畑の土埃モニタリング

(1)実験の目的
 千葉県北総中央地区は、春先の強風によって畑地の土埃(地元では「やちぼこり」と呼ばれている)が舞うことで有名である。農業用水をタイミングよく効果的に散水することによってこの土埃を抑制すること目指して、フィールドサーバ(FS)をピーナツ畑に設置し、気象条件と土埃の舞い上がり方をリアルタイムでモニターしている。

写真3 事前現地調査時(2007年2月2日)にも名物の「やちぼこり」(土埃)が軽く出迎え

(2)実験の方法
 2007年3月2日に、土埃がおこりやいとされる畑地の一角(千葉県八街市、緯度35°6311、経度140°3063、標高39m)に、フィールドサーバ(FS)を設置した。標準のFSには風向風速計がついていないので、本実験ではFSに気象計(Vaisala製)、土壌水分センサ(Decagon製EC-5を5cm, 10cm,15cm深さに埋設)、土壌温度計(5cm深さに埋設)を取り付けて、土埃の発生条件を観測している。また、土埃の飛散状況を把握するために、FSに附属するカメラを用いて2分間隔で写真撮影をおこない、土埃の飛散が激しいときの気温、風速、土壌水分量等の情報と関連づける。(図4)

図4 土埃観測装置のシステム図

写真4 設置後の土埃観測装置 Vaisala気象計(左)とフィールドサーバ(右)

(3)観測結果の一例
 例年であれば春先の強風により、頻繁に土埃が舞い上がるそうだが、今年は設置後ほとんどそのような状況は起こらなかった。そこで、ここでは設置直後に観測されたデータの一例のみを紹介する。 @気象および土壌データ
 図5・図6に設置時の各気象データおよび土壌水分データの例を示す。FSとVaisala気象計で、気温・湿度はほぼ同じような値を示している。このことは気温・湿度だけであればFSで十分観測できることを示している。

図5 気温・湿度・日射量(ソーラー電圧)。気温V、湿度VはVaisala気象計のデータ。その他はFSデータ。14:24頃から測定開始。

図6 土壌水分センサによる土壌水分量(14:38頃にセンサ埋設)。 土壌水分量は出力電圧(mV)表示されている。現地土壌を用いて電圧と実際の土壌水分量のキャリブレーションが必要となる。

A 画像データ
 640x480の解像度で2分毎に画像データが記録される。(図7) 各画像には記録された時刻のファイル名が付けられているので、データとの関連付けがしやすい。また、Web上でリアルタイムの画像を見る機能もあるので、実際に土埃が舞い上がっている瞬間を観測することも可能である。(写真5)

図7 2分毎に記録される現地画像

写真5 FSによるリアルタイム画像。土埃が舞い上がっていない平常時には交通量調査にも利用できるかも知れない。

(4)今後の展開
 現在研究室では、画像と風速・土壌水分量をWeb上で同時に見ることのできるツールを開発することを計画している。また、インターネット通して地域住民に土埃発生の状況を見てもらい、同時に住民から土埃発生の場所と時刻を知らせてもらうような双方向システムを構築し、地域住民を巻き込んだ住民参加型の農業用水管理に展開することを考えている。
 技術的には、空気中に舞い上がる土埃を単に画像として捕らえるだけでなく、花粉センサのような新しいセンサを用いて数値化する方法も検討中である。さらには、たまたまFSを設置した場所が小学校に隣接していることを利用して、設置した装置を地元の子供たちの環境や食育教育に利用する研究にも着手している。


フィールドサーバによるリアルタイム農地情報モニタリングシステム

  1. はじめに
  2. フィールドサーバ(FS)
  3. システムの構成
  4. 事例
  5. おわりに

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