東京大学 大学院農学生命科学研究科 アグリコクーン講義「国際農業と文化」
国際農業と文化ゼミナール2024
このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。
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Q2-1.松本教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。
- 牛がどのように食べ物を消化して、吸収しているのかについての話(反芻胃を持っていること)がとても興味深かった。私たちが普段消費している牛が、どのような消化システムを持っているのかを理解することは、家畜として牛を育てる上でとても重要だと改めて感じた。また、南スーダンの紛争と牛の関わりについても興味深かった。私たち日本人にとっての牛と、南スーダンの人にとっての牛の存在は、大きく違うと感じた。
- 松本先生の講義では、世界中の牛と家禽について紹介された。特に私は牛に関する部分が非常に気に入った。それまで私は、ホルスタイン種、和牛、黄牛、水牛しか知らなかった。しかし、この講義を通じて、牛の家畜化と交配の歴史を学んだ。牛は世界のさまざまな地域に分布しており、それぞれが異なる特性と優位を持つように進化してきたことが理解できた。耕作、乳生産、肉用の需要に応じて、人々はさまざまな種類の牛を交配させ、新しい品種を生み出そうと努力してきた。これらの品種は異なる需要により適応し、さらに病気に強く、経済性も高いことが明らかになった。
- 現在の家畜は野生種が各地域で家畜化された結果であり、地域の生活、文化ごとに特徴、性質が異なるということ。
- その地域に家畜を導入して初めてわかる課題に対処し続けた末に適応個体が定着するのだろうが,在来種との交配,あるいは在来種との隔絶など,感染症や個体の性質を考慮した政策も重要だと感じた。
- 地域によって宗教や文化と関連した異なる種や品種の家畜が飼養されており、それぞれの扱われ方にも違いがみられる。
- The lecture provided me a lot of new knowledge about livestock industry. This was the first time I learned about the linage of cattle, which made me found interesting. Besides, there are many dangerous diseases that affect cattle, so it is necessary to be careful to prevent the spread of these diseases from the beginning.
- バリ牛は、受胎率が高く、効率的である。しかし、飼育期間が長いので、飼育期間が短い外来種を輸入すると、外来種はもともとの気象現象に合わなかったり、病原体に感染したりする難点もある。
- ベトナムでのホルスタイン飼育の際に、濃厚飼料の要求とベトナムの農業(コメ・野菜主体)が合わないことや気温などの環境で繁殖が難しかったが、交雑種を用いることで成功したこと。
- 耐暑性や粗食性、感染症への耐性などの要素が組み合わさり、その地域の生育に適した家畜の種が選択されているということ。
- The domestication of animals can cause morphological, behavioral, and reproductive changes that wouldn’t occur in the wild.
- インドネシアでの牛肉生産は、主にバリ牛が利用されており、現地の環境での飼養と、住民の嗜好に適している。ヨーロッパ式の家畜生産とは異なる点も多い。
- 家畜化による形態の変化が面白いと感じました。また、防疫な大切さも実感しました
- 畜産はある程度知識は持っているつもりであったが、世界情勢における家畜や畜産業の影響について、知らない情報が多く、感染症など世界における畜産の問題点などを考えることが重要だと感じた。
Q2-2.八木教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。
- 地域に特有の水産文化形成には、海産物の生産目的の違いや現地の雇用の確保、経済的理由など様々な因子が関わっている
- 途上国支援において先進国の事例を参考にすることはあるが、漁業分野では生物多様性や漁業の目的が異なる場合、その国にあった方式かどうか留意する必要がある。
- 発展途上国(アジア・アフリカ)と先進国(北欧)の漁業の違い。関与する人・雇用が多く、誰ももうからないという現象が日本漁業で起きているが、雇用や社会問題をカバー。ノルウェーとは逆の現象(雇用が少なく高収入)が起こっているが南北社会問題がカバーしきれていない。熱帯地域は生物多様性が高すぎて漁業の効率化ができない。無理やり北欧の漁業を途上国に持ち込むのはその国の生態系(生物多様性)と漁業の目的(国内向けor輸出向け)が異なるため難しい。
- 水産業は,その土地の元来のルールに基づいて現代の管理(漁獲枠管理・漁場割当て)につながっている。こうした地域の価値観や賦存漁業資源の違いがあるので,他地域での成功例を安易に導入してはならない。その地域の価値観・伝統・地理条件・魚種に応じた新たな共同参画型の枠組みを地域の人を主体に据えて作り上げる必要がある。
- 八木先生の講義では、世界の漁業捕獲と養殖の現状、そして日本と欧米の漁業管理制度の比較が紹介されました。特に、日本と欧米の漁業制度の比較部分が最も興味深いと感じました。欧米の漁業制度は厳格な規制とルールが特徴であるのに対し、日本は社会や団体による自主的な規制に依存しています。どちらの制度も良い面がありますが、最も重要なのは、漁業管理には漁業従事者がルールを守り、高い機会費用を負う必要があるという点です。実際、海と海岸線を完全に管理することは難しいと思います。多くの場合、漁師は自発的にルールを守っています。不正捕獲に対する対応として、欧米と日本の漁業管理のルールは非常に重要であり、これは通常、違法な捕?に対する高い機会費用(例えば高額な罰金や暗黙のプレッシャー)として現れます。
- アジアやヨーロッパの地域ごとに、生態系や漁業の目的(なんのために)(国内消費、輸出向け)などが全然違う。そのため、それらを考慮して施策を行う必要がある。
- I enjoyed hearing about communities and local initiatives regulating/protecting marine resources. Bottom-up approaches seems to be effective ion strong knit communities where responsibilities can be shared.
- ある地域での成功例が必ずしも他の国での適切な解決策になるわけではないことに気がつきました。
- The overall situation of fisheries in the world, especially Japan, was mentioned in detail in the lecture. I was particularly surprised by a unique problem facing Japan that is different from other countries: the declining demand for seafood. Another interesting thing for me is the difference in management mindset between Western-style (individualism) and Japanese-style (collectivism).
- 多くの欧米人は環境と人間を切り離されたものとして捉えているため、Satoyamaイニシアチブのようにそれを共生(調和)するものとして捉えることが難しいという議論がとても興味深かったです。私はアグロフォレストリーのような生態系の中での食糧生産や、生態系サービスを活用した社会に関心があるのですが、アメリカでモノカルチャー(大規模な農地で単一の作物のみを栽培する農法)が主流であるように、欧米では環境と人間を切り離して考えているという議論は納得ができました。
- 工業と異なり、農林水産業では他国の事例を持ち込むことが難しいということ。
- 先進国(日本及び日本以外)と発展途上国とで、魚介類の消費量・輸出量、漁業の特徴(経済的利益志向、雇用創出志向など)が大きく異なるということ。
- 漁獲量と魚の生産量のバランスを保たないといけない点。どうしてもニーズに応えるために過剰に漁獲を行ったりする点がよくない。
Q2-3.秋山教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。
- 木は材木(重さのわりに耐久性がある)としても、燃料としてもすごく優秀。木からエタノールを作りだすことができ、燃料を作り出すことが可能になるかもしれない。パルプ精製の際にできる副産物も再回収・燃料にされている。
- The applications of different types of plant materials are very diverse. I was impressed with one sample, which is paper made from sheep skin. It looked very thin and pretty similar to normal paper.
- 木は、木材として使用できるだけでなくバイオマスとして使うこともできる。さらに木の主要成分であるセルロースは紙をはじめとする様々な形に加工することもでき、私たちの生活に大きく役立っている。
- 日本は人工林が多いのに、有効利用できていない。木はセルロースが多く含まれているので、セルロース、リグニンの利用方法など、スギなど効果的に利用できる方法を試行する必要がある。
- 建材も輸入の方が安く、製紙産業は縮小しており、植林した木が余っていて、日本の林業は思っていたよりも苦しい状況にあることを知った。
- 環境に配慮した社会を構築する中で、木材をどのように利用していくべきかについて考える良い機会でした。森林の吸収できる炭素量はある一定の樹齢を迎えると頭打ちになっていく事を知って、定期的に伐採をして新しい木を導入することの重要性を理解することができました。
- Prof. Akiyama introduced the history of paper and the use of plants. I knew about the original papermaking technique, but I am surprised that the current papermaking industry also includes chemical and biological fermentation processes. Considering that Japan's industry is very advanced and developed, it's no wonder that it has the third largest papermaking industry in the world.
- 紙の生産は植物体内の大勢を占めるセルロースで出来ているのでバイオマスをかなり活用している工業であり,薬液の再利用や古紙パルプの利用で環境負荷の低減も考慮されていた。工業活用されにくい部位や成分を効果的に利用する方法がさらに実装されれば,化石燃料に依存しすぎない工業の発展につながると感じた。
- I was surprised to find the new potential uses of cellulose/pulp. I initially thought it was mainly for making paper, however with new technology, we can now use it to make energy and such. It reminded me of a research in iis making concrete with vegetable fibers. Exciting.
- 木材を化学的に処理することで、紙だけではなく燃料など様々なものに利用できること。
- 紙をはじめとする植物資源の利用では、セルロースやリグニンなど植物の構成要素と密接に関連していること
- 紙の定義があることに驚きました!
- 繊維物であるが故に、木材には多様な用途に分類できることを知った。特に木を用いてお酒を作るという技術は聞いたことがなかったので、驚いた。
Q2-4.総合討論「農業と資源」で取り上げてほしいテーマを書いてください。
- 家畜資源の管理形態は感染症のまん延防止に重要な部分だが,ハード面の大幅な更新が必要で,ベトナム実習の体感としては難しそうに思った。誰をどのように巻き込めば,感染症対策を効果的に進められるか(ハード面の更新を効果的に進められるか)を知りたい。
- 東南アジアの肉の貿易において感染予防は何をしているのか。また、日本と他国の肉の貿易をするうえで問題となっていることをもっと知りたいと思った。(済)
東南アジアは生物の多様性が多すぎて漁業に向かないのであれば今後、自国での漁業はどのように対処しなければならないのか?
単純な興味なのですが、セコイアの木の大きさに驚いたが育つのに何年くらいかかるのだろうか?また、ペーパーレス化は環境に良いと思っているのだが、今回の話を聞いて日本の人工林増加や炭素貯蔵量のことを考えると紙を生産・消費すること自体は環境に悪いことではないのではと思ったのですがどうでしょう?
- Limiting livestock diseases in countries with many bordering countries seems to be more difficult to control because they can be imported via land routes. What do you think about the advantage of Japan's geographical location in preventing livestock diseases when Japan does not share a border with any country?
- I found interesting to learn more in detail about viral infections. I was able to realize the challenges to mitigate infections within livestock, and how difficult it is to address this issue in small scale farms.
- 紙媒体は今後衰退の一途をたどるのか?
- インド牛の牛肉は人気の食肉になるか?
- 畜産や植物(木材)を利用したエネルギーの開発。バイオマスエネルギー
Q2-5.2日目の講義の感想を書いてください。
- 各農業資源について、発展途上国と先進国の間での差異とともに、世界における利用の現状がわかり、地域における特徴をより深く学びたいと思った。
- 小規模畜産農家への対策についての内容が一番興味深かった。小規模農家が西欧並みの生産量、効率的な畜産にするには、ただ技術を導入すればいいで訳ではない。途上国の地域の文化や環境の特徴として、野生動物が入ってきたり、他の動物との遮断がとても難しいことを理解できた。小規模農家の状況や、能力の限界もあると思うので、そこを考慮して支援事業等をする必要があり、文化的な畜産の要因も考える必要があると思った。
- 生態系・コミュニティ・経済状況などの地域特異的な事情を踏まえると,農業開発のために他所での成功例をそのまま移入することは間違いなく不可能だと思った。一方で,すでにある技術(例えば,今回の講義で登場した製紙工業における資源の再利用や,家畜に対するワクチンの使用など)の中から地域のニーズに合うものを選び取って組み込むことも大切だと思う。また,政治的な思惑やそれぞれの利害関係が絡むと,我々の思う合理的な最善策が受容されないことのほうが多そうである。農村の生活を最優先にしながら,どのようにステークホルダーとやり取りして策を講じるかは,根深く複雑な課題だと感じた。
- I joined this course to deepen my understanding of international and Japanese agriculture. Today's lecture provided a broad overview of fisheries, agriculture, and plant-related topics in both global and Japanese contexts. As a non-specialist, I was happy to learn about the advancements in livestock and plant technologies. Regarding Professor Yagi's lecture, I am particularly excited to delve into the specifics of fisheries management systems from the developed countries. It appears that both EU-US and Japanese fisheries management emphasize punitive measures, including fines and social pressures from communities. In contrast, developing countries often struggle with inadequate fisheries management and excessive demand, leading to issues like illegal fishing and overexploitation. Can developed countries' fisheries management practices offer valuable lessons? I believe we can.
- 寄生虫と牛の共進化、東南アジア・アフリカの牛の飼育や文化が面白かったです。ヨーロッパの牛を無理にアジア・アフリカなどで飼育しようとしても飼料の違いや気温の違いでうまくいかないこと等いろいろ難しいと思いました。ベトナム在来種との交雑種の飼育が成功していましたが受胎率が低くなりそうだなと思いました。
北欧とアジアの漁業の違いが面白かったです。無暗に北欧の機械的な技術をアジアに持ち込んでも、まず、海の生物多様性、雇用形態や港の作りが違うのとではうまくいかないということがよくわかりました。
紙の歴史が面白かったです。パピルスを初めて見ました。和紙の作り方や普通紙の作り方がよく知れました。日本の人工林が増えているのは知りませんでした。(林や森自体が減っているイメージでしたので。)木からお酒やキシリトールが作れるのは驚きました。
- 3講義とも異なる分野の話題だったため、1日目より総合討論でのテーマが浮かびづらいように感じた。日本は島国であることで防疫に一定のアドバンテージがあると思うが、豚熱の猪への拡散や、野鳥の鳥インフルエンザ伝播のように、問題は多い。林業に関しても同様に、途上国の農業発展を考える以前に、先進国で解決していない問題について考えることが出来た。
- 総合討論で感染症に関する理解を深めることができてよかった。今後も新型コロナのような新たな感染症が発生する恐れがあると言われているので、次のパンデミックに対してどう行動するべきかを考える良い機会になった。
- All lecture provided me a wealth of new knowledge about livestocks, fisheries and plant materials. The discussion was in-depth and highly useful.
- 様々な素材からできた(広義の)紙を実際に触ることで違いがわかりやすく、理解が深まった。
- I learned a lot about how humans relate to natural resources. In terms of culture, communities form around different resources as means of protection, risk mitigation, and cooperation.
- 日本の漁業に非効率な部分があることを知りましたが、それによって地元の人の交流が生まれるなどのメリットもあると思います。
- ときどき意見を求められるので参加しやすかったです。
- 特に紙の話に関して、興味深いと感じた。紙をお酒や想像もし得なかった日用品に応用できうることを考えると、紙の需要がなくなっても生産を維持できるのではないかと感じた。
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みぞらぼ, 農学国際専攻, 農学生命科学研究科, 東京大学)
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Update by mizo (2024.6.6)