Q1. 埋めた土の放射線量を測るためのパイプが地上に飛び出していましたがその為にトラクター、コンバイン等を使いにくくなるということは起こりませんでしたか?
A1. はい、もちろんありました。そこは農家さんが上手に避けて作業してくれました。農家さんは農業機械操作のプロですから。
Q2. スライド49・50で理解が追いつかなかったです。
A2. すみません、ちょっと説明上足でした。49ページの左側が松塚地区の畦畔埋設工事後の測定値、右側が佐須地区の表土埋設後の測定値です。畦畔埋設工事では汚染されていない土も一緒に埋設しているので埋設土のセシウム濃度が最初から低かった。そのためピークの位置が1/3くらいになっています。この図は私の研究者人生で一番の自信作で、9月の学会で発表予定の未公開データです。
50ページはそれぞれのピーク位置と最大値をプロットしたものです。詳しくは下記の文献を見てください。
飯舘村の水田に埋設された汚染土壌から放射性セシウムは漏出するか?
Monitoring of soil radiation doses from contaminated soil buried in a paddy field in Iitate Village, Fukushima(Paddy and Water Environment, pp 1-4)
Q3.24枚目のスライドに出てきた、黒い袋に入った汚染土は最終的にどのようにして処分される予定なのでしょうか。
A3. 8000Bq/kg以下の土は道路の路床材等の土木材料として再利用されることが計画されています。講義の結論部分でも述べましたが、水が浸透する水田に埋めてもセシウムは移動しないのですからコンクリートやアスファルトで覆われていれば科学的にはほとんど移動しないといえます。飯舘村の一部地区では農地の下に埋設してその上にバイオ燃料になる作物を栽培する実験も計画されています。ただし、これに関してはその作物が根からどれくらいセシウムを吸収するのかが不明なのできちんとした実験が必要です。
飯舘村長泥地区における除染土再利用実証事業
Q4.埋設に使用する土はどこから持ってくるのですか?また、既存の除染とコストの面でどのくらい差があるのですか?
A4. 近くの山を削って使っていました。セシウムは地表面に留まっていますからその下の土は汚染されていません。この非汚染土を削った後の農地に入れます。この方法を客土(きゃくど)といいます。お客さんの土を農地に迎えるような意味ですね。
自前でやるのですからほとんどコストはかかりません。除染工事費を農家さんに渡して自分の農地を自分で除染するような政策ができたならばもう少し事情は違っていただろうな、と個人的には思っています。でも個人で埋設する方法の安全性を理解してもらうには時間がかかります。その一方で行政としては一刻も早く除染して空間線量率を下げなければならなかったのでどうしても大掛かりな工事を採用せざるを得なかった事情もあります。そのあたりの事情については下記を参照してください。
自分の農地を自身で除染したい百姓魂
Q5.放射性ヨウ素についてはEUの基準より日本の基準の方が緩いようなのですが、何故なのでしょうか?
A5. 食文化による違いでしょうね。日本人は味噌汁なので昆布やワカメなどの海藻を普段から摂取しています。日本人は普段から欧米人よりヨウ素を甲状腺に蓄えているので基準が緩いのだと思います。(自分で調べてみてください)
Q6.飯舘村での除染作業はどのくらいの面積でやったんですか?
A6. 除染実施対象面積=約5,600ha と公表されています。(下記参照)
飯舘村の除染特別地域について
しかし、飯舘村は75%が山林ですがそのほとんどは除染されませんでした。宅地や道路から30mの範囲だけが除染対象でした。山から放射性セシウムが流出することが懸念されますが、森林総合研究所の研究によって「放射性セシウムは森林内を循環するといわれています。
森林内における放射性セシウムの動態
課題:
溝口研究室(Mizo lab.)ホームページのTopicsの記事の中から2つを選んで読み、講義を聴いたことを参考にしながら、「あなた自身ができそうな被災地の農業再生について」考えを述べよ。A4で1枚から2枚程度にまとめて提出すること。