嬬恋キャベツ畑のモニタリング

(1)実験の目的
 高原キャベツの生産地として名高い本州の群馬県北部地方の傾斜畑地では,梅雨期・台風期・融雪期における土壌侵食が深刻な問題になっている.土壌侵食の原因として,梅雨期・台風期には,大型機械によって畑地の表層直下に形成される難透水性層が雨水の地中浸透を阻むこと、また融雪期には、冬期に形成された凍土層が春先の融雪水の地中浸透を阻むこと考えられる。そこで、本研究室では、FSを用いて嬬恋キャベツ畑地における水循環機構を解明し、適正な畑地管理技術を提案することを目指している。

(2)実験の方法
 2006年6月21日に群馬県嬬恋村にある高冷地野菜研究センター内の傾斜圃場(標高 1,170m)にキャベツの苗を移植し、2台のFSを用いて、圃場画像・日射量・気温・湿度・風向・風速・降水量・土壌水分量を東京の研究室からモニタリングした。
 また、圃場内に小型ライシメータを設置し、このライシメータにもキャベツの苗を移植し、生育状況と蒸発散量との関係を求めるために、その重量変化を連続的に観測した。(写真1)

写真1 FSカメラによる畑地モニタリング(2006年夏)

写真2 FSカメラによる畑地モニタリング(2006年冬:別サイト)

(3)観測結果の一例
@気象および土壌データ
 図2は観測期間中における気象と土壌水分のモニタリングの一例である。FSにはカメラの他に、標準で気温・湿度・日射量のセンサが取り付けられているので、単なる気象計としてしても有用である。また、土壌水分計も簡単に取り付けることが可能である。
 図3は、降水量とライシメータ質量の変化の関係である。降雨により重量が増大する傾向や蒸発散により重量が減少する傾向がわかる。このことは、フィールドサーバ(FS)を用いることにより、フィールドをそのまま実験室と同様に扱うことができることを示している。
 一方、図3では、2006年7/18-19の豪雨によってライシメータが機能しなくなってしまったこともわかる。FSはリアルタイムで数値データと画像データをモニターできるので、このような数値データの異常が起こったときに、原因追求が容易になり、迅速な対策も可能となる。

図2 気象・土壌水分モニタリングの例(2006.7.1-7.2)

図3 降水量とライシメータ質量の変化

A 画像データ
 写真1はFSカメラによって得られた畑地モニタリングの画像の一例である。数週間のうちにキャベツが生長し、土壌表面を被覆していく様子がわかる。写真2は、高冷地野菜センターから数百メートル離れた畑で同様にFSカメラを用いて得られた春先の融雪の様子である。畝間に雪を残しながら消雪していく様子がわかる。

(4)今後の展開
 現在研究室では、ライシメータ内の土壌水分量変化や日射量・気温・湿度・風速から推定できる蒸発散量と作物も含めた重量変化を画像から解読できる作物の生長量と関係づける研究を進めている。さらに、衛星データとリンクさせることにより、キャベツの生長に伴う土壌表面の被覆率の変化から広域の土壌水分消費量を推定するアルゴリズムを構築することを考えている。そして、FSによるキャベツの生育モニタリングと衛星による表面被覆率変化のモニタリングを広域レベルで関連付けることを目指している。


フィールドサーバによるリアルタイム農地情報モニタリングシステム

  1. はじめに
  2. フィールドサーバ(FS)
  3. システムの構成
  4. 事例
  5. おわりに

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