工法はその意見に真っ向から反しているように感じる。ではなぜ飯館村でまでい工法は受け入れられたのだろうか。それは講義でもあったように自分の農地は自分達で管理したいという農民感情と長い年月をかけて気づいていった信頼関係にあると思う。よって、被災地の農業について何かしらの案を立てる場合には現地の方々に寄り添い、信頼関係を気づいた上で当事者目線のアイデアを出す必要があるようだ。従ってまずは農村に直接赴き、継続的に現地の方の意見を伺って得られた意見をもとに農業再生策を考えるべきである。
      とはいえすぐに農家さんの意見は伺えないのでひとまず自分のアイデアを上げると、クラウドファンディングを利用した農業再生が学生である自分としても行いやすく、かつ有効な案であるように考える。内容としては今回の講義であったようなまでい工法の作業過程やその結果報告等を行うことでその趣旨に賛同する方々から寄付を募るといったものでも良いし、地域ごとに名産品や工芸品があるのだったらそういったものを返礼品とするのも良いかもしれない。その辺りは各地域に赴いて現地の状況と農家さんの生の意見によって実現可能なものを選択することにする。クラウドファンディングの良いところは様々な手法を取れることである。つまりは地域に応じた対策が取れるのだ。例えば、いまだに農地の汚染除去が完了していない地域ならば上記のようにその除去の過程を報告することでその活動費を寄付金で賄うことができるし、除染は完了しているものの風評被害から作物が売れないといった地域ならば現状を伝えつつ返礼品として作物を設定すれば寄付といった形で作物を販売できるだろう。このように各地域の現状に合わせて柔軟に内容を設定することができる点で、被災地の農業再生案としてクラウドファンディングを挙げるのである。
      実際に行われているクラウドファンディングを調べてみると学生が主体となっているものも多く存在し、中には地方の市町村と連携して町おこしを行なっているものや被災地を訪問し防災啓発活動を行なっているようなものもあった。こうした例からもクラウドファンディングによる被災地の農業再生案は現実的なものだと考える。参考資料に中山間地では高速通信インフラが整備されておらずデータの通信環境が問題となっているとあったが、そこは自分たちが現地を訪れた際にまとめた内容をこちらに戻ってきてから発表するなどすれば活動の規模からも対処できる程度の問題であると予想する。従って現地の方々と信頼関係を気づいた上で、生の意見を十分に織り込みつつこうしたクラウドファンディングを行えば、被災地の農業再生の一端を担うことができるのではないだろうか。
     

  20.  私が考える被災地の農業再生とは、震災前と変わらない農作物の流通が可能になり、衰退しつつある農業に若者が興味をもって参加し、被災地が活気を取り戻すことであると思う。そのために私ができることとは、被災地の農産物の安全性や被災地での放射線対策を広めることによって、風評被害を減らすことに協力することであると思う。
      風評被害は世間に正しい知識が欠けている状態で、正しくない世論が広まってしまうことが原因であると私は思っているので、風評被害を減らすためには、常に正しい情報を、誰にでも分かるように発信し続けることが重要である。では、その正しい情報を常に受け取るにはどうしたらよいか。放射線環境学の講義を通して、原発事故後に被災地で様々な放射線対策が行われてきたことを学んだが、この知識はこの講義を取っていなかったら、自分で調べるなどの行動をとらない限り、そうそう得られるものではないと毎回感じている。今回の講義では、土壌が放射性セシウムを取り込む原理や、実際の土壌での除染状況を学ぶことが出来て、非常に興味深かった。このことを考えると、世間に被災地の農産物の現状はあまり伝わっていないのではないかと私は思った。また、テレビやメディアによって原発事故後の現状が報道されてはいたが、放射性物質の調査結果報告等が多く、放射性物質の特長や取り込みの原理等は少なかったことを考えると、先生がおっしゃっていたように、詳しい説明をしても専門家の説明は難しいからと軽視されてきてしまったことを感じた。
      そこで私は、正しい情報を誤解や偏見なく世間に受け取ってもらうには若者の発信力が有効であるのではないかと考えた。知識や情報は専門家とは比べ物にならないが、情報発信という点では世間に取ってはより身近であるのではないか。例えば、本来ならスライド何枚も必要になる情報から大学生ぐらいの年齢で理解できるレベルを抜粋して、SNSやYoutubeで発信することである。画像編集や動画編集が簡単にできるようになり、instagramなどで目を引きやすい色使いや言葉なども普及している現代ならではの発信方法であると私は思う。また、コロナでネット上でのやり取りが増えたことを考えると、被災地の方々との交流もしやすくなり、より確かな現場の現状を知ることが出来るため、以前よりも被災地に即した発信が可能になるのではないかと思った。
      さらに、発信する情報の種類にも考慮したいと思った。具体的には、まず放射性物質の測定結果を示すことによって安全性を発信したうえで、それの根拠や、その測定値に至ったまでの過程の発信を行うということである。特に重視したいのは後者の方である。私は高校生の時に、福島県の農産物を応援するという目的で、放射性物質の調査結果や、農産物を使った料理などについて学習を行い、発信したことがあったが、この講義を通して其れだけでは足りないと感じたからだ。高校生の時と比べて知識が増え、また後者は調査結果に比べて情報が手に入りにくいことを考えると、講義で学んだことをもとに分かりやすく発信していくことが求められるのではないかと思った。
     

  21. 飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生という記事を参照にして、自分と震災の復興について考えてみる。前提として、飯館村は風向きの影響もあり、森林や田畑が放射性セシウム汚染を受け、全村避難となった。記事では、表層土削り取りまでの過程がサクッと書かれているが、講義を聞いて、土壌中で放射性Csはほとんど移動しないため、汚染度が小さい地域では三慈雨による土壌撹拌・除去、土壌の上下をひっくり返す反転耕でも汚染をほとんど取り除くことができたにもかかわらず、農村地域の人々の反対からそれができずすべて表層土削り取りを行ったことを考えてみると、ひとつ重要な点はやはり知識、情報の正しい理解であると感じた。一般市民からすると、そもそも何がどういうふうに危険なのかもわかっていのにもかかわらず、ただ恐れコスト費用を考えず不必要なレベルまでの除去を求めると、結果として放射性廃棄物が過剰にたまり、中間貯蔵施設に移動する前の仮置き場にたまり続けるという事態が起きてしまった。情報を正しく理解し、正しい程度で恐れることで一定地域の過剰の対策でほかの部分が行き詰ってしまうという事態が避けられるということを考えると、自分にできることの一つはこの正しい理解を周りの人間からさせていくことの手伝うということである。自分がこれから携わる分野でも正しい理解をした人を少しずつ増やしていくことが復興の実現へつながると考える。農業の再生は被災地の復興が欠かせないので重要である。
     ICT農業は新たな視点で農業再生に大きな役割を持つと考える。帰村を望む人は少なく、廃棄物のほかに農業人口という観点からも農業の再生が行き詰っているように見える。そこで記事や講義で学んだICT営農管理では農地で働くデバイスと必要なシステムが安く提供される。水門を設置し、それをWi-Fiカメラで確認し、遠隔で操作するというのはいい具体例である。農業再生には、このような技術を入れることが必要である。労働が簡単になると、高齢者が楽になるだけでなく、農業そもそものイメージが土まみれで田舎のものといった古いイメージを払しょくすることにつながり、若者の農業人口の回復につながる。農業再生について考えるとき、自分の将来として自身が農業に携わるということが考えられる。このような最先端の技術を取り入れて新たな農業の常識を浸透させていくということが農業の再生につながると考える。
     

  22. 私自身ができそうな農業再生としては、意識改革が挙げられると思います。これは被災地の農場に対する自分自身の意識の改革がもっとも重要であると考えたからです。被災地に対して正しい情報を得て、正しい見方をすることから農業再生は発展していくのではないかと考えます。
     

  23. 溝口教授が講義でもおっしゃっていたように、東京にいて研究したり、指示を出したりするだけではなく、現地に足を運び、実際に目で見て肌で感じ、現地の方と直接話すことが必要だと感じました。今は新型コロナウイルスの影響で現地に行くことがそう簡単にできるわけではありません。確かに、その代わり、リモートの技術が発達・浸透しましたが、直接行って肌で感じるということができないという点でやはり感じられることが違うと思います。早くおさまるといいです。溝口研究室のホームページのTopicsにあった記事の一つに、「若い学生が村の中を歩き回れば復興にプラスになる。美しい村にしていくサポートをしてほしい」(『飯舘村が東大と連携協定 福島、農畜産業復興狙い』,産経新聞, 3.5.2018)とあったのを読み、被災地の農業再生というと、現地に行って何か具体的なことをしないといけない、そのためには何が起こっているのかを知って、何ができるのかを考えて、現地の人と交渉して…、と現地に行きたいのだけれど、そのためにしなければならないことを考えるとなかなか体が動かないということになり、被災地の農業再生を諦めてしまう、誰か別の人がやってくれているからいいだろう、テレビなどで活動的にやっている人はすごいな、と、結局やらずじまいになってしまっていました。しかし、この一言を読んで、とりあえず現地に行けばいいんだ、歩くだけで復興にプラスになるんだ、とすごく感動し、さらに、農業再生についてより身近に感じることができました。長々と書いてしまいましたが、私自身ができそうな被災地の農業再生は、まず、現地に足を運ぶことです。足を運び、現状を見ることで、何をしたらいいのか、何ができるのかが自然と見つかると思います。行けば、現地の方と話すこと機会も自然と訪れるでしょうから、私のような、話しかけられたり、提案されたりしたことに対して乗っかるのはできるけれど、自分から話しかけたり、交渉したりするのが苦手な人にもぴったりだと思います。そんな私ですが、できたらいいなと思っているのが、農家さんの家に泊まり込みで2週間くらい農業を手伝わせてもらうことです。農業を一度でも経験すれば、どうやって農作物が作られているのか、具体的には、どんな手入れをして、どんな環境で育てられているのかがしっかりと身につくと思います。それを踏まえることで、より、被災地の農業再生をする際に、何をしたらいいのか、どんなことに不便を感じているのかが見つけやすくなるのではないかと考えるからです。そういうプログラムの募集が学内であるといいなと思います。
     

  24.  2020年2月16日の下野新聞の日曜論壇、「真の復興、飯館村民に学ぶ」を読んだ上で、自分自身ができそうな被災地の農業再生について考えようと思う。記事によると、農地の除染作業が難しく、復興はまだまだ進んでいない。また避難指示解除後に村に戻った村民の多くが高齢者であって、若者がいまだ戻ってこないことも問題の一つである。溝口教授は、飯館村に住む祖父母を手伝いにやってきた高校生の孫の姿に活路を見出している。確かに中山間地域を始めとした農村では少子化・高齢化が進み過疎化が問題に取り立たされており、孫世代が農業に興味を持つことは農業再生の大きな一歩である。しかし私自身昨年東京大学に入学し農学部に内定しているが、元々農業に興味があったわけではないし進振り先を考える際に農学部に進学する積極的な理由があったわけではない。後期の授業を受講した今は農村復興に興味を持っているが、農業や日本の農村の現状を知る機会がなければ若者が農業や農村に興味を持つことはほとんどないと言って過言ではない。その上、私のように農業に興味のある東京大学の学生でも、省庁で政策を考えたり給料のいい一般企業に就職したりすることを希望する学生が多く、農村に出向いて復興を手伝うという仕事をしたい人は多くないだろう。そのためまずは農業再生について若者に興味を持ってもらうことが大切だと考える。記事に出てきた高校生は祖父母が飯館村に住んでいるという、農村を身近に感じる環境にいることが大きいだろう。そう言った環境にいない若者(主に義務教育課程にいる学生)に農村に興味を持ってもらう最も簡単な方法は、農村を実際に訪問して農業を経験することであろう。自発的に農村を訪問することはハードルが高いので、農業に興味のある私たち大学生が企画をできればいいのではと思う。また、むら塾などの既存の団体に参加をすることが個人で農業再生に参加できる方法だと思う。
     

  25. 講義や資料を読んで,様々な誤解や認識の違いが大きな足かせになっていることがわかった。この部分を解消できれば,様々なことが効率的に進められ,改善することの難易度が下がるのではないかと思っているのは事実だが,正直実現するのはかなり困難であると思ってしまう。
     個人的な見解では知識と感情は別物であり,いくら知識で理解していても感情的な部分を無視するのは難しいものだと思っている。たとえ様々な実験で立証されており,安全が保障されているとしても,嫌だと感じてしまうその気持ちはどうしても残ってしまう。
     例えば,セシウムを含んだ水を排水路から流す,という話も,たとえ実験で土壌に残ることは間違い無く,地下水に危険が及ぶことはないということが示されたとしても,下流にいる人間は気分が良いとは思えないと思う。それが科学の知識もない一般市民であればなおさら理解が難しく,納得しろと言われても簡単ではないと思う。反転耕に関しても同様で,簡単には納得できないと思う。
     おそらくこの感情のレベルは人それぞれで,知識云々の前に性格などの個人的なものが大きく,講演会などで納得できない人はどう説得しても反発を回避するのは困難と思える。
     しかし,このよう恐怖を助長しているのがマスコミである,という観点は対策できるのではないかと思う。矛盾しているようだが,感情的な部分も日々触れている話をもとに感性が変わっており,科学的な原理を一切理解せずに何と無く危険な気がする,という考えを持っている人もいるのではないかと思う。結局,科学的な説明よりもイメージの植え付けが最も可能性があるのではないかと思ってしまう。
     倫理的な観点を一旦おいておき,マスコミを完全に統制することができれば,誤った危機感だけは少なくできるのではないかと思う。とりあえず放射性物質は危険,というイメージだけを持っていると,いつまでも科学的な説得では納得できない人が残ると思う。
     自分も放射性物質に対しては強烈な危機感を植え付けられた人間で,10年経ち,検査の数値も問題ないと言われても,福島産のものと他地域のものがあれば,それがどんなものでも福島産を選ぼうとは思えない。これまで大学で放射線について様々な知識を学んできたものの,それでも,福島から離れた農作物の方が良いではないか,という感情が消えないことが自覚できるだけに,刻み込まれたイメージの払拭がいかに難しいかを実感している。当然人それぞれだと思うが,自分が被災地の農家側であったとしたら,手間がかかろうとも最大限の対応を望むのだろうと思っている。
     授業の観点とは少々異なってしまうが,被災地の農作物を売り出す方法としては付加価値などの,悪いイメージを上回る別の方向性で進める必要があると思う。というのも,汚染等の負の側面のイメージはこれ以上対策しても絶対に0にはならないと感じており,その部分を残してでも,それを上回る良い点が必要になるのではないかと思うからである。詳しくはわからないため,勝手なイメージだが,ブランドなどのその地域特有のもので勝負する方向を変更していけば,売上げも以前のレベルにまで近づいていくのではないかと思っている。
     

  26.  私自身ができそうな被災地の農業再生について、現状私は農業方面に対して力もないし充分な知識もない。しかし、私は設備工事の会社を経営しており周りより幾分かお金がある。そのため私ができる精一杯のことは東大の農学部の方にお金を出し依頼をして、被災地における農業再生を指南してもらうことである。またその際に、汚染した泥を除去するための労働力を自社から提供して共に活動していくことだと思う。
     

  27. 飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生という記事を読んで放射性セシウムに対する除染に関して様々な取り組みがされているものの未だにそれぞれに対して問題が存在しており、革新的な除染方法が確立されていないということである。授業内においても扱った「聞いてみよう!あなたの知らない“土の世界”-放射性セシウムとの関係-」でも田車を用いて水田の土を混ぜて泥水にして流すという田車代かき出し法や汚染土の埋設、反転させる方法などが紹介されていた。しかし、それらは費用の面や農家などの人々の反対や批判、効率性の面などから進行が思うように進まなかった。これらは実験や研究によって一定の成果と安全性が示されたにもかかわらず反対が出たということに驚いた。放射性物質であるセシウムの特徴としては粘土鉱物同士をくっつけているカリウムの代わりに粘土の中に固定されることで蓄積し、なかなかなくならないというものがある。さらに、セシウムは土壌の表面のみに存在しており、深いところには存在してないことが明らかになっている。このようなセシウムの特徴を考えるとやはり土をかぶせるような方法や土の上下を入れ替える反転耕が最も良いように感じる。しかしながら、重要であるのは除染が終わったとしてももう一度その場所に帰ってきてもう一度農業をしようという人々がいるのかということだと考える。その土地の土壌としては以前と変わらないように農業を営むことができるが、一度汚染したことへのマイナスなイメージや避難先からわざわざ帰る必要があるのかという問題が生じると考えられる。このような問題に対して自分は、戻って農業に従事したい人に対して国もしくは自治体が支援をする、何か優先的に食品加工などに用いるまたは企業との連携により新たな商品を作り出す、他とは違うブランドとして作る、大学の研究対象農地として様々な研究に用いるなどといったことを考えた。その場所で取れた作物を用いた商品の開発は純米酒「不死鳥の如く」に代表されるように行われている。また、ブランドとしても飯館牛のようにブランド牛が飼育され、売り出されている。しかし、残りの2つのことは行われていないように感じる。安全性を示した上で支援することによって戻る人も出てくるのではないかと思う。また自治体などが研究による安全性をしっかりと世間に対して示すようなことも重要であると感じる。もう一つは大学の研究農地のように様々な研究や実験を行う土地にしてしまうことを考えたが、これはそこで大学や研究機関も加わって被災地での農業の可能性を探り、より詳細なデータや結果を示すことによって新たな形の農業や対策などを模索することができ、農業再生につながるのではないかと思う。被災地では何事も復興は難しいものではあるが、当事者だけではなく、周囲の人間も協力することが大切だと思った。
     

  28. 個人的には、学問上は天地返しで放射性セシウムの影響は十分防げるが被災地の現場の人々の意見や感情も汲み取った政策が重要だなと感じました。それを踏まえ、僕はできる限り表土の削り取りを行いカリウムを施肥するのが重要だと感じた。土地そのものに加えて住民が納得できるような政策が重要であると感じた。
     

  29. 学問は出会いと現場から」という記事を読んで私はとても納得させられた。いくら研究室での研究により素晴らしい発見をしたとしても現場で生かされなければ意味がない。そのことを踏まえると農学部に所属する私にできることは、現場の声を聴きながら研究に励むことだと思う。私にできることはとても少ないとは思うが、私の研究により農業に興味を持った人が現れたりすることにより、波及効果が見られたりしても研究の甲斐があると思う。この記事にも書いてあるが、「今の農学は専門分野が細分化され過ぎて、隣の研究室の内容ですら分からなくなってしまった」そうである。本来の目的を失っては自己満足の研究になってしまう。しっかりと、農業に生かせる研究をしていかなければならない。実際に現場を訪問して、自分自身が体験したり、現場の声を聞くことでしか得られない情報や知識も多くあるに違いない。そして、この記事の題にもあるように「出会い」というものは我々に多くの効果をもたらすだろう。多くの出会いを経験することで、いろいろな意見に触れる他、新たな興味を見つけることができると思う。ただ、東京の研究室にこもり閉ざされた人間関係の中で完結するのではなく、研究室を飛び出し、多くの人の話を聞く機会が必要である。そして、そこで復興事業に出会えたのであれば、そのことを多くの人に伝えていかなければならない。復興事業と言うものは我々現代世代にとどまらず、将来世代にまでも問題となる事柄である。東日本大震災から時が経てば経つほど、事故の悲惨さは忘れられ、復興に目を向ける人の数は少なくなっていくだろう。そのようなことを防ぐためにも、多くの人に知らせる必要が出てくる。
     また、今現在においても風評被害は続いている。復興のためにも福島などの被災地で作られた作物がもっとたくさんの人の手に届いて欲しい。国民が福島産などの作物を避けるのは放射性物質の正しい知識がないことも一因だと思う。だから、正しい知識を多くの人に伝え、理解してもらい、作物の安全性を多くの人に認めてもらう努力にも私は関われると思う。
     

  30. 私は2019年11月8日に全国農業新聞に掲載された記事、「帰村率2割の村を復興へ 農委会と東大のサークルが連携 福島・飯舘村農業委員会」と、また、講義中にも触れられていた、2018年5月1日の記事、「純米酒「不死鳥の如く」が誕生!」にとても興味を抱いた。というのも、私の兄がむら塾に所属していたため、むら塾という名前を既に知っていたこと、そして私が東京大学運動会応援部に所属しているため、不死鳥の如くという単語に反応してしまったからである。しかし、どちらについても記事に書いてあった内容、むら塾の所属者が飯舘村に赴いてソバを育て復興に協力していることも、不死鳥の如くという名のお酒が存在していて尚且つ応援部の許可の下だということも知らなかった。ところで、東日本大震災が起きた2011年の間は、原発事故や風潮被害、セシウム問題、復興などがテレビでひっきりなしに報道されていた一方で、近年では3月11日近辺でしかそのような問題に触れられることはない。事実10年近くもの時が経っており、人々の興味も新型コロナウイルスに移り変わっている。私も例に漏れず、普段過ごしていて放射線問題や福島、復興のことを考えることはなかった。また、この講義を聞かなければそれらのことはすっかり忘れて復興は済んでいると思い込んでいたと思う。しかし、今回の講義にもあったように、放射線セシウムは粘土に付着するとなかなか流出しにくく、未だ汚染土壌の取り扱いに確かな方法は決まっておらず、除染方法についても最適なものを模索している状態である。まずはその事実をしっかりと理解しておくことが重要であると考える。また、むら塾の記事を読み、私にもできそうだと考えたことは、抽象的であるが村の活性化である。ソバの育成、純米酒「不死鳥の如く」のどちらにも共通することであるが、活性化のためには特産品を作ることがあげられると思う。農業について、知識はあるものの実際に身体的に携わったことはなく、特産品を作るための努力は想像もつかないが、特産品を作ることは地域の住民が一体となり活力が生まれるだけでなく、その地域を代表するものができることで、実際に被災地に赴きボランティアをすることができない人々でも、その特産品を購入することで簡単に復興の支援を行うことができると考える。私もボランティアに興味はあるものの、時間と物理的な問題で直接的な農業再生への力助けはできないと考える。しかし、それらの特産品を購入する、SNSで拡散する、クラウドファンディングなどで資金集めに協力するなどの間接的な支援はできる。例えば、飯舘村への支援であれば、「不死鳥の如く」を購入するほか、ふるさと納税を活用することが挙げられる。飯舘村のホームページによると、納税されたものは新品種も含めた飯舘村の花づくりを復活させることなどに使われるようである。
     

  31. 選択した記事 他分野の知の結集を復興農学会
     本記事は震災と原発事故で大きな被害があった福島県の農業復興を目指す研究者らの組織「復興農学会」について説明された記事である。原子力災害という特殊要因での被害のため、復興農学会では様々な分野の研究者が再生のための知見を出し合っている。福島県の対策を考えることは、全国にある災害や過疎などに伴う現代農業の課題と向き合うことにもなり、日本の農業を担う普遍的な価値になりうる。復興農学会は6つの大学から構成されるが、福島に関心がある研究者、専門家を様々な機関から歓迎している。なぜなら各地から多くの参加者を集めるだけで、復興の拠点としての福島の認知度が高まり、農業だけではなく多くの分野の知を受け入れることで、アイデアが生まれ相乗効果が期待できるからである。
     この記事や講義を考慮して、私自身ができそうな被災地の農業再生は、被災地の現状や問題点、問題点を正しく理解し、常に被災地の情報を確認することである。私自身は専門家ではないので、復興農学会や他の機関に技術的に協力することはできない。また特別影響力があるわけでもないので、被災地の風評被害をなくすような情報を世間に発信することもできない。実際、多くの人が私と同じ状況であると考えられる。私にできることは被災地に対する偏見を科学的知見によって無くし、常に正しい理解ができるよう情報を追い続けることである。現在、復興農学会を始め、教育機関は東日本大震災や被災地の現状について子どもたちに教えている。次世代の人々一人一人が上述したような正しい理解を行えば、社会学的な復興は大きく進むだろう。
     

  32. 東京電力福島第一原発事故以降、被災地の農林水産物の価格は低迷したままである。福島県産のものに着目して論じると、市場の中で大きなシェアを占め代替産地のないキュウリを除くと福島県産のコメや牛肉、モモなどの産物の価格は全国平均を下回った状態が続いている。安全性が確保されているにもかかわらずこのような状況にある主要な原因は風評被害にあると考える。原発から漏れた放射能を浴びている可能性のある農産物を不安視して、あえて買って摂食しようと思わないという消費者の心理が福島県産農産物の買い控えを加速させているのだ。その心理自体は批判されるべきものではなく、かくいう自分も放射線について学ぶ機会がなければ、例えばスーパーマーケットで福島県産と他の都道府県産のものが同じ値段で売っていれば、福島でないものを買っていたかもしれない。
     しかし、実際はコメ以外の農産物については原子力災害等別措置法に基づいて、各市町村が主体となって各品目ごとに少なくとも3点以上のランダムに選んだサンプルの産物について検出器で放射線量の測定が実施されており、基準値を超える放射線が測定されたサンプルを抽出した市町村の全てのその品目は出荷が制限される。一方コメについては、福島県で生産されるものを全量全袋検査を行っており基準値を超えたものを出荷停止としているが、2015年以降基準値を超過したものは検出されていない。
     以上のように福島県産物を摂取したことによって、放射性物質が体内に取り込まれたり、内部被曝する可能性は非常に低いにもかかわらず、消費者や流通業者が誤った認識をもってしまっているのは、単に無知によるものだ。従って被災地の農業再生を考えるにおいて人々の理解を深めてもらうための活動は必須であると言える。そのために自分ひとりができることとしては、些細なことかもしれないが、TwitterやInstagramといったSNSを用いて地道に福島の農業に関する誤解を解くようなメッセージを投稿したり、口コミで周りの友達に話すことだと思う。自分一人の力には当然限りがあるが、同じように考える人がコツコツ積み重ねることによってようやく世間に蔓延する誤った考え方を変えることができると考える。
     

  33. 被災地の農業再生において、土壌の再生のために国家では表土削り取りや反転耕、水による土壌攪拌除去が行われ、農家自身では凍土を剥ぐ方法や、田車を使って水田の土を泥水にして流すという方法があり、田車の方法では下流に汚染した水が流れる可能性が考えられたが汚染土は土に挟まって濾過されたような状態になるため安全だと分かっている。
     ただ、農業再生を行うにはこのような土壌再生に加えて、帰村者を増やし、さらにその帰村者から農家となる人を増やさないといけない。ここで、まず帰村者を増やすことを考える。実際に飯舘村では村に定住する意思がある人に対して、飯舘村移住定住支援事業補助金があり、この情報をもっと広めることで帰村者が増える可能性があるだろう。例えばSNSを利用してこれからの世代を担う若者に向けて情報を発信するのも効果的であるだろう。また、現在新型コロナウイルスの流行によってテレワークが進んでいるため、都心で仕事をしている人であっても地方に住むことが今後ますます可能となってくるだろう。そのため、このような人を対象に情報発信の場を設けることも有効だと考えられる。
     次に、農家となる人を増やすことを考える。先に述べた飯舘村移住定住支援事業補助金の中には新規就農・企業活動補助金があり、帰村者にとっては就農しやすくなるだろう。また、農業のイメージとして、重労働でつらく所得が低いと考えられている。ただ、学生に比べて農業従事者はつらさより楽しさを感じている傾向があり、学生の中でも農作業体験がある方が大変な印象を抱く一方で楽しさや明るいイメージを感じる傾向にあると分かっている。そのため、小中学生などに農作業体験の機会を設けることは良いイメージを与えるきっかけとなるだろう。また、所得が低いことについては、農作物をブランド化することが有効だと考えられる。ブランド化の際には適した基準を設置して、基準を満たしたものをブランドとする。この基準はブランド品として認められるような高い基準であり、かつ収益が見込まれる分の量の農作物が通過できるような基準である必要がある。ブランド品はPRや実際の販売の中で価値を伝え続けることで認識されるようになれば、農作物の単価が上がり、所得向上につながるだろう。このような活動を続ければ、農家に対して魅力を感じる人がさらに増えるかもしれない。
     これらのように、帰村者や農業従事者を増やすことは農業再生に大きな意味を持つだろうと考えられる。
     

  34. まず震災から10年たつ現在、被災地における農業再生において何が課題となっているのだろうかということを考えた。多くのことは努力のすえ解決に向かっていると考えられる。例えば消費者の意識である。福島近辺で生産されたものを見たときに、危ないから買うのはやめましょうという意見を聞くことはほとんどない。日本という国に対する信頼ではあると思うが、僕自身この放射線環境学の授業でまだセシウムが土に残っており、生産者の人たちは様々な工夫をして安全を守ろうとしているということを知ってなお、生産地を気にすることはないだろう(これは安全検査が行わなければ被災地からできる農産物にリスクが多少存在するかもしれないということを示している)。被災地とは言ってもその被害のうけかたは様々である。津波によって被害を受け、土地として農業をできる状態にない場所や、それこそ放射線セシウムなどである。これらに僕ができることは科学的観点から解決をはかるよりも、農業をした先にその生産者たちに利益があり、復興する気を起こさせるような事業にかかわっていくほうであると考えられる。セシウムそのものへの対策などは現在それらを専門として活躍している人たちの努力によると思うが、事業はいくら人がいても損にならない。そんな経済を回すような会社を作りたい。
     

  35. 被災地における農業の課題としては様々なものがあるが、帰村率の低さや農家の高齢化などと言った人材不足に関する問題、汚染による農地の不足の問題、「被災地で栽培された作物」という消費者に対してネガティブとなるイメージの問題などが挙げられるだろう。一人の学生の観点から言えば、汚染された農地の除染に関わることは非常に難しいと思うので、人材不足・イメージの問題について関わることができると考える。人材不足の問題に関して、特に被災地に新規企業や農業者を呼び込みたいということであれば被災地での農業に関して良いイメージを持つことは必要不可欠ではないだろうか。そう言った点で人材不足の問題もイメージの問題に包含することができると考えている。
     被災地に関しての負のイメージは震災から時間が経過していることもあり減少していると考えることもできるが、今なお強い負のイメージを持ってしまっている消費者もいることが予想される。こうしたイメージの根本にあるのは東日本大震災という未曾有の災害が人々に与えた恐怖や、その後のマスメディアの報道による悪く言えば印象操作がほとんどではないだろうか。特に現代においては誰もがメディアとなって情報を発信できることがこの事態の打開に有効ではないかと考えている。情報の錯綜するネット社会においては文字だけでの意見は事実性や説得力に欠け、人々の心象に影響を与えない情報となってしまいがちである。また、そもそも地震がよく理解していない事柄に関して情報を発信してしまうことも不適切である。そのため、自身が積極的に被災地の農地へ赴き、そこで働く人々や栽培されている農産物などに触れることでより被災地農地への理解が深まっていくのではないかと思う。さらに、そういった情報を画像などのわかりやすい媒体で発信することによってより多くの人に現状を届けることができるのではないだろうか。この方法は特にスマートフォンやパソコンを扱うことに慣れている若い人に理解してもらうために重要であると考える。
     

  36. 今回私は、Mizo lab.のホームページのTopicsのうちの、(2018.5)純米酒「不死鳥の如く」が誕生! を読み、講義内容と照らし合わせながら私自身ができそうな被災地の農業再生に対する取り組みについて考察していくことにする。
     まず、前述のTopicsや、授業でも扱われた純米酒「不死鳥の如く」は福島県飯館村の土壌で作られた酒米を用いて作られた日本酒であり、飯館村農業委員会会長の菅野宗夫さんを中心にNPO法人ふくしま再生の会や大学の研究者とともに作られたものである。さらには、同じ飯館村さんの酒米から作られた日本酒として、純米酒「復興」も存在する。
     このような商品からは、原発事故の影響によって世界に広まった”Fukushima”の名を逆に利用して福島の農産物や畜産物を日本中に、そして世界に広めていくというアイデアが得られるが、このようなアイデアを実現させるためには、福島県産の農産物や畜産物に重くのしかかる風評被害という十字架を跳ね除けていく必要がある。そのためには一体何ができるのだろうか。次の段落ではこの話題について考察する。
     実際、福島県産の農産物や畜産物は危険であるということはない。それは、コメの全袋検査に代表されるような放射性物質が含まれているかの検査の結果から100Bqの基準値を超える農作物がほとんどないことがわかっており、さらにその基準が科学的な知見に基づいて国際的に設定されているからである。これ以上の低い基準を設定しても有意な効果が得られないのも明らかになっている。たしかに、未だ農地として使えないような地域もあるため、引き続き検査をしていく必要はあるが、検査をしている限りではむしろ検査をしていないような地域の農産物や畜産物と比べて安全であるような印象さえ受ける。そのため、コメであればモニタリング検査の結果を前面に出し、むしろ他の地域の農作物よりも安全であるのではないかとアピールしたり、他の農作物であるならば、現在の桃やキュウリのように、福島県産のものは品質がいいといった印象を与えていったりすることが、福島県産の農産物や畜産物を売り出していく上で重要になると考えられる。このようないわゆるブランド的な戦略を練っていくのが、被災地の農業を再生させてくことにウナがるのではないだろうか。
     以下、上記のようなブランド戦略を福島県産の農産物や畜産物において展開していくために、私自身ができそうなことに関して考えていく。まず、自分の手で福島県産のブランドがつくような農産物を作っていくことはかなり難しい。そのため、自分ができることとしては、福島県産の農産物・畜産物をアピールする活動であると考えられる。大々的なものから考えると、例えば、五月祭や駒場祭などで農学部の強みを生かし、福島県産のものを販売することなどが挙げられる。利き酒を行なっている専修ならば、「不死鳥の如く」や「復興」といった純米酒を扱うこともできるはずである。さらに、自分が普段からできるようなこととしては、普段から福島県産の農産・畜産物を使って料理するなどして、できる限り自分のSNSなどを用いて周囲にアピールしていくことなどが挙げられる。いずれにせよ、まずは自分自身が福島県産の農産物や畜産物にもっと慣れ親しんでいくことから始めていくことが重要になってくると考えられる。
     
     参考
     (2018.5)純米酒「不死鳥の如く」が誕生!
     http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/edrp/fukushima/saisei/likeaphoenix.pdf
     

  37. 私はホームページのトピックスの中から、『(2020.4.26) コロナで変わる大学教育(下野新聞日曜論壇4)』を選んで読んだ。この記事では、新型コロナウイルスの感染が拡大して対面での講義が行えなくなる中で、オンライン講義には従来の講義にはなかった新たな良い側面が見いだされてきていると述べられている。大人数の対面講義ではなかなかその場で思ったことを質問しづらいものの、オンライン講義では比較的簡単にチャットで質問できることなどがその代表例であるといえる。また、直接同じ場所に行く労力をかけることなく、どこにいても他人と話すことも容易になった。
     このような利点は必ずしも感染を避けるという目的がなくても非常に便利なものである。東京にいると農村に直接出向くことは時間や費用の面で大変であるが、オンラインではビデオ会議を用いて簡単に意見交換ができる。講義の最後のほうで述べられていたように、溝口先生が飯館村の方々とお話ししているのもオンラインであれば非常にやりやすいであろう。このようなことができるようになることで、普段自分が考えていることを相手に伝える機会を多くすることができ、より新しいアイデアを相手が生み出す助けになると思う。相手の話を聴いて自分が新しいアイデアを思いつくのも同様である。
     以上を踏まえて私にもできそうな被災地の農業再生について考えてみると、それは自分で普段考えていることを、実際に日常的に農業の現場にいる農家の方と共有するのが一番の近道なのではないかと思う。具体的に今何かを考えているわけではないが、いずれ研究室に所属して農学についてもっと深く考える機会ができたとき、自分の中で考えがいろいろ浮かんでくるものと思う。その時にその考えを自分の中だけでとどめるのではなく、現場で働く方々と共有することでよりよいものになるし、さらに現場に生かせることもあると考えられる。そのような機会を得るためにも、農業再生に取り組むためには積極的にコミュニケーションをとるチャンスを探してみることが必要だと思う。
     

  38. 自分自身ができそうな被災地の農業再生とは、学生ゆえのフットワークの軽さを生かして実際に現地を訪れ、手を動かして農業を体験し様々な学びをすること、そしてその学びを発信することであると考える。インターネット上の情報や、受け身型の学習で得られる知見では被災地の現状に関して当事者意識を持って向き合うことはどうしてもできず、バイアスのかかった見方や、限定的で狭い視点から来る知識だけが身についてしまう。特に、主体的に得なかった知識には疑問を挟む余地なく自身に吸収してしまうことが多く、これは風評被害などマイナスに働く危険性がある。よって、まずは実感を伴った学習を時間的拘束の少ない今行うべきであり、行いたいと考える。その上で、授業などで事前に得た知識と、自分の目で見たことや手を動かして感じたことを照らし合わせ、被災地の当事者に限りなく近い視点の正しい知識をインプットし直すことが必要であると思う。そして、その得られた知識を外部へアウトプットすることによって被災地の農産物への風評被害の減少や被災地の農業再生へのサポートの一端を担うように自覚を持って行動することが求められていると思う。例えば飯舘村の事例では、『学問は出会いと現場から』という記事内で紹介されていたが、役場の提案していた農家の希望に応じた4つの農業プラン「農地を守る農業」「生きがい農業」「なりわい農業」「新たな農業」という支援策の存在などを外部に広く周知することができれば元村民の帰村促進や新規就農者の増加、ひいては飯舘村の広大な農地の利活用を進め農業再生に貢献できる可能性があると考える。営農再開のための明確なビジョンがあるのは大きな利点であり地域としての強みや魅力もあることから、これらを発信することがニーズであるのではないかと感じた。おそらく飯舘村に限らずどの被災地にも強みとなる産業や豊かな自然、営農者、行政などの努力があるはずでありこれを適切な形で多くの人が知ることができれば、実際にプレイヤーとして被災地復興に携わる人、もしくは復興支援という形で被災地と繋がりを持つ人を増やすことができるはずである。そのために、先述したような現在あまり知られていない被災地に多く存在する魅力と、放射能やその影響に関する正しい知識のインプットが必要なのであり、その手段としての当事者意識を呼び起こすような体験なのではないかと思う。加えて、アウトプットに関しても現在はSNSなどを通して匿名で不特定多数に情報源のわからない情報を発信できるような状況であることを鑑みて、責任感を持ち、正確かつ適切にインプットしたことを発信することも求められているのではないかと考える。学生ゆえ直接農業に関与することは難しいが、このように適切なインプットとアウトプットを行うことこそ今自身ができそうな被災地の農業再生なのではないか、そしてこれらの作業を経て自身に集積したものを将来的に活用し直接的な支援へとつなげることが自分自身ができそうな被災地の農業再生なのではないかと思う。
     

  39.  自分自身ができそうな被災地の農業再生についての考えを述べると、ひとつに自ら率先して被災地産の農作物や特産物を購入して、被災地にお金を回すことが考えられる。被災地の農地は除染が進んでおり、農作物の放射性物質の量は基準値に収まっているが、風評被害によって被災地の農作物を買うことに足踏みをしていることが見受けられている。さらに、被災地の農業再生には多大なお金が必要になってくると考えられる。このことに対し、我々は被災地の農作物は安全であるということをよく知り、被災地の農作物を買って、被災地にお金を回すことができれば、そのお金を農業再生にかかる資金に回すことが出るし、お金が回って被災地が活性化してくれば、被災地に戻ることに慎重でいた住民や、新たな住民が移住してくるきっかけにもなると考える。こうして住民が戻ってくれば、被災地の農業従事者の数も増えてくると思うし、農業再生が進むのではないかと考えられる。
      この講義で自分は飯館村に「不死鳥の如く」といった特産物があると知った。こういった被災地の特産物を買えば、被災地のこともさらに知ることができ、被災地の風評被害も薄まっていくのではないかと考える。特産物を買っていくことで、この特産物がブランド化し、この先長く継続的に売れていき、被災地に対する注目度も上がって、経済や農業が活性化して被災地に行ってみたい、住んでみたいといった人も増えていくかもしれない。
      さらに自分自身ができそうな農業再生については、実際に被災地に足を運んでみるということも一つの手になるかもしれない。我々は被災地が現在どうなっているのか知らない人も多い。そこで、実際に被災地に足を運んでみることで、被災地がどうなっているのかをよく知ることができると思う。そうすることによっても風評被害が減っていくと思うし、さらに被災地に対する興味もわいてきて、被災地の農作物や特産物を率先して買おうと思うきっかけになるのではないかと考える。このように被災地の現状を正しく知ることは被災地の農業再生において大切なことだと考える。
      現在、ネット上などに様々な情報が流れているが、そのなかからどれが正しくてどれが間違っているのかが分からなければ、間違った知識を得てしまい、それが風評被害に繋がることもあると考える。それを防ぐためにも被災地に足を運び、実際に被災地の実情を見て、聞いて学び正しい情報を得ることは農業再生を阻む風評被害を減らすのに有効だと考える。
     

  40.  Mizo lab.のホームページのトピックスから「帰村率2割の村を復興へ 農委会と東大のサークルが連携 福島・飯館村農業委員会」という記事を読んだ。この記事は2019年11月当時で帰村率が2割の飯館村において、農業委員会と東京大学の学生が村おこしを行なっていることについて書かれている。飯館村は原子力発電所からは30kmほど離れているが、事故当時には北風が吹いており雨も降っていたという状況で多くの放射性物質が降り注いで強く汚染された地域である。東京大学の「東大むら塾」というサークルに所属する10名の学生は飯館村を月に2回ほど訪れて手作業でそばを収穫するという活動を行うとともに飯館村の魅力を発信して村を活性化しようとしている。
      今この状況下では現地に赴いて農作業に従事するということは困難であるが、新型コロナウイルス感染症が落ち着いた暁には記事のような活動に参加することで被災地の農業再生に貢献できるだろうと考えた。被災地の農業の復興の道のりや収穫された作物の魅力、さらには農作業そのものの魅力を広く発信することで人々に興味・関心を持ってもらうことが可能になると思った。現在は被災地の復興の状況は主に3月中旬くらいでしかテレビで重点的に放送されておらず、まだまだ農作物の安全性に関する誤解は残っているように感じる。現地に赴いて農作業に従事している様子を発信することは飯館村に限らず福島全体の農作物の安全性を広く知らしめる手助けとなるだろう。また、日常生活の中でも福島県産の農作物を積極的に買って家族や親しい人にその魅力や安全性を伝えることもほんの僅かではあるが農業の復興の手助けになるかもしれないと思った。
      まだ自分自身の進路は決めかねているが、もしも被災地の農業再生に関われるような研究分野に進んだ時には除染のための作業や農業振興のための研究に積極的に関わっていきたいと思う。そのためにも今は自分がまだ知らないことを学んでゆき知識として蓄えることを継続的に続けてゆこうと思う。
     

  41. 飯舘村における村学民協働による農地除染と農業再生の試み」という記事を拝読しました。被災地で起こったことや現状などを一番よく知っている人は他ならぬ現地に住んでいる人であるので、そのことを知るためには現地に足を運んで自分で見聞きすることが重要なことだと思います。しかし、むら塾など被災地と関わっている団体に所属しているわけではない私では、金銭的・時間的コストがかかりすぎます。なので、現在住んでいる場所に居ながらにしてもできる被災地の農業再生についてかんがえました。被災地にとって再生とは、以前のように被災地で集荷した農産物が全欧区へと流通し、消費者の食卓にのぼることだと思います。そのためには、いまだ根深く残っている「被災地産」農産物に向けられるネガティヴイメージをいかに払拭する蚊が大切になってきます。個人レベルでできることとしtれは、やはり被災地の農産物の消費になってくるのではないかと思います。私1人が消費したところではたかが知れていますが、被災地の現状についての正しい知識を持っている人が増えてくることで徐々に以前のような姿に戻っていくのではないかと考えました。
     

  42. (Sセメスターの期末レポートに加筆しました。)
     自分にできそうな農業再生は生産者と消費者を繋げることである。
     東日本大震災による原発事故から9年が経つ今も福島産の作物は風評被害を受けている。もちろん、現地での物理的な土壌の再生も大事だが、販路がなければ生産はできても農業を再生できたとは言えない。そこで、除染の現状を広く認知させることにより消費を喚起することが大切である。
     具体的な方策を考える。
     風評被害の原因は「福島」という単語にある。ここで、「福島」という単語が放射能に直結し、現地に人がいて農業を営んでいることを想定する人は少ないだろう。そこで、個選と共選を組み合わせた販売をすることで人に注目してもらえると考える。最近、生産者の顔を見て直接商品を買うことができるアプリが成長しており、この方法で販売できることが望ましい。しかし、すべての生産者が登録や出荷できるわけではなく、一部の生産者のみが注目されても福島全体の再生にはならない。そこで、共同出荷を担う組織が生産者の名前や顔を伏せることなくインターネットを通じて出荷する。自分にできることは、この販売方法を宣伝することである。
     宣伝とは現場の現実を正しく伝えることである。一番の目的は風評の払拭であるから、現地での除染活動を主に伝え、福島の作物が実際にどれくらい安全であるのかを示す。ただ単純に安全になった、とだけ言っても効果はないので、より具体的な(授業で紹介されていたような)除染方法を強調する必要がある。宣伝の場はインターネットがメインになるが、全国の学校で出張授業のような活動ができればなお良い。この宣伝活動はクラウドファンディングで資金を集め、リターンに作物を送る。また、インターネットを通じた作物の販売も同時に行うにあたって他の産地との差別化が必要になるが、国家レベルの支援によって価格を大幅に抑えることが望ましい。
     また、消費者向けの宣伝だけでなく、生産者に宣伝方法を提供していくことも大切である。上で一部の生産者のみが注目されても福島全体の再生にならないと書いたが、将来的には各生産者が独自に販売ルートを持てれば経済的な自立にもつながる。最終的な目標は他産地と競合できるようになることである。
     このような活動をする上で、前提として必要になることは自分自身が現地に赴いて現状をよく知ることである。復興は終わっていないが、現場の状況は常に変化しているはずである。都会と地方の認識の差があることを自覚し、現実的な活動をしなければならない。
     読んだ記事
     (2018.3.14)農業農村工学の「つなぐ・つながる」を考える
     

  43. 飯館で米作り復興」という記事を読んで
     復興のためには、土壌の除染(ハードも部分)に加えて被災地で作られた農作物の売り上げ(ソフトの部分)が重要であると考える。
     まず除染については放射性セシウムは粘土の層の隙間にはまり込み、動きにくいという特性を生かして表地剥ぎ取りを行うボランティアを呼びかけること、また土のろ過機能を活かした汚染土を埋める方法を行うために、農民に丁寧な説明を行い安全であると説得する必要がある。
     また、微生物がセシウムを除染できたらいいなと思い、そういった研究にも興味がある。(生態系の問題もあるが)
     被災地で作られた農産物の売り上げをあげるには、まず安全性だということを積極的に発信する必要がある。未だに一部の人は福島県産と聞くと、「放射性物質が含まれていて危険だ」と考える人がいると思う。
     2018年の消費者庁の「食の安全に関する意識調査」によると、「福島県産の食品を購入している」との回答は、福島県在住者では77.3%だったのに対し、福島県以外では16.8%にとどまった。このことから最近でも風評被害が続いており、払拭する必要があると言える。また、福島県産の食品を購入していない人に理由を尋ねたところ、「特に理由はない」が最も多く42.5%、次いで「日常生活の範囲で売られていないから」(33.2%)、「放射性物質が不安だから」(13.9%)などとなった。このことから福島県産の農産物は、風評被害に加えて、あまり流通されておらず、また購買意欲を沸かせるほど良さが認知されていないのではないかと考える。
     まず安全性に関して、いくら安全だという情報が公開されていたとしても、自らその情報を探す人は少ないだろう。情報取得に対して受動的な人が多く、特に高齢者は情報元がテレビや新聞であることが多いことから、安全性のアピールにはそれらの媒体を使ってCMなどで行うことが重要である。また物産展の企画での説明も効果があると思う。
     流通、認知させるのにもCMは有効である。CMで老若男女に人気な人物を起用し何回も放映すれば、単純接触効果もあり、買ってみようという気にもなるし「福島の作物は安全だし応援しよう」という意識にさせることができるのではないかと考える。震災の直後はそういった取り組みも見られたが、現在では見ない。このような取り組みは粘り強く続けることが重要である。
     また、消費者に手に取らせる手段として、政府に呼びかけ一定期間政府が差額を負担して安く販売するという方法も考えられる。安くなれば手に取る機会が増え、おいしさを知ってもらえ、リピーターができる。
     さらに「農作物のサブスクリプション」のようなサービスを作れば生産者は安定して収入を得て農業を続けられるし、農業人口も増えるかもしれない。また、消費者の元に被災地の作物が届きやすくなるだろう。
     私はこうした生産者と消費者をつなぐ仕事にも興味を持っている。
     
     参考文献
     
    飯館で米作り復興
     
    https://www.jaif.or.jp/180308-1
     

  44. わかっています。だからこそ、調査をし、事実が何なのかをすべて公表しています。それを使うかどうかは国や行政の仕事です。国がやってくれないからこそ、様々な状況を理解した上で私たちNPO法人はやれることを全部自分たちでやっています。」という言葉が沁みました。
     なんとなく福島産のものは危ないのではないかという根拠のない考えに基づいて、福島の農産物を買わないなんていう考えも、被災地の復興を足止めしてしまっている原因の一つだと思います。国がやってくれなくとも足を運びNPO法人が現地の調査をしてくれているのならば、そのようなデータを自ら調べ、「なんとなく買わない」ではなく、根拠を持って福島の農産物を買っていくことが私たち消費者にとって大事なことではないかと思います。
     以前、「リスクについての情報が、 社会に提供されているかどうか」というアンケートで、放射性物質はノロウイルスや腸管出血性大腸炎に比べて放射線物質は「はい」と答えた人が低いという話を聞きました。そのように情報が与えられてないと感じる人が多い中で、、国に任せる、なんとなくの雰囲気に身を委ねる、のではなく、能動的に情報を集めることが復興への近道ではないかと思います。
     

  45. 参考記事:2019.4.26『飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生』(コロンブス2019.5)
     
     被災地の農業再生について、技術開発や研究の分野では残念ながら私たちのような学生ができることはほとんどないだろう。将来的にはわからないが、今はまだ専門知識や現場経験がほぼないためである。そのような中で、被災地の農業のために私たちにもできることはなんだろうか。
     私は、まず第一にできることとしては、被災地の農業生産物の購入や、被災地で収穫された作物の安全性についての身近な人々への啓蒙であると考える。まず、自分で被災地の農業生産物を購入することは最も簡単な応援の手段である。私も、震災以降積極的に福島や茨城の農作物を多く購入してきた。しかし、私個人だけではなく身近な人にも被災地の農作物の安全性を伝え、購入を勧めることで、さらに応援の輪を広げることができるのではないだろうか。
     また、東日本大震災ではなくても、将来的に自分の住む地域が被災地になることも十分考えられる。その時は、自分が農業に携わっていなくても、ボランティアとして地域の農業再生に向けて手伝うこともできる。
     また、講義の最後で溝口先生が仰っていた「復興農学会」の会員になるなどして、被災地域の声に耳を傾けながらボランティアや研究の手伝いなど自分にできることを探していくことも可能である。これは手っ取り早く効果的に被災地の農業再生に関われる方法であると考えられる。さらに、このような活動を周囲に宣伝していくことで学会の認知度も向上し、より多くの人が学会の活動に参加してくれるのではないだろうか。私一人が始めた宣伝であっても、芋づる式に多くの人に繋がれば、被災地の農業再生において大きな力になると考えられる。
     さらに、これから大学で勉強や実験を重ねていけば、専門知識も身についてくるだろう。そうすれば技術開発などの誰でもできるわけではない分野からでも、被災地の農業再生に携われるようになると考えられる。私自身現在はそこまで強く復興に関わる研究をしようとは考えていないが、将来どのような道に進むかはわからないので、いずれ被災地の農業再生に関わる仕事をしようと思った時に戦力となれるよう、専修での勉強をおろそかにしないようにしようと考えた。自分の今の勉強が、将来被災地の農業再生にも役立つかもしれない。
     

  46. 2019、7/18の、土とセシウム関連の記事(聞いてみよう!あなたの知らない“土の世界”-放射性セシウムとの関係-)について書きます。私が直接今できることではないかもしれないのですが、いくつか読んだ記事の中で一番興味深かったのでこれにしました。土は身近にあって小さい頃は泥団子を作ったり砂で色々なものを作って遊んだりしてたけどその実態について詳しくは知らなかったのでこの記事が一番新鮮で面白かったです。この授業の他の先生もおっしゃっていましたが、セシウムは土の中の鉱物に吸着しやすいので土の中に残りやすい。そこで冬の時期の凍土になっている期間を利用して表面の土を剥ぎ取ることで除染ができるが表面の肥沃な土をとってしまうことで、土の性質が表面とは違うものになったり、肥沃でなくなってしまう。そこで私達にできることはもう一度肥沃にするための肥料を被災地に送ることではないかと。私の実家は岡山なのですが同じ岡山に住む親戚が農家をやっています。その農家では鶏を買っていてそのフンや、野菜の食べ残しなどを用いて肥料にしているのを小さい頃に見ました。(フンに関してはうろ覚えなので記憶違いだったかもしれません。)都会に住む我々が捨てる食料を肥料として有効活用できるようになればいいなと。現時点ではコストに見合っていないかもしれませんが、より技術が発展していくと効率よくできるようになるのではないかと思いました。
     いくつか記事を読みましたがどれも面白かったです。
     

お薦めの記事

  1. 下野新聞日曜論壇
  2. 飯舘村に通いつづけて約8年-土壌物理学者による地域復興と農業再生(コロンブス2019.5)
  3. 私の土壌物理履歴書(土壌物理学会誌)
  4. 農業農村開発の技術を考える(ARDEC 第60号, March 2019)
  5. 自分の農地を自身で除染したい百姓魂
  6. 復興の農業土木学で飯舘村に日本型農業の可能性を見出す
参考: 同じような内容の講義を聞いた他クラスの学生の感想
関連ページ:


ホームページへ戻る( 溝口勝, 国際情報農学研究室, 農学国際専攻, 農学生命科学研究科, 東京大学
 
amizo[at]mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
Update by mizo (2020.1.9)