東京大学総合科目一般・水と土の環境科学

中山間地域における通信インフラ整備25

担当: 溝口勝


このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。

資料

中山間地域における通信インフラ整備(2025.5.29)  受講者23名 講義スライド

今日の講義で学習した中で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。

  1. いかにワクワクをもつか。
  2. 新規就農者を呼び込み、効率的な農業を行うためにはスマート農業を導入できるインフラを整備することが不可欠であること。
  3. 放射性セシウムを含む土壌を埋没しても、移動せず、半減期に従って減少していくこと
  4. 美賢村構想についての諸取り組み 原発事故後の人口減少から、集約化しく村でのICT技術の運用などを通じて、ロールモデルを作っていく取り組みはこれからの日本の農村の未来のためにも重要な試みだと思った。
  5. 楽天は田舎でも繋がる
  6. 復興農学
  7. 復旧と復興には違いがあること。
  8. 埋没した汚染土内のセシウムは移動せず、理論通り自然減衰しているということ
  9. 実際に農村で通信整備じ携わっている人の話を聞けて面白かった
  10. 中山間地域では農業インフラの整備が不十分であり、地域環境工学の急務である。
  11. リコンストラクトではなくレジリエンスが重要。
  12. 中山間地域の通信インフラの整備
  13. 地主とのトラブルが少ない地域では集約化がよく進む。インフラ整備さえ進めば新規就農者を呼びやすくなる。
  14. 飯舘村では集約的な農業が可能であること。日本の農業集約化のモデルとなりうるのではと思う。ピンチはチャンスってことだと思います。
  15. 人間万事塞翁が馬!笑 日本の農業を維持していくためには、情報通信技術を上手く活用することが欠かせないということ。
  16. 原発事故について除染のことのみを考えるのではなく、除染後の農業を再生させていくこと、それは決して従来のやり方に縛られるのではなく、新しいアプローチもどんどん試していくことが最も重要だと感じました。
  17. 被災地の真の復興は、その土地の人の幸福が満たされて初めて達成されるということ。「復興農学」の「復興」の部分に敢えて'resilience'を当てたのは妥当だと思うし、中山間地域の情報インフラの整備を通じた農家の負担軽減は幸福の充足に必要だと切に感じた。
  18. 情報通信技術/工学をよく理解した人材を飯館村をはじめとした農村地域の復興(resilience)には必要で、山間部でもWi-Fiなどの情報システムが使えるようになれば、農業が便利になって人が戻ったり新規参入したりしやすくなること。
  19. 飯舘村の集約農地は山林の合間にあるために携帯電話の電波が届いていないこと。
  20. スマート農業には、情報工学を理解できる人材の育成が必要だということ。新たな技術の導入には、それをいかに保守するかという問題が常について回ると思います。私もサークルなどで新たなツールの導入を検討することがしばしばありますが、それを将来的に維持していけるのかを考えると、なかなか実行に移せず終わってしまいます。まして高齢者が多い農村部での情報系の技術の導入はかなりハードルが高いと感じました。先生方が進めるスマート農業化は、数年先のことだけでなく、その数十年後のことも考え、技術を保守できる仕組みや人材の育成が大切だと思いました。
  21. 福島県で復興が進められている中山間地域では情報通信インフラが未整備である一方、農地集約が比較的簡単に行えるので通信インフラを整備できればスマート農業を推進でき、それによって更なる復興、地域の魅力づくりに繋げることができるということ。
  22. 情報インフラの整備
  23. 過疎化、高齢化の進む農村でこそ、新規の農業従事者を呼び込むために農業基盤の整備という公共事業に情報インフラの整備が必要である。

質問

  1. 獣害対策の話が少し出てきましたが、地域の生態系と農業がどう共生するかに興味があります。地域環境工学の視点からできることやなされている取り組みはありますか?
    (回答)地域環境工学の研究者や大学院生の多くは農業農村工学会に所属しています。その学会の検索システムで「獣害対策」を調べるとこんな発表があります。
  2. あたらしいことをなぜそんなにたくさん始められるのか?それぞれの事業は並行して行われているのか?
    (回答)現場は面白い問題の宝庫です。その問題解決を楽しむ気持ちを持っていれば優先順位をつけていくらでも新しいことを始められます。事業の多くは中央官庁が税金で使って設定した「仕事」です。したがって、多くの事業に関わると時間がいくらあっても消化できません。なので自分にあった事業の目的の範囲内で面白い問題を楽しむのが研究者として生きるコツです。
  3. 福島復興知学ツアーについて詳しく教えてください。
    (回答)今年は8月4-6日を予定しています。募集案内ができたらこのクラスにも情報を流すようにします。ちなみに、昨年度は夏、冬、冬の3回実施しました。このページの一番最後にツアーの概要があります。
  4. 講義中に言及があった「農学栄えて農業滅ぶ」という横井時敬の言葉の真意は何なのでしょうか。
    (回答)講義の参考文献:福島から始まる復興農学の本文中でも紹介しましたが、「駒場農学校を卒業した横井時敬先生は西洋科学を学んだ当時の農学者が現場を見ずに事にあたろうとしているのを見て講演会の席で「農学栄えて農業滅ぶ」と揶揄したといわれています」(※田付貞洋・生井兵治(2018). 農学とは何か, 朝倉書店, p.3)。つまり当時の農学者に対してチクリと一言釘を刺したようです。「今もちっとも変わらないな」と私は大変共感して、講義や講演でこの言葉をいつも引用しています。
  5. 放射線で汚染された土壌が年月を重ねて安全を取り戻し、問題なく生活できることを伝えるためにはどうしたら良いのでしょうか。
    (回答)若い皆さんが実際の現場を見て、その理由を正しく理解して、"お気持ち"だけで判断している人を説得するしかありません。そう意味で私は駒場の講義は重要だと思っています。
  6. 多くの地域では土地が手放されなかったり、そもそも所有者がわからなかったりして集約化が進まないことが多いが、なぜ飯舘村では集約化が進んだのか。
    (回答)後継ぎの方が帰村せず、自分で農業をすることを諦めた人が多いことが原因ではないかと思います。ただし、「所有者がわからない」問題は残っており、地域環境工学の重要な研究課題だと思います。
  7. 少子高齢化が進む中で、飯館村のような中山間地域の活性化(人口の増加や農業を含む産業の発展)を目指せると思いますか?
    (回答)条件を整えれば中山間地域の活性化が可能ではないか、できるかどうかはやってみないとわからないだろ、と思って、私は取り組んでいます。

自由意見

  1. 福島に行くゼミに参加してみたいと思いました。あと、ICTと獣害に関する研究に興味を持ちました。
    (回答)福島復興知ツアーの案内をこのクラスにも流すようにします。当研究室で実施したICTと獣害に関する研究の一例です。 PIR カメラを?いた中?間地域における動物モニタリング ?法の開発 ICTを活用したサルモニタリング
  2. 復興の取り組みとても素晴らしいと思いました
  3. 情報の分野も巨額の初期投資が必要であるから行政が率先する必要がありそう。そのような理解をどう浸透させていくかが課題だと思った。
  4. 現場の話が聞けて面白かったです。
  5. 土壌におけるセシウムの分布変化が生じにくい要因が気になりました。(降水量の問題?)
    (回答)講義では説明を省きましたが、セシウムと粘土鉱物の関係に要因があります。聞いてみよう!あなたの知らない“土の世界”-放射性セシウムとの関係-を読んでみてください。
  6. 農業従事者の高齢化や人材不足を鑑みると、IoTの利用は非常に有効だと感じた。民間や政府や学府などの異なる立場の人の意見をさらに聞いてみたいと感じた。
  7. 飯舘村に特化して復興するのも良いかもしれないが、それ以外にも復興を必要としている地域はあるのではないか?復興ツアーや外国人の呼び込みなど、企画は色々なところで行えば広く復興が進みそうだと思った。
    (回答)その通り。復興を必要としている地域はたくさんあります。でも全ての地域を一度に復興させる方法はありません。多くは金儲けに走る人々が復興予算に群がり、絵に描いた餅の企画を提案し、予算が切れると同時に逃げていきます。まずは一か所でも良いから最後までやって見せることが必要だと思っています。
  8. 農学的な分析もさることながら、現地に赴いて何が必要とされているのかを見極めながら試行錯誤することは今、最も必要なことであると思いました。Youtubeがこれからどんどん伸びていくことをお祈りしています。
    (回答)YouTubeの登録よろしくお願いします。
  9. 東日本大震災を受けて、自分の使命が見えたという話がとても印象的でした。私は今、将来どんな人間になるのか、何がしたいのか、非常にモヤモヤした思いでいるので、私にもそのような瞬間が訪れたらいいなと心から思いました。これからの大学生活の励みになりました、ありがとうございます。
    (回答)Epiphaniesその瞬間。私が農学部広報室長の時に始めた新規企画です。第1回は私のEpiphaniesです。クリスマスイブの霜柱
  10. 実際に現地に赴いて(時に警察に捕まりかけながらも)放射線量を調べたり、地域住民の方と交流しながら研究をされていらっしゃることが印象的でした。
  11. 昨年度、「放射線環境科学」を受講し飯舘村を訪れ、資料館見学やサル柵設置を行いました。昨年学んだ内容を思い出して懐かしく思いました。先生のご活動で情報通信環境が整備されていることがわかり、また何かお手伝いしたく思いました。
    (回答)はい、お手伝いよろしくお願いします。
  12. むら塾に入っているので本日の講義で聴いたことを意識して飯舘村訪問に行きたいと思う。
  13. 教授が酒の生産を始めたように、個別具体的に地域の魅力を見出し、活性化を目指す事はできると思います。しかし公共事業として大局的に見れば、私は人口が減るならば、過疎化が激しい地域は(はっきりと言えば)見捨ててその地方の拠点となる都市の機能を充実させ、地方の人口流出を食い止めるのが地方の活性化のためには良いと思います。農業に限っても、アクセスが悪く土地も狭い中山間地域よりも平野部での集約化に注力するべきだと思います。
    (回答)そういう考えもあるのでしょう。でも山林を含めて地域全体をどう保全していくかを考える必要があります。この辺を考えるためには地域環境工学の一分野の農村計画を勉強すると良いかもしれません。私の研究室で助教をしていた林直樹さん(金沢大学 人間社会研究域人間科学系 准教授)が『撤退と再興の農村戦略』(2024、学芸出版社)という本を書いていますので是非ともご一読ください。いろんな議論があるようです。

Q&A読後の追加の質問や意見


ホームページへ戻る( みぞらぼ, 農学生命科学研究科, 東京大学

mizo[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp
Update by mizo (2025.6.1)