東京大学 大学院農学生命科学研究科 アグリコクーン講義「国際農業と文化」
国際農業と文化ゼミナール2024
このページは、受講生のレポートを共有することにより、講義を単に受けっぱなしにせず、自分の考えを主体的に表現し、自分とは異なる視点もあることに気づくことで、より深みのある講義にすることを目的に作成しています。
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Q3-1.荒木教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。
- 和食は現代人である私たちがさまざまな料理を選択することでこれからも進化し続けるということ。食文化は保守的なものであるが、和食といっても今まで長い時間をかけて変化をし続けている。
- The knowledge of Japanese cuisine, especially Washoku (和食) is very interesting. Being a foreigner, it is new and attractive for me to learn about the formation process and classification of Japanese cuisine.
- 塩辛が海外の人の忌避感を惹起するものとは思っていませんでした。一度食べたら考えは変わると思いますが...
- 食文化について多数の事例が紹介されたが、唐辛子がブラジルから拡散した経緯について面白いと感じた。はじめにヨーロッパで受け入れられなかったということだが、現在も唐辛子中心の食文化ではないように見えるため、元来の文化的な嗜好が各地で根付いていることを感じた。
- 世界の食文化はコロンブスの交換、すなわち新大陸発見後の新たな作物の伝来によって大きく変化したということ。
- カレーやラーメンのように海外から持ち込まれて日本に根付いた食事も多いが、その起源はどこにあるのかを知ることで、他国の食に対する価値観や文化を考える機会になるため、重要だと思った。
- 地域の食文化は様々な段階を経て変化するものであり、日本の食文化も例外ではない。
- コロンブスの交換以降,食文化どうしが常に接触の機会を持って変化し続けていることがわかった。調味の好みは地理的・宗教的など多様なコンテクストを反映しているので,新たな食が導入されて根付くに至るまでに,たとえばうま味を加えたり(出汁ラーメンや出汁カレーなど),地域ごとに傾向のあるプロセスをたどるのではないかと思った。
- I enjoyed learning about the evolution of foods in history and cultures. I especially found the section on fermentation interesting. When considering the distinction between fermentation and rot being heavily reliant on cultural context, it’s interesting to see how local resources can influence this cultural distinction.
- コロンブスの交換によって、食物や調味料の交換がなされ、国の状況に応じて様々な調味料や食文化が新たに形成された。その食文化は現代にまで引き継がれているところもあり、生活の文化を変えるきっかけにもなった。
- 調味料とはじめとした食文化は各地域で特色があり、コロンブスの交換によって地域間の交換が大規模に行われるようになったが、他の食文化の受容のしやすさには差があること。
- 世界各国における香辛料や調味料の違いと、それがどのように食生活に影響を与えるようになったのかということ。和食が和食たる所以は調味料などに少なからず由来していると感じた。また、カレーやラーメンのように日本に来てアレンジされたような和食もあることを知った。
Q3-2.佐藤教員の講義で重要だと思ったことを 1 つ挙げてください。
- 日本経済は海外の状況に影響を受けるため、アジア諸国を中心に他国の経済についても知ることが重要である。食料の生産と流通は政治的な意図も絡む難しい問題である。
- 米国の企業の利益のための市場原理主義のために、日本国民が気づかないうちに、日本が輸入に頼る形式がなされている。抜根的国産支援急務が必要なのに、自由貿易や輸出振興が講じられている。米国に頼らないためにも、アジアの地域で連携して食料安全について協力する必要がある。
- 農業技術の導入と同じで,既存の農産物貿易の枠組みをすべての国に導入するのは非合理的だと感じた。先進国は自国の生産物市場を諸外国に開拓する方針とはことなる農業保護策を講じる必要があり,同時に,途上国や日本のような自給率の低い国々では貿易よりも自給実現を最優先にする必要があると思った。自給・生産のレベルをある程度揃えるか,生産スタイルを確立したあとに余剰生産物の世界的取引を考慮するべきだと思う。
- より具体的な軍事面、国防面を中心とした食の話題を目にするのは初めてだったため、鈴木先生の展開する論理は新鮮に感じた。食糧自給率の向上や国内の備蓄が経済面でも重要だという点は同感だが、各主義が偏在するアジアでは共同体としての自覚は薄く、農家の高齢化など、課題は多いのではないかと感じた。
- 米国企業の利益のために日本人が自ら動くようにする市場原理主義の洗脳教育により、日本の食料安全保障は崩壊している。
- I learned the food stability risks that come with having a non self-sustaining agriculture. Indeed, if a country is not able to produce enough food internally, it needs to depend on international imports. This means that the country can be influenced by the situations and agendas of depending countries and be put in a difficult situation. Coming from a EU country, I agree that having a cooperative community is very helpful and efficient in mitigating risks. However, in the case of Asia, perhaps there is strong power imbalances and historical context that an make this difficult to make into reality.
- 日本を守るためにも食料自給率を上げる必要がある。食料をないがしろにしていては今後、戦争に巻き込まれたときに自国民が餓死する。自給率を上げることこそが安全保障である。アジアでEUのような共同体を作り、アジア同士で農業を守ることは賛成だと思うが、日本で化学肥料の原料であるリン等は採れないのでそれにより食べられるものが少なくなるのが心配。
- 日本の食料自給率の問題について考える時に、政治的な背景が密接に関わっていることを踏まえて、その問題を捉えることが重要であると感じた。またそのためには、日本と貿易をしている他の国の農業事情についても理解する必要があると思った。
- The lecture provided detailed insights into various global economic situations, particularly those in the US and China. Subsequently, different aspects of Japan's economy were mentioned, followed by a deep analysis of its unique characteristics and challenges. It is very new and impressive for me.?
- Food security is indeed a critical issue. As a former agricultural economics student in China, I am acutely aware that in today's anti-globalization and global warming, the food crisis threaten everyone, especially in Asian countries. There is a strong desire for higher food self-sufficiency to escape economic and political dependence on other countries. We recognize that food trade often entails significant political and economic costs. However, achieving independence from food imports is exceedingly challenging. From the perspective of comparative advantage, countries with extensive plains, such as the United States, possess a substantial edge in food production. Their exceptional natural conditions (including sunlight, heat, water, and arable land) result in a massive food surplus, enabling the U.S. to export large quantities of inexpensive food. For countries with low food self-sufficiency rates, the dilemma of choosing between cheap imported food and protecting their own agriculture is complex. Given the dynamics of today's international politics and climate, it is difficult for governments to make a balance.
- アメリカが世界で支配力を維持している事実は阻却できませんが、食料問題について考える際に反アメリカ的思想は捨象すべきだと考えます。今のところ米食は衰退する一方で、アメリカからの小麦は生命線であるからです。
- 農業安全保障をはじめとして、世界や日本の農業生産を考えていくには政治的・経済的な要素が大きく関わる点。それらの関連分野について知識が少ないので勉強したいと思った。
- 今までの日本の外交はアメリカ中心であり、今後もそれが続くのかなと感じていたが、講義を受けてアジア諸国間での繋がりをもっと強化して経済的な連携を作ることが重要なのではないかと感じた。アメリカ中心の外交の時代も今後変わっていくのかもしれない。
Q3-3.3日目の講義の感想を書いてください。
- I thoroughly enjoyed today's lectures as they are closely related to my interests and major. They delved deeply into many urgent yet unresolved agricultural economic issues, which were truly thought-provoking.
- 農業生産の投資の大切さをよく理解できた。ウクライナの戦争を見て、他人事ではなくいづれ日本も巻き込まれてしまうという危機感を持つことができた。自給率が低いことと、米の消費が減っていることを受けて、日本は農業支援が少ない国であり、これを改善しなければならないと思った。化学肥料の輸入はどうしようもないのかなと思いました。肥料を使わないと非効率だし、昔と違って人口も増えているので鎖国していた時のようにはうまくいかないのではないかと思った。
和食の定義を改めて学ぶことができました。発酵食品こそが食文化の概念であるということが納得できました。唐辛子を入れた辛い四川料理の逆輸入(?)の話も面白かったです。
- 白熱した議論ができて面白かったです。特に食育の話に関しては、自分でも出来ることを探してみたいと思います。
- カレーやラーメンが和食かどうかという問いが面白かった。食文化について改めて考えるきっかけとなった。
- 北海道のように飼料の生産と畜産を両立するのは難しく、その他本州などの中山間地域では作り手不足の影響で共同体方式がとられはじめている。将来的にロボット化・IT化、または移民の積極的受入れへの転換が候補として考えられる。現在も一部で、一次産業への地位的に弱いイメージが根付いてしまっているが、この二策では今後の一次産業への一般層からのイメージが真逆の方向に変遷する可能性があると感じた。
- Today’s class looked into the intersection between agriculture and humanities, and provided new insight different from the scientific perspective. Today’s class made me think of how people and culture dictate what is consumed, and thus what resources we grow and how we grow. Furthermore, it made me think of how resources influence us back, in that traditions are derived from what resource is locally available. With globalization, our relation to resources have shifted to a global scale rather that the traditional local scale, which introduces changes in habit but also introduces new economic challenges.
- 欧米が食料産業において台頭していることについて、様々な側面から意見が交わされたのがとても興味深かった。欧米が農業の化学肥料などにおいて技術が台頭しているため、欧米が市場を寡占しているのは納得できることである。その点において、有機農業、日本の農業を進行させるためには、それらの技術の研究を進めて、農家さんがベストな選択ができるようにする必要があると思った。また、消費者側として、社会貢献のためにも、地産地消、日本食の振興について知り、行動する必要もあると思った。
- All sensei are very enthusiastic and knowledgeable in their fields. I explored a lot of aspects relating to food and economic agriculture today.?
- 日本は食料自給率が低く、米国からの輸入に食料を依存していますが、それは必ずしも中国との関係を強化するべきという意味ではないと思います。
- 食文化は農産物や食品の流通に大きく左右される流動的なものだと思った。いかなる時もその国に十分な食品があることが最優先だという認識を更に深められたが,それを実現するためには現行のシステムを大きく変える必要があると感じた。その行動は生産者や取引をする企業ではなく,むしろ消費者にこそ取れるものであり,消費者の価値観を変え,波及的に既得権益を持つ企業や国を動かさねばならないと思った。個人の価値観の転換をいかに社会の価値観の転換に変えるのか,社会へのアプローチも経済や農業と組み合わせて生み出す必要がある。
- 荒木先生の講義では和食の定義や、それぞれの食材がどの地域から来ているのかについての話がとても興味深かった。以前、アンデス原産の作物(主にイモ類)に関心を持って調べていたことがあり、日本では芋というとじゃがいもや山芋のイメージが強いが、アンデス地域では今でも様々な種類のカラフルな芋が栽培され、食べられていることを思い出した。世界にはまだ活用しきれてない有用植物がたくさんあると思うので、それらの作物への研究が進むことが世界の食糧危機問題解決の鍵になるのではないかと考えた。佐藤先生の講義では、食糧生産について考える上で、経済や政治的状況を理解することが大切だということを実感した。他国がそれぞれ国内で抱える農業の課題や、また世界の食料問題に対してどう考えているのかについて、知りたいと思った。
- 日本の生産者に対するリスペクトについての討論が面白いと感じた。そのような思いがけない視点が、日本の農業自給率の低さに関係しているのだと討論を聞いて感じた。
- 政治や経済など、農業をこれからさらに学ぶ上で自分に足りない視点があると気づいた。
Q4-1.講義全体に対する意見
- Excellent Course and Lectures! I love this course because it open my horizon. いい授業と思います!
- 日本の農業・水産基盤について学ぶことができた。日本の水産は東南アジアと同じで国内向きであり、輸出向きではないことが意外でした。先進国(特に北欧)は輸出向きであり、国内でも消費しているが、国内向けなのに日本の魚の消費量が低下しているとういう事実に驚きました。また、日本はアジアと協力し合わないと今後、自国の農業を守り切れないことを新たに知ることができました。完全に有機農業に頼ることは難しいが、有機農業の割合を増やしていくことが大切だと思いました。一人一人の消費者の購買行動が大切であることを痛感した。
- 3日間連続の講義は少し疲れたが、農業と文化について国際的な面も含めて多角的に学ぶことができた。先生方がそれぞれの専門分野からどのように農業や文化についてとらえているかの違いが垣間見えて面白かった。Google formが出欠確認を兼ねているので、回答のコピーが送信され設定になっていると学生目線では安心だと思った。
- 「農業」という一単語でも、途上国支援、畜産、水産、林業、外交問題、食糧自給率、労働、食育など多数の要素があり、ひとつずつについて深く考える良い機会になった。私自身は普段、農業とは間接的にしか関わらない研究を行っているが、課題解決に向けて実際に社会人として取り組んでいる農学国際出身の卒業生の話題を聞いて、実際に話を聞けたらもっと面白いだろうなと思った。近所だったので日野の農場も行ってみようと思った。
- I found the lectures very interesting. I appreciated how each topic was diverse, yet closely interlinked to one another, and I feel like I was able to gain a holistic understanding of agriculture in the context of Asia. I would have like to do more group work and group discussions, as just listening to several hours of lectures passively is a bit tiring.
- 国際農業というテーマを通じて、国際的な農業や漁業の問題や状況について学びましたが、同時に日本の農業や漁業の問題にも気付かされる機会となりました。日本の農業や漁業は、途上国を支援する側面もありますが、国内では農家の利益率の低下、需要の減少、高齢化による労働力不足など、多くの問題が山積しています。これらの問題を解決し、農家の負担を軽減し、日本の食料自給率を向上させる必要があります。
授業を通じて、各先生方が技術研究に取り組まれている背景には、こうした国内の問題を解決する目的があると理解しました。先生方は豊富な実践的経験を持ち、農家や漁業従事者の現場の状況や思いを深く理解しており、単に研究にとどまらず、現場の実情に根ざしたアプローチを取られていることを感じました。
授業前は、特に現場の人々の実情について知らない部分が多くありましたが、今回の授業を通じて新たな見地を多く得ることができました。政策や事業を実行する際には、現場の人々の状況や悩みをしっかりと理解しながら、同時に研究や事業を進める必要があることを強く感じました。今回の授業は自分の研究科ではない授業なので、今回の授業の機会を頂けて感謝しております。
- This is an interesting and useful course, providing a lot of knowledge relating to agricultural fields. I really like the discussion part, where I can hear different ideas and real-life experiences from sensei and other classmates. I have studied a lot. Thank you very much.?
- 農林水産業の幅広い分野について深く討論でき、大変有益でした。農学国際専攻の特色がよく出ていたと思います。
討論という形式であれば、学生同士でディベートする機会がある方が良かったと思います。一人一人の意見を拾い上げるなら、オンラインの方が効率が良かったと考えています。
- 様々なバックグラウンドを持った人とのディスカッションを通して、私が持っていない価値観について理解を深めることができました。今後の研究活動に役立てば良いと思っていました。
- 総合討論の時間で,講義内容等に関する質問を先生方がその場で回答してくださるのがとても有意義だった。また,他の学生の質問やそれに対する回答から,自分の疑問との関連を見出す時間が取れてとてもおもしろかった。普段は専門分化した勉強をしているので特定の技術に視点がとらわれがちだが,農業という地域と密接に結びついたものを相手にするには,あらゆる知識と視点を総動員し,かつ現地で新たに発見しながら泥臭く先に進む必要があるのだと再認識できた。
- 農学を捉える上では、様々な分野に関する知識を身につけることができてよかった。自分の研究分野に関して勉強することはあっても、他の分野に触れる機会は少ないのでとても良い機会になった。
- 普段聞けないような、どのような背景や理想のもとに研究を行っているかを深く知る良い授業であったと思う。
- オンライン受講を対応いただきありがとうございました。農業の諸分野とそれを取り巻く現在の世界について、広く深く考えるきっかけになりました。
Q4-2.講義は対面とオンラインのどちらが良いですか?
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みぞらぼ, 農学国際専攻, 農学生命科学研究科, 東京大学)
mizo[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp
Update by mizo (2024.6.7)