土壌圏の科学(2023.12.27)

土壌の凍結

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。
最終的にはこのようなページになります。---> (昨年度のQ&Aとコメント)

資料

土の凍結(2023.12.27)  受講者?名

講義資料 出席フォーム(提出締切:1月10日23:59)

Q&A

  1. 凍土壁のメリットが数多く紹介されていましたが、逆にデメリットは何かあるのだろうかと思いました。 個人的には、凍土壁では永久的に冷却液の供給が必要なことや、凍結状態を維持することにエネルギーが必要なことを考えましたが...
     -->私自身は、(1)海水などの塩分を含んだ土には使えない(凍らないので) (2)地下水流の速い地盤には使えない 等のデメリットが思い浮かびましたが、ChatGPTに聞いたらこんな回答(3種類を例示します)が返ってきました。
    (1)環境への景況 (2)コスト (3)時間の制約 (4)安全性 (5)維持管理 (6)限定的な使用範囲 (7)液体の制御難易度 などです。
    それにしてもchatGPT恐るべし!要するにこれからの時代は基本的な概念(用語)さえ知っていれば自分で調べることができるということですね。

  2. 凍結工法のエネルギーについて気になりました。確かに非常に有効な工法だと思いました。地下トンネルなどの時間の制限のある時はいいとしても、長期間地下水をとめる必要がある場合に長期間冷やし続ける費用やエネルギー消費が気になりました。福島の原子力発電の地下水は近いうちに止める必要がなくなるわけではないと思うのですが、長期的にも有効な手段なのですか?
    -->1の回答を読んでください。

  3. 表土の凍結を利用して放射性セシウム除去を行うという研究が興味深いと思いました。色水を用いた土壌凍結深度の特性では氷から色素が追い出されて色水は下の方に残る、との説明を受けましたが、セシウムが色素のようには氷から追い出されない理由は、粘土鉱物と強固に結合しているからという認識でよろしいでしょうか。 (-->はい、その認識であっています。)また、色水の例を聞いて、ツンドラ土壌では凍結で物質の移動が行われている可能性を考えました(表層の物質が永久凍土と冬に凍る表面の間に濃縮される、など)が、実際にそのようなことは起こるのでしょうか。
    -->はい、起こると思います。上から凍ると凍結面(氷)の下に吐き出されることになります。ただし、吐き出されるか取り込まれるかは凍結速度に依存します。

  4. 凍土遮水壁はプラスの側面が多いことを学びましたが、問題点や懸念点などはありますか。
    -->1の回答を読んでください。

  5. 水にストローなどを入れると毛管上昇によって少し水位が上がるのはあまり知らなかったので面白かった。
    -->身近なところにある不思議な現象に疑問を持つことが大切です。

講義で重要だと思ったこと

 
  1. 水の浸透などについては他の授業でもよく聞いたが凍土についてはあまり聞いたことがなかった。
  2. 氷の遮水性能の高さから、遮水壁として工事や汚染物質の遮断に利用できること。
  3. 凍土工法は強度や遮水性に優れながら環境負荷も少なく、都市部の地下開発に使われる。
  4. 土が凍るという自然現象を土木に応用して環境負荷を下げられること。
  5. 凍土壁の技術により、地下水の流入を阻止できること。
  6. セシウムはカリウムに代わって粘土表面の穴に落ちている
  7. 凍土の性質を利用して、除染が可能である。
  8. 地下水の毛管上昇を理解することが重要だと感じた
  9. アイスコーヒーとストローの関係についての話題について先生が仰っていた、「身近なことに違和感を感じたり興味を持ったりして調べることが大事」という言葉。
  10. シールド工法にも部分的に土壌凍結技術が使用されていること
  11. 興味を持ったことを追究し続けること。
  12. 土壌内での下への重力に対して、上への駆動力の1つとして毛管現象があり、周りの分子と水分子の引き合いによって生じる。
  13. 凍土という一見狭い分野に思える研究が福島の凍土壁等さまざまなことに役立っているとは意外だった。土壌物理の部分はよくわからなかったが、シベリアの永久凍土と温暖化の問題は重要だと思った。
  14. 凍土がただただ寒い地域の土で、農作ができないものではなく、凍結法などといった工学的な役割を担ったり、福島での放射線の地下水を止めたり、地球温暖化の研究に役立ったり、するということ。
  15. 平衡状態の変化により土壌中では水はダイナミックに移動するが、凍結による性質の変化で通常とは全く異なる独特の性質を示すようになる。
  16. 強度、遮水性、均質性、環境負荷の少なさなどから凍土は優れていて、現在都会で排水のために地下に設けられているトンネルにも凍土を用いることが出来るなど、凍土は非常に役に立つものである。
  17. 地下の開発において凍土が非常に効果的であるということ。
  18. 凍土の遮水性が非常に高いこと。凍結工法による環境負荷の少なさ。
  19. 凍土の形成過程において土壌の中の1箇所で氷ができると周辺の水が集まってきてさらに氷が大きくなるという仕組みが重要だと思った。
  20. 凍土の研究という分野が存在していて、それが意外なことにも復興農学という実践において重要な知見として役目を果たして居ること。
  21. 福島第一原発の汚染抑制に使われた凍土壁は、強度や耐水性、自己修復性や施工性等の点で優れており、凍土工法を利用した工事には多くの前例がある。
  22. 土中の工事に凍結工法が使われていること。
  23. 温暖化によって永久凍土が溶けると温室効果ガスであるメタンが放出されるのでさらに温暖化が進行してしまうこと。
  24. 日常生活で恩恵を感じる機会のない凍土の遮水性、強度などによる工学、農学における有効性
  25. 凍結工法。土に穴を開けて冷たい液体を通すパイプを入れて凍土にするので、福島の地下水を止めたり、地下水の多いところでのトンネル造りに使われてる。土の中の水が上に登る現象、表面張力の話や、凍結過程を数式で表したりすることができるのが面白かった。
  26. 現場の問題から目を背けないこと
  27. 私は農業とは全く関わらない環境で育ってきたため、講義内でも知らないことばかりだった。農学を研究する際にはフィールドに実際に赴いて実学的な知見を得ることが重要だと感じた。
  28. 凍土壁には環境負荷が少ないという特徴があること。
  29. 地下水の浸入を防ぐのには人工凍土による遮水壁が有効である。
  30. 土の凍結と土の乾燥は、水の相変化と水ポテンシャルの低下という点で似た現象であること
  31. 凍土が様々な役割を持つこと
  32. 放射性セシウムはカリウムと入れ替わって土壌中の粘土粒子に固定されること。
  33. 凍土により遮水壁を形成できること。今まで知らなかった技術で革新的だと思いました。
  34. 凍土は、道路や農地における害もあるが、強度や完全な遮水性、環境負荷が少ないことから凍土壁など役に立つものもあり、凍土の性質や環境による影響を研究しなければならない。
  35. 都市部の構造が複雑。都市は上下に伸びているので複雑

自由意見

 
  1. 先生が楽しそうに喋られるので聞いていて楽しいです
  2. 地下水の流入を阻止するための方法として、コンクリートぐらいしか考えられませんでしたが、ご講義を受けて、凍土壁という手段があることを知りました。氷という特性から修復が容易であること、障害物を考慮する必要がないこと、二次廃棄物が比較的少ないこと等、多くのメリットがあると知り、新たな知識を深めることができました。
  3. 大変面白く、退屈しませんでした。
  4. 文科出身だったので今日の授業の難しい部分は全く分かりませんでした笑 が、ざっくりとした理解は出来た気がします。ありがとうございました
  5. 土の中の微妙な相対温度の差でポテンシャルが大きく変わり、水の動きも決まるという説明が面白かった。
  6. 詳しくたくさん聞けて面白かったです。凍 
  7. 凍土は自然の働きによってできるものとばかり思っていたので、凍結管によって人工的に作り出すことができるとは驚きでした。あと、東京湾横断道路の工事中の外観が超COOLで良かったです。
  8. 宇宙に深海、ナノテクノロジーという眼には見えない世界が人気を博して居る昨今、「土の中」というもうひとつの見えない世界が広がっていることを忘れていた気がします。土の中で水が、熱が、物質が、どのように動いているかについて、もっと詳しく知りたくなりました。
  9. 松茸を食べてしまった話が面白かった
  10. 凍土に関して深く考えたことはなかったが、今回その凍土特有の特徴を学んだことによってそれに対する興味が湧いた。また、凍土研究の重要性もしることができた。個人的に凍土がどういうものなのかということは凍土を実際に目にしたことがないため、どうしても湧きにくいものだったので、実際に調査してみたい。
  11. ヲタク向けの文字式は正直難しかったが、気体の状態方程式に
  12. 霜柱の形成や土壌中の水の移動などの複雑そうな現象も、前期教養でやった化学や熱力学の内容を少し延長すれば説明できるものがあって、面白いと思った。また、凍土を利用する工法の話で、凍土の素材としての有用性を初めて知ったため興味深かった。温度条件と時間があれば自己修復できるのが特に凄いと思った。
    -->そうなんですよね。私もM1の時にそれに気づいて土壌物理学が面白いと思い迷わず博士課程に進学しました。 クリスマスイブの霜柱

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Update by mizo (2024.1.10)